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排気再循環(はいきさいじゅんかん、英語: Exhaust Gas Recirculation)とは、自動車用の小型内燃機関において燃焼後の排気ガスの一部を取り入れ、再度吸気させる技術(手法あるいは方法)である。主として排気ガス中の窒素酸化物(NOx)低減や部分負荷時の燃費抑制を目的としている。英語表記の頭文字をとって通称EGRと呼ばれる。 内燃機関において、燃焼後の排気ガス中には酸素は含まれていないか、もしくは希薄な状態にある。この排気を吸気と混ぜると吸気中の酸素濃度が低下することにより、
概要
大気より酸素濃度が低い状態での燃焼によって(ピーク)燃焼温度が低下する。この燃焼温度の低下によりNOxの発生が抑制される。
燃焼温度の低下は、シリンダおよび燃焼室壁面やピストン表面からの熱エネルギー放散を低減し、熱解離
ガソリン機関では部分負荷時にEGRを導入すると、EGRを導入しない場合と比べて吸気管負圧を小さくできるため、スロットル損失の減少により燃料消費率が低減する。あたかも、より小排気量のエンジンを高負荷で使用するのと同等の効果が得られる。
EGRによる還流量は、ガソリン機関の場合、吸気量の最大15 %程度であり、車両環境や走行条件に応じて常に最適量に制御される。車両重量に比してエンジン出力の小さい大型ディーゼル車両では、比較的高負荷において排出ガス基準をクリアしなければならないためにEGRの適用範囲が広い。 EGRは、三元触媒が実用化される以前の1970年代に、ガソリン機関において酸化触媒では浄化できないNOxの低減対策として導入された。しかし、還流量や燃料噴射量を精密に制御できない場合には、燃焼を安定させるために吸気混合比を高く(リッチに)設定せざるを得ず、燃費が悪化する結果を生んだ。その後、制御技術が向上し、また三元触媒が実用化された現在では、排出NOx対策よりも燃費抑制目的で用いられている。 原理上スロットルバルブが不要なディーゼル機関[注釈 1]においては、スロットル損失の低減効果はないので、1980年代後半より主としてNOx低減目的でのEGRが行われている。また、排気中に存在する多量の二酸化炭素(CO2)および水蒸気は大気に比べ比熱容量が高いので、若干の燃料消費率抑制に役立っている。
歴史
技術ルノー・R9M型エンジン
実用化されているEGR手法には、大きく分けて「内部EGR」と「外部EGR」の2つに分類される。前者は、バルブオーバーラップや吸排気バルブの開閉時期を調整することなど何らかの手法で排気ガスを再循環させる手法である。後者は、吸気マニホールドおよび排気マニホールドをパイプ等で接続し、中間に設けた制御バルブの開度や開弁時間を変化させて開閉および流量調整を行う。理論上、EGR量を変えて行けばガソリン機関のスロットル廃止が可能であるが、EGR導入時は燃焼が緩慢となり、アイドリング等の超低負荷時や冷間始動時は失火を起こす等の理由により実用化されていない。EGRと希薄燃焼技術は大いに関連性を持ち、さらにはガソリン直噴技術は希薄な混合気下でいかに安定した燃焼を得るかを課題としたものである。
内部EGR「バルブオーバーラップ」も参照
内部EGRは、バルブオーバーラップの利用や排気バルブの閉時期を調整することで排気ガスを再循環させる手法である。もっとも多く用いられるのはバルブオーバーラップの利用で吸排気ポートの圧力差により排気ガスを再循環する方法である。しかし圧力差が不安定であるためEGRの制御には限度がある。オーバーラップ以外の手法としては、排気バルブの閉弁を吸気工程途中まで遅らせることで排気ポートからの再導入(排気遅閉じ・吸気遅開き)、排気工程で吸気バルブを早期に開弁することで吸気ポートに排ガスを逆流させての再吸気、吸気工程で排気バルブの一時開弁、排気バルブを排気工程途中で閉弁し排気ガスを残留させるなど多岐にわたる。この中で多く用いられているのは排気遅閉じ・吸気遅開きである(後述)。外部装置ではなく動弁系で対応できるためスペースを抑えられ、構造も単純にできる利点がある。運用上においても高温の排気ガスに晒されたりカーボン等の堆積により動作不良を起こす可能性がある外部EGR装置と比べてロバスト性に長けるというメリットがある。排ガス清浄性ではNOx低減があるが外部EGRに比べると炭化水素(HC)低減への効果が大きいとされる。