振付師(ふりつけし、英: choreographer)は、振付(ふりつけ、英: choreography)を専門に行う者をいう。歌舞伎舞踊や日本舞踊のような伝統芸のほか、バレエやダンスの振付をする者も含まれる。バレエやダンスの世界では振付家と呼ぶことが多い。ショウビズ界では英語の音訳でコリオグラファーと呼ぶこともある。 振付(コリオグラフィー)は、動作を行う際の人体の構成(ポーズ)や動作の流れの構成を行う芸術の一種である[1]。ある瞬間の体のポーズや、それらにつながる一連の動きを構成することを指す。また振付作業の結果にできる一連のダンスの構成も含まれる。ダンスの世界以外に、映画やスポーツ・身体表現の分野でも用語として使用されている。 大まかにいって、振付作業は動作の順序、リズム、強調すべき点を考慮して行われている。 なお振付師という日本語は日本舞踊の振付職人として享保年間にはすでに成立していたが、英語の "Choreographer" という言葉は意外に新しく、1930年代半ばから、米国へ移住したジョージ・バランシンによってミュージカルや映画の世界で広められたのが始まりである[2]。バレエの世界では振付家は芸術監督を兼務することが多く、ダンサーに対して振付指導を行いながら舞台全体の演出も行っている。
振付と振付師
殺陣 - ステージコンバット、映画や舞台での剣戟やクンフーアクションなどを担当するのは殺陣師(ファイト・コレオグラファー)やアクション監督である。
体操(体操競技、新体操、トランポリンなど)
フィギュアスケート
アーティスティックスイミング
マーチングバンド(隊形変化など)
ショークワイア(Show Choirs, ダンスやストーリーにあわせて行うショー形式のコーラス)
振付の記録・舞踊譜
ヴァレリー・サットン
ポーズをとるダンサーのヴァレリー・サットン。右はサットンの開発したダンスライティングによるこのポーズの記譜法
スペインのダンスであるカチューチャ
振付は、ダンスを振付創作したダンサー・振付師から他のダンサーたちへ、口伝や手取り足取りの指導、あるいは見よう見まねで伝えられる。世界中で古くから伝えられている舞踊・ダンスは、こうして年長者から次世代へ代々伝わってきた。しかしフランスやイタリアなど西洋で舞踏会が盛んになり、ダンスの複雑化やダンスの教養化が起こった17世紀以降、ダンスを紙に記録し印刷物などで普及させる試みが始まる。
バレエやコンテンポラリー・ダンスなど西洋の舞台芸術ではこの時以来、音楽を楽譜に写すように、ダンスの振付を抽象化し、シンボル的動作、回数、ステップの踏み方などの要素に分解し紙面に記録するダンス・ノーテーション(Dance notation、舞踊記譜法)を発達させてきた。
これは記録のみならず、ダンス教育や練習、ダンス研究などに利用されている。たとえば有名ダンサーのダンスを記録し後世に舞踊譜として振付を残すことで、後の時代の人々がこれに基づいてダンスを再現したり練習材料にしたり新たな振付の参考にしたり、研究者が過去のダンサーや振付師たちの研究・分析・批評に使うなどしてきた。
また舞踊譜は民族舞踊の記録など、文化人類学の世界でも利用されている(舞踊民族学)。日本でも明治以来、長年にわたり日本舞踊各流派の踊りや各地方の踊りを舞踊譜に記録することが、各流派の人々や舞踊研究者の間で行われてきた。
現代の西洋の主なダンス・ノーテーションには、20世紀に入り確立した
ベネッシュノーテーション(Benesh Movement Notation、ベネッシュ式記譜法)
ラバノーテーション(Labanotation、Kinetography Laban、ラバン式記譜法)