探偵の探偵
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探偵の探偵
ジャンル
ミステリアクション
小説:探偵の探偵シリーズ
著者松岡圭祐
イラスト清原紘
出版社講談社
レーベル講談社文庫
刊行期間2014年11月14日 - 2016年4月15日
巻数全6巻(1 - 4巻(探偵)・1 - 2巻(鑑定))
漫画:探偵の探偵
原作・原案など松岡圭祐
作画清原紘
出版社講談社
掲載誌週刊ヤングマガジン
発表号2016年24号 - 2017年25号
発表期間2016年5月16日 - 2017年5月22日
巻数全2巻
話数全22話
テンプレート - ノート
ポータル文学

『探偵の探偵』(たんていのたんてい、Detective versus Detectives)は、作家の松岡圭祐日本推理小説のシリーズ。2014年11月に講談社文庫から刊行が開始された。表紙イラストは清原紘

2015年7月期に、フジテレビ系でテレビドラマ化され[注 1]、2016年5月より週刊ヤングマガジンで清原紘による漫画が連載された。

全4巻と『万能鑑定士Q』シリーズとのコラボである『探偵の鑑定』全2巻の合計6巻で完結。但し2巻に登場した半グレ集団の『野放図』と、3巻までの真犯人の娘について一部物語は同著者の『高校事変』に引き継がれている。

2022年11月『探偵の探偵 桐嶋颯太の鍵』刊行。これまでサブキャラクターだった桐嶋颯太を主人公にするスピンオフで、刊行は角川文庫[2]
概要

探偵業者の中でも、探偵を探偵する、対探偵課なる部署に勤務する新人調査員、紗崎玲奈の活躍を描く[3]

同著者により隔月発売で4年以上続いた『万能鑑定士Q』と同じく、ハイペースの刊行が特徴で、第1巻の翌月に第2巻が発売され、その3か月後に第3巻が発売される。殺人事件や自然死が描かれなかった『Qシリーズ』とは異なり、本作はバイオレンスを含むハードボイルドで硬質な描写が特徴となっている[3][4]

『探偵の探偵』は松岡圭祐事務所の登録商標である[5]

『探偵の探偵IV』が『ダ・ヴィンチ』のブック・オブ・ザ・イヤー2015・小説ランキングで10位となった[6]

『探偵の探偵』がブックリスタ年間ランキング2015小説部門2位[7][注 2]、『探偵の鑑定』がソニーリーダーストア2016年上半期ベストセラー・ミステリー部門ランキング1位となった[8]

テレビドラマ版がアメリカ(Detective vs Detectives)他、世界各国で動画配信されている。漫画版がドイツやインドネシアで発売されている[9]
作品の特徴

推理小説における探偵という約束事を否定し、現代社会に存在する探偵業、調査業をベースに、平成19年6月より施行された
探偵業法に絡む同職業の倫理をテーマとし、新機軸の探偵物語を展開する[3][10][注 3]。多くのミステリ作家がフィクションの探偵と現実の探偵の違いについて「それはそれ、これはこれ」と割り切った姿勢を貫いてきたが、両者を共存させるのはそれだけ難しい試みに違いないものの、本作ではバランスを取り釣り合わせている[11]

徹底してリアルな探偵業界を背景にし、フィクションにおける探偵像の定型である正義のヒーローの化けの皮を容赦なく剥がし現実を晒す作風である[12]。探偵術・知識・機転を絡めた豊富なトリビアと[13]、悪徳探偵を退治する対探偵課勤務の女性探偵が主人公であることも新鮮な要素である[14]

エンタメ性を重んじた作風ながら、現実を踏まえており、スマートフォンやパソコンを駆使した情報収集や尾行の技術[注 4]、即席盗聴器[注 5]の作成などは詳細に事実に立脚する。科学技術面および法律面も含め舞台の時期設定は刊行時期と一致している。1巻はカジノ法案について国会が審議中、2巻でメールが見られるブルートゥース腕時計が用いられている[15][16]。作品の基盤にそうしたプライバシー社会の実情が刻まれており、現実的恐怖から出発している[17]

推理小説の探偵と現実は異なることが強調され、1巻ではそのようなフィクション調の探偵はマスコミを利用しイメージを売ろうとする悪徳探偵としてのみ登場する[18]。このため、1巻では推理小説的な様式美に基づく謎の提示はないが、シリーズ全体のジャンルは推理小説であり、2巻のDVシェルター集団失踪事件ではれっきとした不可解な事件の提示、および謎解きが描かれている[19][20]

全4巻でストーリーにいったん区切りをつけた後、新章として『万能鑑定士Q』シリーズとクロスオーバーした『探偵の鑑定』2部作をもってシリーズ完結となる。一部物語は『高校事変』シリーズに引き継がれる。

あらすじ
探偵の探偵

中堅調査会社スマ・リサーチ社が併設する探偵養成所スマPIスクールに、決して笑わない美少女、紗崎玲奈が入学する。探偵のすべてを知りたい、しかし探偵にはなりたくないと主張する玲奈に対し、スマ・リサーチ社長の須磨康臣はひそかに彼女の背景をさぐる。玲奈はストーカー被害により妹の咲良を亡くしており、しかもそのストーカーに咲良の居場所を教えたのが、素性不明の探偵であると知った。玲奈に復讐の意志があることに気づいた須磨は玲奈を退学させようとするが、玲奈は涙ながらに「ほかにいくところがない」と訴える。須磨は2年に及ぶ本格的な養成と引き換えに、卒業後もまだ探偵になる意志があるのなら、みずからの提案する進路に従ってもらいたいと条件を突きつける。玲奈は了承し、卒業ののちはスマ・リサーチに新設された「対探偵課」に勤務することになった。

さらに1年が経過した頃、ハローワークで職探しをしていた峰森琴葉が、調査業の人手不足による求人に乗り、スマ・リサーチ社の面接を受ける。須磨は琴葉を玲奈の助手につけた。だが琴葉が見たのは、玲奈の想像を絶する過酷な勤務風景だった。

妻から夫の浮気調査を依頼されていた探偵が、ネタをつかんだのち、夫へ恐喝を働いているという訴えがスマ・リサーチに入った。そのような悪徳探偵に関する苦情や相談は、対探偵課にまわってくるのだった。玲奈は現地へ赴き、琴葉も勝手についていくが、実は相談自体が悪徳探偵の罠だった。玲奈はマンションの一室におびき出され殺されそうになる。しかし玲奈は猛然と反撃し、逆に相手を意識不明の重体に至らしめる。傷だらけ、痣だらけになった玲奈だが、琴葉に対し、これが対探偵課の日常だとつぶやく。対探偵課の玲奈は、大勢の悪徳探偵たちから恨みを買っており、報復も頻繁にあるのだった。

あまりの状況に琴葉は衝撃を受け、涙ぐむが、スマ・リサーチに戻ると探偵課の桐嶋颯太が「探偵はすべて悪徳のようなものであり、互いに違法行為に及んでいるためどちらも通報を控える」と説明する。まるでヤクザの抗争だと琴葉は嘆き「探偵はもっと知的な職業だと思っていたのに」と主張する。桐嶋はさらりと、そんなものは小説やドラマの世界のみの話であり、現実の探偵は推理などしないし、人の秘密を暴いて回る鼻つまみ者でしかないと言う。

それでも琴葉は、結婚を機に同居できなくなった姉、彩音の代わりを求めていたため、玲奈への依存心をひそかに募らせていた。このため、危険を知りながらも探偵業を辞める決心が鈍り、ずるずると対探偵課での仕事の日々が長引いていく。

玲奈は自分を襲撃した悪徳探偵が、メディアで名を馳せる阿比留綜合探偵社の阿比留佳則により、操られていたことを知る。阿比留は、現実の探偵が民事専門で刑事事件に関与しないにも関わらず、あたかも探偵が小説やドラマのように、推理力など特殊な能力や行動規範に立脚しているよう喧伝し、さらに自分がその第一人者であるかのように振る舞っていた。インテリ層からは胡散臭がられようと、現実とフィクションを混同しがちな大衆により支持された阿比留は、ワイドショーで獲得した人気を背景に、前副総監の遺産相続問題について警察から依頼を受ける。これは副総監の内縁の妻と実子の間で争われる民事上の問題でしかないのだが、探偵が警察からの依頼を受けるという意味で、阿比留の自己宣伝と立場の誇示にひと役買う重要な案件だった。阿比留はこれを対探偵課に邪魔されないため、玲奈を事前に葬ろうとしたのだった。

玲奈の機転で阿比留のもくろみは外れ、後日阿比留は警察からの失笑を買う結果になった。阿比留は玲奈に対し怒りを募らせ、GPSで位置を捕捉したうえ襲撃、車ごと海へ落とす。それでも脱出した玲奈は、ぼろぼろになりながら阿比留の企みを追う。


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