排他的経済水域
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それぞれの水域を示す図(立体図)それぞれの水域を示す図(平面図)世界各国の排他的経済水域(濃青)大西洋インド洋における排他的経済水域太平洋における排他的経済水域カリブ海における排他的経済水域

排他的経済水域(はいたてきけいざいすいいき、: Exclusive Economic Zone; EEZ、: Zone economique exclusive, ZEE、: Ausschliesliche Wirtschaftszone, AWZ)別名200海里水域とは、海洋法に関する国際連合条約に基づいて設定される、天然資源及び自然エネルギーに関する「主権的権利」、並びに人工島・施設の設置、環境保護・保全、海洋科学調査に関する「管轄権」が及ぶ水域のことを示す。

水域と訳されるが、英語では単にzone(領域)と水域という含意はない。

領海接続水域ではないため、航行や上空飛行は妨げられない。
主権的権利

国連海洋法条約では、沿岸国は自国の基線から200海里(370.4キロメートル)の範囲内に、排他的経済水域を設定できる。

設定水域の海上・海中・海底、及び海底下に存在する水産鉱物資源並びに、海水・海流・海風から得られる自然エネルギーに対して、探査・開発・保全及び管理を行う排他的な権利(他国から侵害されない独占的に行使できる権利)を有することが明記されている。

排他的経済水域に存在する鉱物資源は埋蔵している段階では、沿岸国には所有権は存在せず、採掘して陸上・海上施設・船舶に引き上げられた段階で、その権利が発生する。また水産物も、水揚げされて初めて所有権が発生する。自然エネルギーに対しても、例えば電力に変換されて、初めて物権が発生する。

批准沿岸国は、天然資源及び自然エネルギーに対する、下記の行為に関してのみ法律を制定し、罰則規定を設けることができる。主権には及ばないが、排他性を有しているために、「主権的権利」と呼んで「主権」とは一線を画している。
管轄権

また排他的経済水域において、人工島・施設の建設、海域の環境保護・保全の観点から環境を破壊する恐れのある行為、海洋の科学的調査の実施に対して沿岸国は排他的な「許認可権」を有しており、沿岸国へ事前の申請を必要としている。沿岸国は申請に対して許可を与えたり与えなかったりすることで右の行為に対して管理を行うことができる。沿岸国は申請内容と異なる行為をして違反が明らかになった場合は速やかに中止をさせることができる。

海洋の科学調査に関しては、何をもって科学的調査とするのか、その定義について各国の主張に隔たりがあり一致をみていない。
排他的経済水域

歴史的には、海洋天然資源の持続的な利用が妨げられないよう、資源管理の徹底のために考案された水域が始まりである。現在の『海洋法に関する国際連合条約』で規定されている排他的経済水域は、下は海底下から上は上空まで適用される水域であるが、歴史上それは海中から上の「漁業水域」と海底面・海底下の「大陸棚」の2つの別個に組み立てられた概念からなっていた。
漁業水域

「漁業水域」については海中の生物資源の「回遊性」と領海境界における生物資源の移動の「連続性」を根拠としている。魚などにとって領海境界は移動を妨げるものではなく自由に移動を行えるため、領海内の生物資源は隣接する領海外の生物資源の増減に大きな影響を受ける。ゆえに自国領海に隣接する領海外で行われる漁業について、沿岸国が管理を行権利を有する正当性を訴えた。

歴史上最初の領海外の公海上の漁業管理の試みは、アメリカ合衆国トルーマン大統領により1945年に宣言された『公海の一定水域における沿岸漁業に関するアメリカ合衆国の政策』を端緒とする。この宣言には漁業水域の具体的水域範囲は設定されてはいないが、当時は領海幅についても国際的に合意されているとは言えない状態であった。当時、漁業技術の革新により母船式各種漁業が盛んとなりつつあり、自国領海近傍で行われる外国遠洋漁業者に対する牽制を含めての宣言布告であった。

国家間の同意に基づいた条約は、1958年に採択、1966年に発効した『漁業及び公海の生物資源の保存に関する条約』が最初である。領海外の1漁場で2か国以上の国が漁業を行う場合、それらの国の合意によって漁場の管理を行うことが決められた。また一国が領海外に領海と隣接して漁業管理を行うことができる水域(漁業水域)を設けることができることが定められた。ただしこの条約において漁業水域の外側境界線の範囲の具体的数値については何も定められなかった。この曖昧な漁業水域の定めは禍根を残し、その後各国が暫定的に独自に漁業水域を宣言し、一方的な管轄権の行使、即ち一方的に他国漁船に対し漁業取締を行う状況が頻発した。日本においても『海洋法に関する国際連合条約』が締結し発効されるまでの暫定法[要曖昧さ回避]として、漁業水域の外側境界線まで領海基線から200海里とする『漁業水域に関する暫定措置法』を1977年に施行し、独自の「漁業水域」を設定し国内外に宣言した。
大陸棚

「大陸棚」については、岩石、土砂、火山灰などの陸地由来の堆積物により大陸棚や海底斜面が形成されることが考慮された。陸地周囲に地質学的な長期間をかけて堆積物中に形成された石油などの鉱物資源や、堆積物由来の無機物有機物を材料とし生物学的に何世代にも渡り徐々に移動する海底に生息する生物資源を想定し、陸(領土)及びその周囲の海(領海)との「延長性」を根拠とした。陸地から堆積物がなければ石油や海底に生息するなどはできなかったとする論拠である。また当時の技術では石油天然ガスなどの海底鉱物資源を開発して海底パイプラインにより沿岸に輸送する以外に石油・天然ガスを生産する方法がなく、沿岸国の協力は海底資源を開発するうえで必須条件と考えられていた。以上の大陸棚資源の生成に果たした沿岸国と役割と、大陸棚資源開発における沿岸国の重要性を根拠とし、沿岸国が大陸棚資源開発の管轄権を有するとされた。

歴史上の領海外の公海下の海底資源の管理の試みは、アメリカ合衆国トルーマン大統領により1945年に宣言された『大陸棚の地下及び海底の天然資源に関する合衆国の政策』を端緒とする。この宣言では大陸棚の地形学的定義、範囲、水深何メートル以浅とするかの定めはない。

国家間の同意に基づいた初めての条約は、1958年に採択、1964年に発効した『大陸棚に関する条約』である。領海外の隣接する200m以浅を条約大陸棚とし、200m以深でも資源が開発可能ならば拡張を可能とする「開発可能性」も付与された。これは当時の技術の石油・ガス開発が可能な水深の限度は200m程度と考えられていたことと、科学技術が発展してそれ以上の水深の海底開発の可能性も見据え文章化したものである。もう一つ重要なことは、海を隔てて隣接し大陸棚を共有する国同士及び領海線を共有する国同士は、双方の合意なしに一方的に大陸棚境界を設定できないことと、また定められる大陸棚境界線は中間等距離線を原則(例外も有り得る)とすることを明記した点にある。
排他的経済水域

一方的宣言と取締りに終始していた「漁業水域」については1982年採択、1994年発効の『海洋法に関する国際連合条約』をもって、これまでの「大陸棚」の概念と統合し、新たに「排他的経済水域」という語となって明文化された。このとき水域、海底域の範囲についても原則領海基線から200海里を範囲とすると定められた。旧条約『大陸棚に関する条約』で定められていた水深200m以浅及び「開発可能性」の規定は消滅した。また地形的に大陸棚と認められる条件を定め、200海里水域の外でその大陸棚の条件を満たす海底の内、最大で領海基線から最大で350海里以内あるいは水深2500m等深線から100海里以内を大陸棚境界とすることを定めた。(大陸棚延長)

『海洋法に関する国際連合条約』では、沿岸国が有する「排他的経済水域」における「主権的権利」「管轄権」が規定されただけでなく、非沿岸国の「排他的経済水域」において保護される諸権利についても規定されている。それらは以下となる。

航行

上空飛行

海底電線・海底パイプラインの敷設

排他的経済水域の起点となる島の条件

『海洋法に関する国際連合条約』において排他的経済水域をの起点となる領海基線を設けることができる島についての必要条件の定めは第121条にある。
第1項

第1項では「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。」と定め、本条約上の「島」についての規定がされている。即ち潮汐により海底に没する陸地は本条約上の「島」ではないと条文を解釈することができる。
第2項

第2項では「第3項に定める場合を除くほか、島の領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚は、他の領土に適用されるこの条約の規定に従って決定される。」と定め、第1項で定義された本条約上の「島」は領海接続水域、排他的経済水域及び大陸棚の起点を定めるうえで遜色なく「領土」としての扱いを受けると条文から解釈できる。ただし次の第3項で定義される「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩」は、排他的経済水域及び大陸棚の起点を定めるうえで「領土」として扱われないことを前提として定めているものと解釈できる。
第3項

第3項では「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。」と定められている。この項では領海や接続水域については触れておらず、ゆえに「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩」であっても、領海、接続域についてはその起点を定めるうえで「領土」として扱うこと事ができると条文上から解釈が可能である。また「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできる岩」は領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚の起点を定めるうえで「領土」としての扱いを受けることができると論理学上の解釈が可能である。
論理的解釈

第121条の条約上の「島」と条約上の「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩」という2つの概念の関係については、
「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩」は「島」の一部である(十分条件)とする説

「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩」と「島」は排反の関係にある(両立不可能)とする説

の2説がある。
排他的経済水域境界画定を巡る主張の相異


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