接続法
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接続法(せつぞくほう、ラテン語: coniunctivus、: subjunctive、: subjonctif、: Konjunktiv、: congiuntivo、西: subjuntivo)は、インド・ヨーロッパ語族に属する言語でのの1つ。勧告・命令・禁止・願望・後悔など、願われたことや考えられたことを述べる (mood) である。対語は直説法 (indicative mood)。

英語ではあまり意識されることはないが、フランス語ドイツ語など英語以外の言語では頻繁に使われる。なお、日本語では英語にある subjunctive と呼ばれる同様の法に仮定法という訳語を当てているが、ここでまとめて取り扱う。

主な使い方としては、

命令法の代用(特に一人称複数三人称の活用を使う敬称二人称への命令)

意見や不確実な概念などの表現

現在や過去の事実に反する仮定(例:「もし私が鳥だったら…」)

現在はまだ起きていないが、将来起きる可能性のある事象(例: 「この法案が可決された場合…」)

が挙げられる。

総じて、直説法と対比すると、その内容が実際に成立している、事実であるという話者による主張を少なくとも直接的には伴わず、内容そのものとして、想定されうる事態として提示するときに使われる傾向がある。日本語で言えば、「……ということ」に当たるような用法である。そのため、間接話法や間接疑問文、目的文や結果文などの従属文で使われる。主文に接続し、それだけでは多くの場合完結しないというこの点が、接続法という名の由来である。多くの場合、従属文では、そこで述べられる事態は、(結果文は例外であるが)それが事実であると述べることには主眼がなく、その内容自体がどのようなものであるかに主眼がある。ただし、印欧語でも言語によっては上記のものについても接続法以外の活用で対応するものもあるため、この辺りには一定の基準はない。
英語の仮定法

英語の場合、接続法を学校文法では、仮定法と特に呼ぶことがある。日本語の「仮定」の意味と紛らわしいため、かつては「叙想法」という言葉で呼ぶ者もいた。
仮定法過去

仮定法過去 (subjunctive past, past subjunctive) とは、動詞および助動詞の過去形を用いて現在の事実とは反対の仮定、想像、実現不可能な願望を表現する。be動詞は、wereを用いる。ただし、実際に過去の時制を表しているわけではなく、あくまで過去形を使うことから来る命名である。現在では、とくに米国において口語的に単数一人称主語"I”に対してwasを使うケースも増えている。

かつては独自の語形変化であったが、そのほとんどが過去形の語形変化と一致していたため、区別が失われ、be動詞以外全く過去形と同じ変化形になったと考えられている。

1. ifに導かれる条件節などで用いる場合(省略形や分詞構文を用いる場合もある。仮定法過去完了も同様)

If it were not for him, the project would fail.
= Were it not for him,
= But for him,
= Without him,

(彼がいなければこの計画は失敗していただろう。)
=Achieving the project is owed to him. (直説法;そのプロジェクトが達成できたのは彼のおかげである)

2.「wish that-節+過去形」で実現不可能な願望を表す。「?ならいいのに」

I wish I could marry the newscaster [actress]. (あのアナウンサー[女優]と結婚できたらなあ)

3. 様態を表す「as if / as though+過去形」「あたかも?であるように」

She looks as if she were ill. (彼女はあたかも病気であるかのような顔をしている。)

4. It is time+過去形「もう?する時間だ」

It is time that you went to school. 「もう学校へ行く時間だ」

仮定法過去完了

仮定法過去完了 (subjunctive past perfect) とは、動詞および助動詞の過去形+完了形を用いて過去の事実とは反対の仮定、想像、実現不可能な願望を表現する。

If I had caught the train, I would have been in time for school.
= Catching the train, ※分詞構文が必ずしも時制を一致させるとは限らない。

(その電車に乗れれば、学校に間に合ったのに。)
= As I didn’t catch the train, I’m late for school.(直説法;電車に乗り遅れたので、学校に遅刻した。)

Without the sun, all living things couldn't have existed.
= Had it not been for the sun,
= If it had not been for the sun,

(太陽がなければ、全ての生き物は発生しえなかっただろう。)
= Thanks to the sun, all living things were able to exist.(直説法;太陽があるおかげで全ての生き物は発生することができた。)
仮定法現在

仮定法現在 (subjunctive present, present subjunctive) とは、英語の仮定法のうち、期待、願望、主張、命令、評価、提案、勧誘、要求、危惧などを表す語に伴って現在ないし未来における仮定や想像について、動詞の原形、もしくはmayやshouldなどを伴って表現する。ただしそれ自体で特別な時制を表すものではない。

1. 期待、願望、主張、命令、要求、提案などを表す動詞に伴うThat節

I desired that the exam [should] be postponed until the next week.

(試験が来週まで延期されることを望んだ)

He asked me that the book [should] be returned.

(その本を返してくれと言った。)
※そのほか、suggest, order, request, propose, demand, insist, expect, bid, advise, beg, declare, decideなどが導くthat節で用いられる。

2. 評価(必要、重要、当然)などを表す形容詞と共に

It was important (necessary, impossible) that he [should] send the letter immediately.

(彼にはその手紙を直ちに送るのが重要(必要、不可能)だった。)

It's natural you should get confused.[1]

(君が混乱するのも無理もないよ)

3.のろい、願望、祈願などを表す

[May] God save the Queen!

(女王様、万歳!)

4.条件節で(現在は廃用。慣用句にのこるのみ)

If it be achieved, I have cause to return thanks.

(もしそれがうまくいったら、私も感謝せねばならない)

If need be, I'll lend him the money.

(もし必要なら彼にその金を貸してやる)

5.危惧、目的を表す語に伴って(shouldが省略されない場合も多い)

I'm afraid that (lest) I [should] be late for school.

(学校に遅れないかどうか心配した。)
フランス語の接続法

フランス語の接続法は、感情、願望、疑念、義務、命令、目的、譲歩、最上級等の表現に現れる文法的拘束事項として理解できる。直説法が客観的事実を述べる法であるのに対して、接続法は「話し手の主観(イメージ)を表現する」と説明されることが多い[2]。話し手が事実であると主張する場合は直説法が好まれ、事実に疑念・否定を抱く場合は接続法となる場合が多いが、下記 (1) 願望・命令や (9) 祈念など、現実化を強く願う場合[3]にも接続法が登場する。

語形は、直説法現在三人称複数の語幹に、-e, -es, -e, -ions, -iez, -ent の語尾を続ける。一人称複数・二人称複数では語幹が異なる動詞もある。また、人称変化全体にわたって特殊な語幹を取る動詞も一部に存在する。

時制は上記の語形変化をする接続法現在の他に、avoirまたはetreの接続法現在に過去分詞を続ける接続法過去がある。そのほか、単純過去と共通する語幹を取る接続法半過去とその複合時制である接続法大過去があるが、現代口語フランス語で用いることは少ない。

接続法の用法についてもう少し詳細に列挙する。

(1) 意志、願望、恐れ、疑惑、命令などを表す動詞の後Nous craignons qu'il y ait beaucoup de victimes.(犠牲者が大勢出るのではないかと危惧している。)

(2) 感情(主観)を表す etre [形容詞] que の後Je suis etonnee qu'un crocodile fasse des pompes.(鰐が腕立て伏せをしているなんて驚いた。)

(3) 義務、判断、可能性、重要性、感情などを表す非人称構文の後Il vaut mieux que vous partiez tout de suite.(直ぐに発つべきです。)

(4) 意見の否定・疑問等(話し手に疑惑を持たせる場合)Elle ne croit pas qu'il vienne.(彼女は彼奴が来るなんて信じていないよ。)

(5) 話し手が不確実性を示す場合Je cherche une maison qui ait un grand jardin.(私は庭の広い家を探している。)

(6) 目的、条件、譲歩等を表す接続詞句の後Bien qu'il pleuve, ma fille veut sortir.(雨が降っているのに、娘は外出したがっている。)

(7) 最上級またはそれに類する表現の後Vous etes la seule personne qui puisse m'aider.(貴方は私を助けられる唯一の御方です。)

(8) 想定Soit un triangle ABC.(三角形ABCを考える。)

(9) 祈念Que la force soit avec toi.(フォースの共にあらんことを。)

(10) 頻度Il est rare que mon maitre recoive des visites feminines.(主人に女性のお客様がいらっしゃることは稀です。).mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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ドイツ語の接続法

ドイツ語の接続法は、仮定や願望などの非現実、間接話法での引用などを表現するときに使われる。動詞の形式には接続法I式とII式がある。

接続法I式は、不定形の語幹に接続法の語尾を付ける。語尾は次のようになる。

(kommen 来る)ich komme/ du kommest / er, sie, es komme / wir kommen / ihr kommet / sie kommen

この変化の例外は sein だけである。ich sei / du sei[e]st / er, sie, es sei / wir seien / ihr seiet / sie seien

接続法II式は、過去基本形をもとに作る。規則動詞の場合には、過去形の人称変化と同様である。ich lernte / du lerntest / er, sie, es lernte / wir lernten / ihr lerntet /sie lernten

不規則動詞の場合には、接続法の語尾(接続法I式と同じ)を付けるが、その際に幹母音の a, o, u がウムラウト(変音)する。ich kame / du kamest / er, sie, es kame / wir kamen / ihr kamet / sie kamen


接続法I式の用法

1. 要求や命令を表す。(英語の仮定法現在に対応する。)Gott behute dich! 神が汝を守らんことを。(別れの挨拶)Man nehme taglich eine Tablette. 毎日1錠飲みなさい。

2. 認容を表す Was auch geschehe, ich fuhre es durch. 何が起ころうと、私はそれをやり抜く。(fuhreの位置が3番目であることに注意)

3. 間接話法 Er sagte, er sei krank. 僕は病気だと彼は言った。(Er sagte: ?Ich bin krank.“ の間接話法)

ただし、接続法II式が使われる場合もある。直説法と接続法I式が同形になる場合には接続法II式を使うのが正式。


接続法II式の用法


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