排水量
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船の船首

排水量(はいすいりょう、英語: displacement)とは、重量を示す数値であり、主として艦艇について用いられる。トン数の一種であり[1]、排水トン数(displacement tonnage)とも称される[2]

載貨重量トン数(deadweight tonnage)とは別物なので、混同してはならない、とされている。
計算法水に浮かぶ物体は、物体の重さと浮力とが釣り合うときに、物体は静止する。また、浮力の大きさは、水面から下で物体が排除した重さによる力の大きさに等しい。

船を水上に浮かべた際に押しのけられるの重量をトン単位で示した数値である。アルキメデスの原理より、船の重量に等しい数字となる。ただし、完成した船を実際に計量するのではなく、海水の比重を考慮したうえで設計図を基に喫水線下の体積から算出されるのが一般的である。計算にあたっては、まず正面線図を用いて各断面での計画吃水線下の面積をプラニメータで求めたのち、これらの面積をシンプソンの第1法則を用いて計算することで、裸殻排水量(naked displacement)が求められる。これに副部排水量として外板排水量(skin displacement)と付加物排水量(appendages displacement)を加えると全排水量となる[1]

なお常備排水量については、下記のような概算法が知られている。これによって、実際の値の95 - 98パーセント程度の近似値を得ることができる[1]。 Δ N = 1.025 L w l B w l d C b {\displaystyle \Delta _{N}=1.025L_{wl}B_{wl}dC_{b}} Δ N {\displaystyle \Delta _{N}} :常備排水量
L w l {\displaystyle L_{wl}} :水線長
B w l {\displaystyle B_{wl}} :水線幅
d {\displaystyle d} :吃水 C b {\displaystyle C_{b}} :方形係数 (駆逐艦では一般的に0.47 - 0.52程度)

種類

艦船の状態によって排水量は異なるため、以下の通り複数のものがある。なお、以下で「水」とあるのは飲料水その他の生活用水ではなく、予備罐水、つまり蒸気機関で使用する補充用の水のことである。
軽荷排水量

軽荷排水量(: light displacement)は、弾薬・燃料など全ての消耗品を搭載しない状態の排水量。なお、実際にこの状態で航行すると復原性が低下することから、バラストタンクに注水して重心を下げることになるが、これを補填軽荷排水量(ballasted light displacement)と称する[1][3]
基準排水量

基準排水量(: standard displacement)は、満載状態から燃料と予備水を差し引いた状態の排水量[1][3]

年代および国によって定義が異なるが、一般的にはワシントン海軍軍縮条約において採用された上記の定義が用いられる。仮想敵国から想定される作戦海域は各国で異なり、燃料および予備缶水を含めると長大な航続力を必要としない国が有利になることから、純粋な戦闘能力のみで比較するためにこれらの重量を差し引いた状態とされた。想定作戦海域が広大である英米が不利にならないためであるとも言われている。船の状態としては不自然に過ぎ実用的ではないため、近年ではこの状態を諸元として使用する国はない。

なお、海上自衛隊は艦艇の公式諸元として基準排水量を公表しているが、これは名称こそ同じであるものの、1978年昭和53年)に制定された船舶設計基準細則で規定されているものである[4]。具体的には、ワシントン条約の定義による基準排水量から、「弾薬・食料・乗員」の重さを差し引いたものであり、建造排水量(純粋な艦としての重さ)と等しい[5]
常備排水量

常備排水量(: normal load displacement)は、乗員と弾薬は定数を、また燃料・真水・糧食などの消耗品は3分の2を搭載した状態の排水量。戦場(目的地)に到着したときの状態を想定したものである。ワシントン条約締結以前は、これを排水量の標準として使用する国が多かった。

イギリスではかつて積載排水量と、また大日本帝国海軍では公試排水量と称していた。なお大日本帝国海軍の場合、大正時代末期までは、公試排水量とは別に、弾薬3/4、燃料1/4、水1/2の搭載状態を常備排水量として定義していた[3]
満載排水量

満載排水量(: full load displacement)は、乗組員・弾薬・燃料・水など、計画上搭載できるもの全てを搭載した状態での排水量[1]。ただしバラスト水は半量とする[3]。近年多くの海軍ではこれを公式の諸元として使用している。
脚注[脚注の使い方]^ a b c d e f 岡田幸和「第1部 基本計画編」『艦艇工学入門―理論と実際 ?』海人社、1997年、7-70頁。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4905551621。 
^ 森恒英「1. 船体各部の名称」『艦船メカニズム図鑑』グランプリ出版、1989年、10-21頁。ISBN 978-4906189878。 
^ a b c d 小林義秀「トンの話」『世界の艦船』第482号、海人社、1994年6月、104-108頁。 
^ 北島郁夫「艦艇設計を鑑みて」『防衛庁技術研究本部五十年史』2003年、114-115頁。 NCID BA62317928。 。「を鑑みて」は明らかに誤用であるが、参考文献なので放置する。
^ “排水量とトン数の話”. 果てしなき業務日記. 海事代理士 高橋剛 (2013年7月). 2019年9月18日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2019年9月18日閲覧。

関連項目

トン数

典拠管理データベース: 国立図書館

イスラエル

アメリカ


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