日本推理作家協会賞(にほんすいりさっかきょうかいしょう)は、毎年日本推理作家協会(元・探偵作家クラブ→日本探偵作家クラブ、江戸川乱歩が1947年6月21日に設立)が授与する文学賞。その年に発表された推理小説の中で最も優れていたものに与えられる。推協賞と略称される[1]。
第1回(1948年)から第7回(1954年)までは探偵作家クラブ賞、第8回(1955年)から第15回(1962年)までは日本探偵作家クラブ賞、第16回(1963年)以降は日本推理作家協会賞と名前を変えて続いている。その伝統から、ミステリー界で最も権威ある賞と見做されている。
創設当時は長編賞、短編賞、新人賞があったが(新人賞は第1回のみ)、第5回(1952年)からは部門の区別がなくなった。第29回(1976年)から再び、長編部門、短編部門(および評論その他の部門)に分かれた。部門別に分かれてからの受賞者数は、長編部門の60人に対して、短篇部門が29人と半分以下である(2017年現在)。これは長編部門はダブル受賞(複数の同時受賞者が出ること)が多いのに対して、短篇部門は該当作なしの年が多く、また受賞者が出てもほとんどが単独受賞だからである。
受賞するのに、日本推理作家協会の会員である必要はない。また1度でもどれかの部門を受賞した作家が再受賞することは、内規によって禁じられている。
また、1995年から、受賞作が双葉文庫から「日本推理作家協会賞受賞作全集」として、受賞した順序で再刊がされている。部門別に分かれたのちは、「長編部門」は基本的に収録。「評論その他の部門」は「全集」に収録される場合と、されない場合がある。また「短編部門」は、連作短編集が受賞した場合に、全集に収録される場合がある。
名称の変遷
第1-7回(1948年 - 1954年) 探偵作家クラブ賞
第8-15回(1955年 - 1962年) 日本探偵作家クラブ賞
第16回以降(1963年 - ) 日本推理作家協会賞
部門の変遷
第1回(1948年) 長編賞、短編賞、新人賞
第2-4回(1949年 - 1951年) 長編賞、短編賞
第5-28回(1952年 - 1975年) 部門の区別なし(第7回のみ「奨励賞」あり)
第29-35回(1976年 - 1982年) 長編部門、短編部門、評論その他の部門
第36-52回(1983年 - 1999年) 長編部門、短編および連作短編集部門、評論その他の部門
第53-70回(2000年 - 2017年) 長編及び連作短編集部門、短編部門、評論その他の部門
第71-75回(2018年 - 2022年) 長編および連作短編集部門、短編部門、評論・研究部門
第76回以降(2023年 - ) 長編および連作短編集部門、短編部門、評論・研究部門、翻訳部門(試行)
受賞作
第1回から第10回(1948年 - 1957年)
第1回(1948年)
長編賞 - 横溝正史 『本陣殺人事件』
短編賞 - 木々高太郎 「新月」
新人賞 - 香山滋 『海鰻荘奇談』
第2回(1949年)
長編賞 - 坂口安吾 『不連続殺人事件』
短編賞 - 山田風太郎 「眼中の悪魔」、「虚像淫楽」
第3回(1950年)
長編賞 - 高木彬光 『能面殺人事件』
短編賞 - 大坪砂男 「私刑」「涅槃雪」「黒子」
第4回(1951年)
長編賞 - 大下宇陀児 『石の下の記録』
短編賞 - 島田一男 「社会部記者」「風船魔」
第5回より、部門の区別がなくなる。
第5回(1952年)
水谷準 「ある決闘」
評論その他 - 江戸川乱歩 『幻影城』
第6回(1953年)
受賞作なし
第7回(1954年)
受賞作なし
奨励賞 - 丘美丈二郎 『鉛の小函』、氷川瓏 『睡蓮夫人』、鷲尾三郎 『雪崩』
第8回(1955年)
永瀬三吾 『売国奴』
第9回(1956年)
日影丈吉 『狐の鶏』
第10回(1957年)
松本清張 『顔』(短編集)
第11回から第20回(1958年 - 1967年)
第11回(1958年)
角田喜久雄 『笛吹けば人が死ぬ』
第12回(1959年)
有馬頼義 『四万人の目撃者』
第13回(1960年)
鮎川哲也 『憎悪の化石』『黒い白鳥』
第14回(1961年)
水上勉 『海の牙』、笹沢左保 『人喰い』
第15回(1962年)
飛鳥高 『細い赤い糸』
第16回(1963年)
土屋隆夫 『影の告発』
第17回(1964年)
結城昌治 『夜の終る時』、河野典生 『殺意という名の家畜』
第18回(1965年)
佐野洋 『華麗なる醜聞』
第19回(1966年)
中島河太郎 『推理小説展望』
第20回(1967年)
三好徹 『風塵地帯』
第21回から第30回(1968年 - 1977年)
第21回(1968年)
星新一 『妄想銀行』および過去の業績
第22回(1969年)
受賞作なし
第23回(1970年)
陳舜臣 『孔雀の道』『玉嶺よふたたび』
第24回(1971年)
受賞作なし
第25回(1972年)
受賞作なし
第26回(1973年)
夏樹静子 『蒸発?ある愛の終わり?』、森村誠一 『腐蝕の構造』
第27回(1974年)
小松左京 『日本沈没』
第28回(1975年)
清水一行 『動脈列島』
第29回より、長編・短編・評論その他の区別を設ける。
第29回(1976年)
長編賞 - 受賞作なし
短編賞 - 戸板康二 「グリーン車の子供」
評論その他の部門賞 - 権田萬治 『日本探偵作家論』
第30回(1977年)
長編賞 - 受賞作なし
短編賞 - 石沢英太郎 「視線」
評論その他の部門賞 - 山村正夫 『わが懐旧的探偵作家論』
第31回から第40回(1978年 - 1987年)
第31回(1978年)
長編賞 - 泡坂妻夫 『乱れからくり』、大岡昇平 『事件』
短編賞 - 受賞作なし
評論その他の部門賞 - 青木雨彦 『課外授業 ミステリにおける男と女の研究』、石川喬司 『SFの時代』
第32回(1979年)
長編賞 - 天藤真 『大誘拐』、檜山良昭 『スターリン暗殺計画』
短編賞 - 阿刀田高 「来訪者」