指標理論
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指標 (数学)」も参照

数学、特に群論において、群の表現の指標(しひょう、: character)は、の各元に対応する行列のトレースを対応させる写像である。指標は表現の本質的な情報をより凝縮された形で持っている。ゲオルク・フロベニウスは最初に、指標のみに基づいて、表現の明示的な行列表示は用いずに、有限群の表現論(英語版)を発展させた。これは有限群の複素表現はその指標によって(同型を除いて)決定されるから可能である。正標数の体上の表現、いわゆる「モジュラー表現」の場合には、状況はより繊細であるが、リチャード・ブラウアー(英語版)はこの場合にも指標の強力な理論を発展させた。有限群の構造に関する多くの深い定理はモジュラー表現の指標を用いる。
応用

既約表現の指標には群の多くの重要な性質が反映されており、したがってその構造の研究に用いることができる。指標理論は有限単純群の分類において本質的な道具である。Feit?Thompson の定理(英語版)の半分近くは指標の値の入り組んだ計算を伴う。指標理論を使う、より容易だがなお本質的な結果は、バーンサイドの定理(純粋に群論的な証明は見つかっているが、バーンサイドのもともとの証明のあと半世紀以上経ってからである)や、有限単純群シロー 2-部分群として一般四元数群を持つことはできないというブラウアー・鈴木の定理である。
定義

V を F 上の有限次元ベクトル空間とし、ρ: G → GL(V) を G の V 上の表現とする。ρ の指標 (character) とは関数 χ ρ : G → F ; χ ρ ( g ) = T r ( ρ ( g ) ) {\displaystyle \chi _{\rho }\colon G\to F;\;\chi _{\rho }(g)=\mathrm {Tr} (\rho (g))}

である、ただし Tr はトレースである。

指標 χρ が既約 (irreducible) あるいは単純 (simple) とは、ρ が既約表現であることをいう。指標 χ の次数 (degree) は ρ の次元である;標数 0 ではこれは値 χ(1) に等しい。次数 1 の指標は線型 (linear) と呼ばれる。G が有限で F が標数 0 のとき、指標 χρ の核 (kernel) は正規部分群 ker ⁡ χ ρ := { g ∈ G ∣ χ ρ ( g ) = χ ρ ( 1 ) } {\displaystyle \ker \chi _{\rho }:=\left\lbrace g\in G\mid \chi _{\rho }(g)=\chi _{\rho }(1)\right\rbrace }

であり、これはちょうど表現 ρ の核である。
性質

指標は
類関数である、つまり、各共役類上で一定の値を取る。より精密には、与えられた群 G の体 K への既約指標の集合はすべての類関数 G → K のなす K ベクトル空間の基底をなす。

同型な表現は同じ指標を持つ。標数 0 の代数閉体上では、半単純表現が同型であることと同じ指標を持つことは同値である。

表現が部分表現の直和ならば、対応する指標はそれら部分表現の指標の和である。

有限群 G の指標を部分群 H に制限したものは、H の指標である。

任意の指標の値 χ(g) は n 個の 1 の m 乗根の和である、ただし n は指標 χ を持つ表現の次数(つまり付随するベクトル空間の次元)であり、m は g の位数である。特に、F = C のとき、指標の値は代数的整数である。

F = C で χ が既約のとき、
[ G : C G ( x ) ] χ ( x ) χ ( 1 ) {\displaystyle [G:C_{G}(x)]{\frac {\chi (x)}{\chi (1)}}} はすべての x ∈ G に対して代数的整数である。

F が代数閉体標数 char(F) が G の位数を割り切らないとき、G の既約指標の個数は G の共役類の個数に等しい。さらに、この場合、既約指標の次数は G の位数の約数である(F = C ならさらに [G : Z(G)] をも割る)。

算術的性質

ρ と σ を G の表現とする。このとき以下の等式が成り立つ: χ ρ ⊕ σ = χ ρ + χ σ {\displaystyle \chi _{\rho \oplus \sigma }=\chi _{\rho }+\chi _{\sigma }} χ ρ ⊗ σ = χ ρ ⋅ χ σ {\displaystyle \chi _{\rho \otimes \sigma }=\chi _{\rho }\cdot \chi _{\sigma }} χ ρ ∗ = χ ρ ¯ {\displaystyle \chi _{\rho ^{*}}={\overline {\chi _{\rho }}}} χ A l t 2 ρ ( g ) = 1 2 [ ( χ ρ ( g ) ) 2 − χ ρ ( g 2 ) ] {\displaystyle \chi _{{\scriptscriptstyle {\rm {{Alt}^{2}}}}\rho }(g)={\tfrac {1}{2}}\left[\left(\chi _{\rho }(g)\right)^{2}-\chi _{\rho }(g^{2})\right]} χ S y m 2 ρ ( g ) = 1 2 [ ( χ ρ ( g ) ) 2 + χ ρ ( g 2 ) ] {\displaystyle \chi _{{\scriptscriptstyle {\rm {{Sym}^{2}}}}\rho }(g)={\tfrac {1}{2}}\left[\left(\chi _{\rho }(g)\right)^{2}+\chi _{\rho }(g^{2})\right]}


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