掛け物
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掛軸
掛軸(北条静香 桜に小禽)
中国語
中国語 掛軸、立軸
繁体字 掛軸、立軸
簡体字 挂?、立?

発音記号


朝鮮語
ハングル??
漢字簇子

発音記号
RR式chokja
MR式ch'okcha

日本語
漢字 掛軸
新字体 掛軸
旧字体 掛軸

掛軸(かけじく)とは、や東洋画を裂(きれ)や表装したもの。日本では床の間などに掛けて鑑賞し、「床掛け」と言われることもある。後述のように、掛け軸と同様な方法で保管・鑑賞される書画は中国美術に古来存在する[1]各名称

仏教を広めるための道具として日本に流入した後、日本の文化と融合し、室内装飾で重要な役割を果たしている。「床掛け」に近い掛軸としては、茶道茶室内で用いる語などを書いた、やや細い「茶掛け」がある。それ以外では、仏壇の中で使う「仏掛け」があり、本尊脇侍の絵像が描かれていたり、名号法名軸に仕立てられたりしている。

現代においても、昔の掛け軸が文化財として保護・展示されていたり、骨董として収集・売買されたり、肉筆印刷で新たに制作されたり[2]している。
掛軸の歴史
掛軸の伝来
中国北宋時代に掛物として掛軸が用いられていた。「掛けて拝する」事に用いられ、礼拝用の意味合いが強くあったと思われる。桐箱に入れると持ち運びに容易である事と、比較的複数生産が可能であったため、掛軸は仏教仏画用にまず普及を始めた。
掛軸の発展
日本では、すでに飛鳥時代に掛軸が仏画として入ってきているが、鎌倉時代後期に禅宗の影響による水墨画の流行から掛軸も流行していった。この流行により、掛軸は「掛けて拝する」仏教仏画の世界から、花鳥風月の水墨画など独立した芸術品をさらによく見せる補完品として発達していった。室町時代以降、「茶の湯」の席で座敷の「床の間」にも水墨画の掛軸が多く見られるようになった。千利休が掛軸の重要性を言葉にするようになると、茶を愛する人達により掛軸が爆発的に流行するようになった。来客者、季節、昼夜の時間を考慮して掛軸を取り替える習慣が生まれた。来賓時、その場面の格式などを掛軸で表現することが重要視される考え方が生まれた。真の(さらに真、行、草)、行の(さらに真、行、草)、草の(さらに行、草)などである。
掛軸の普及
江戸時代に明朝式表具が日本へ入り、文人画には文人表装などで掛軸が華やいでいった。それと同時に、表具の技術技巧が著しく発展を遂げた。また、大和錦・絵錦唐織など複雑な文様の織物が好まれ、西陣など織物産地で次々生まれていった。18世紀には、江戸を中心とする狩野派とは別軸で京都画壇が栄えた。日本画も楽しむという価値観を持った人達に支持され、掛軸もそれにつれ、芸術価値を高めていった。肉筆浮世絵で花開いた。明治大正期は日本画の隆盛により、掛軸もさらに大きく飛躍していった。昭和に入ると、官公庁主催であった「文展」(現:日展)と「日本美術院」などの台頭により日本画の隆盛期を迎えた。
掛軸の今
現在は非常に質の高い作品を身近に楽しめるだけの環境が整っている。掛軸は日本が誇れる伝統と文化のひとつを担っている。一般家庭における床の間は、家族の心の拠り所であり、ご来訪のお客様をもてなす大事な場所だとされる。掛軸は、家主の思いを来客に伝え、先人の想いを子孫に伝え、また、日本人の長い歴史に培われた「美」を表現する大切なお道具となった。
掛軸の種類正月の松の床掛け(1953年)

仏画、肉筆浮世絵山水画花鳥画墨蹟古筆色紙短冊画賛手紙である「消息」、巻物を切り取った一部である「断簡」などが表装され、掛軸となる。連作となる複数の書画を同じ表装で仕立てたものを「対幅」(ついふく)と呼ぶ。対幅には柿栗図や竜虎図といった双幅、観音などを描いた三幅対、四季を描いた四幅対、12ヶ月を描いた十二幅対などがある。以上を床の間に掛けるものという意味で、「床掛け」ともいう。

「床掛け」以外の掛軸には、仏壇の中に掛ける掛軸がある。本尊脇侍の絵像、名号法名軸がある。

庶民向けに簡素、安価に製造・販売される掛軸もある。北関東ではかつて、生まれた子供の初正月に掛け軸絵を贈る風習があった。初節句の祝い品とした地域もあった。絵柄は七福神などのほか、男児向けには武者や軍人、女児には美人画が好まれたという。主な産地は栃木県佐野地方で「佐野掛地」と呼ばれた[3]
表装の様式大和表装、文人表装

掛軸の様式は茶道と共に確立した。座って見上げるときに美しく見えるように寸法が定められており、床の間の大きさや畳の大きさを考慮して作られる。一般に関東では「上一文字」の丈が「下一文字」の丈の2倍、「天」の丈が「地」の丈の2倍といったように、上部と下部の比率が2対1になっているが、関東よりもの大きな関西では、2対1よりも上部を若干短めに作られる。

表装の材質としてあるいは、金襴、銀欄、緞子(どんす)、(しゃ)といった裂(きれ)が用いられる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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