損害賠償請求
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損害賠償(そんがいばいしょう)とは、違法な行為により損害を受けた者(将来受けるはずだった利益を失った場合を含む)に対して、その原因を作った者が損害の埋め合わせをすること。適法な行為による損害の埋め合わせをする損失補償とは区別される。または埋め合わせとして交付される金銭または物品そのものを指すこともある。目次

1 損害の発生と損害賠償

2 債務不履行に基づく損害賠償

2.1 損害賠償の範囲

2.1.1 通常損害と特別損害

2.1.2 遅延賠償の場合

2.1.3 填補賠償の場合


2.2 損害賠償の方法

2.3 過失相殺と損益相殺

2.3.1 過失相殺

2.3.2 損益相殺


2.4 金銭債務の特則

2.5 損害賠償額の予定

2.6 損害賠償による代位(賠償者代位)

2.7 代償請求権


3 不法行為に基づく損害賠償

3.1 損害賠償の範囲

3.2 損害賠償の方法

3.3 損害賠償額の算定

3.3.1 過失割合

3.3.2 過失相殺

3.3.3 逸失利益


3.4 慰謝料

3.5 不法行為による損害賠償請求権の行使期間

3.6 特別法


4 会社法上の損害賠償

5 脚注

6 参考文献

7 関連項目

8 外部リンク

損害の発生と損害賠償

損害賠償は大きく債務不履行に基づく損害賠償と不法行為に基づく損害賠償の二つに分けられる。日本法では債務不履行に基づく損害賠償については民法415条以下、不法行為に基づく損害賠償については民法709条以下に定められている。

損害には財産的損害と精神的損害があり、精神的損害に対する賠償は慰謝料(いしゃりょう、慰藉料)とも称される[1]

事故によって農業や水産業などが受けた風評被害について、政府の審査会で損害賠償の対象について議論に浮上する事例がある[2]
債務不履行に基づく損害賠償詳細は「債務不履行」を参照

債務不履行とは、債務者が契約などに基づく債務を自ら履行(弁済)しないことをいう。債務不履行の場合には、法律上の効果として、強制履行契約解除などの問題とともに損害賠償の問題が生じる。

履行の遅滞によって生じた損害の賠償を遅延賠償という[1]。これに対して本来の給付に代わる損害の賠償を填補賠償という[3]

債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、損害賠償を請求できない(民法415条1項ただし書)。2017年の改正民法は帰責事由について「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由」と明文化した(2020年4月1日施行)。ただし、その帰責事由の内容については個別の判断による[4]。なお、金銭債務については419条3項により債務者は帰責事由の不存在を抗弁とすることができない[1](後述)。
損害賠償の範囲
通常損害と特別損害

損害賠償の範囲は通常損害及び特別損害である。

通常損害

債務の不履行によって通常生ずべき損害(民法416条
1項)


特別損害

当事者がその事情を予見すべきであった特別の事情によって生じた損害(民法416条2項)

2017年の改正民法で特別の事情によって生じた損害について「当事者がその事情を予見し、または予見することができたとき」から「当事者がその事情を予見すべきであったとき」に改められた(2020年4月1日施行)[5]

「当事者」となっているが判例は債務者と解する(大判昭和12年11月15日判決全集4輯22号14頁)[1]。特別事情の予見可能性の立証責任は債権者が負う[6]

損害賠償の範囲については相当因果関係理論で説明されてきたものの、特別損害の予見の主体や予見の基準時など解釈問題がある[7]。相当因果関係理論に対しては、ドイツ民法のように因果関係以外に賠償範囲を画する規定がない場合には機能するが、日本の民法416条は制限基準自体を規定しており相当因果関係は格別の意味を持たないとの批判もある[6]
遅延賠償の場合

履行の遅滞によって生じた特別損害の予見可能性の判断の時期は、履行期を基準にする見解(判例)と契約時を基準にする見解がある[6]。なお、金銭債務の場合は特則がある(民法404条・419条)[6]
填補賠償の場合

本来の給付に代わる填補賠償の場合は目的物の価格が算定の基礎となる[8]。判例は履行不能時の目的物の価格をもとに通常損害を算定し、履行不能時以降の価格変動を一定の範囲で特別損害とする[8]。これにつき遅延賠償の場合と同じく契約時を基準に統一的な基準で解釈を行う見解もある[9]
損害賠償の方法

損害賠償は、別段の意思表示がない限り、金銭により賠償額が定められる(金銭賠償の原則、417条)。
過失相殺と損益相殺
過失相殺

債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める(418条)。これを過失相殺という。

2017年の改正民法で「債務の不履行に関して」から「債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して」に改められた(2020年4月1日施行)[10]

不法行為に基づく損害賠償の場合にも同様の制度があるが、債務不履行に基づく過失相殺の場合には債権者に過失があれば必ず過失相殺するものとなっている。過失相殺は債務者が主張しなくても裁判所は職権で考慮できる[11]。ただし、債権者に過失があった事実については債務者が立証しなければならない(最判昭和43年12月24日民集22巻13号3454頁)[11]
損益相殺

債務不履行に基づく損害賠償において、債権者に保険金など債務不履行を原因として得ることとなった利益がある場合には、これを考慮して賠償額を定めることになる。これを損益相殺という。
金銭債務の特則

金銭債務の債務不履行における損害賠償については特則がある。
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による(419条
1項)。

債権者は損害についての立証責任を負担する必要がない(民法419条2項)。

債務者は債務不履行に陥ったことについて不可抗力を理由に損害賠償責任を免れることができない(民法419条3項)。

損害賠償額の予定

当事者は債務不履行となった場合の損害賠償額について事前に合意しておくことができる(420条1項)。これを損害賠償額(賠償額の予定)という。賠償額の予定は損害についての立証責任の煩雑さを考慮して事前に賠償額を定めておくものである。

2017年の改正前民法の420条1項には「この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。」と定めた後段があった[12]


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