指定金融機関
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指定金融機関(していきんゆうきかん)とは、日本において地方公共団体が、会計管理者に代わって公金の収納、支払の事務を取り扱わせるために指定[1]する金融機関のことである。議会の議決を経て1つの金融機関が指定される(地方自治法第235条、同施行令第168条)。1964年(昭和39年)の地方自治法等の改正法施行により、それまで政令で定めていた金庫制度における「本金庫」を、預金制度に改め法本則にその法的根拠を定める形で導入された。

地方自治法について、以下では条数のみ記す。

地方公共団体における出納事務は会計管理者がこれを司るのが建前であるが(第170条)、その分量が多く、また複雑多岐にわたるため、これを会計管理者の下ですべて処理することは事実上不可能に近いことから、現金の出納事務に熟達している金融機関をして当該事務を掌理させることとしたものである。
概要

指定金融機関は、都道府県では必ず指定しなければならず(施行令第168条第1項)、市町村特別区を含む)では必要に応じて指定することができる(施行令第168条第2項)。市町村については、指定は任意とはいえ、公金取扱いの効率的運営と安全を図ることができる限り、積極的に指定金融機関等を指定して公金取扱いをさせる方が望ましいとされ、実際にほとんどの市町村で指定を行っている。指定の基準については特に法定されてなく、各自治体がそれぞれの地域の実情に応じて指定することになる。

指定を行うには当該自治体の議会の議決が必要であるが、どの金融機関を指定金融機関とするかの認否議決で足りるとされ(昭和26年<1951年>1月29日地自行発17号)、また本議案の発案権は長に専属し、議会に修正権を認めたものではないと解される(昭和29年<1954年>5月28日自丁行発82号)[2]。議決後、当該自治体と金融機関との間で具体的な契約を締結することにより、指定の効力が発生する。

指定金融機関は、住民の利便等の点から当該地方公共団体の行政区域内に本(支)店を有する金融機関を指定するのが適当であるとされるが、域内に確実な金融機関が存在しない場合には必ずしもこれによることを要しない(昭和38年<1963年>12月19日自治丁行発93号)。指定されるのは銀行であることが多いが、地方の市町村では区域内に銀行店舗が無いなどの事情で、古くから当地に存在する信用金庫[3]農業協同組合信連ないしは地域農協の信用事業部門。いわゆるJAバンク)、労働金庫及び信用協同組合[4]を指定することもありうる。

1つの地方公共団体が指定する指定金融機関は1つに限られる(施行令第168条第1項及び第2項)。一般会計並びに特別会計ごとに指定金融機関を設けることも認められない(昭和32年<1957年>12月27日自丁発234号)。かつての本金庫制度でも同様であったが、法令に規定されていない故をもって複数の本金庫を事実上指定していた事例があったので、指定金融機関の制度導入時に「一の金融機関」と明定された。複数の金融機関を1?5年交替で輪番指定することも差し支えないが、半年のごとき短期での交替制は認められない(昭和38年<1963年>12月19日自治丁行発93号)。

地方公共団体の長は、必要があると認める場合、指定金融機関に対し指定金融機関が取り扱う業務の一部を、地方公共団体の長が指定する金融機関に行わさせることが出来る。この金融機関のうち収納及び支払いの業務を行うものを指定代理金融機関という(施行令第168条第3項)。一方で収納業務のみを行う金融機関(ゆうちょ銀行および代理店業務を行う郵便局の貯金窓口含む)は収納代理金融機関という(施行令第168条第4項)。指定金融機関は自らの行う公金の収納及び支払い事務のほか、指定代理金融機関の行う収納及び支払い事務と収納代理金融機関の行う収納事務一切を総括することが求められる(施行令第168条の2第1項)。地方公共団体が指定金融機関に当該団体の公金の収納事務及び支払い事務の一切を総括(取りまとめ)させることにより、指定金融機関に設けられた当該地方自治体の公金口座の入出金は一元管理される。指定金融機関は、自らの公金取扱業務はもとより指定代理金融機関や収納代理金融機関が行う同業務についても、当該自治体への責任を有することとされる(施行令第168条の2第第2項)。

公金の収納の取り扱いは、地方公共団体ごとに定められた指定金融機関・指定代理金融機関・収納代理金融機関に限定されるが、その地方公共団体の区域内に店舗がある金融機関のほとんどを該当させることで、納付者は税や保険料などを自宅近隣の金融機関で納付書や口座振替により支払うことができ、利便性が確保されている。しかし、納付者が遠隔地に居住している場合には、近隣の金融機関では取り扱いが無いことがあり、不便を被ることがある。

一方、公金の支払いは、指定金融機関または指定代理金融機関から全国銀行データ通信システムを通じて振込ができればよく、振込先の金融機関は限定されない。

なお、指定金融機関を指定しなかった市町村は、収納事務取扱金融機関を指定することで住民サービスを低下させないようにすることもできるため(施行令第168条第5項)、規模の小さい町村では収納事務取扱金融機関を選択していることがある。

地方独立行政法人(および、国立大学法人公立大学法人)の出納業務を手掛ける金融機関を「指定金融機関」と称するが、本稿で説明する指定金融機関とは法的根拠は異なる。
店舗

指定金融機関には地方公共団体の預金口座が置かれて、公金の決済が行われる。本庁舎周辺の店舗(都道府県であれば「県庁前支店」など)の口座であるのが一般的で、納付書に「取りまとめ店 〇〇銀行〇〇支店」などの表記がされることもある。
庁舎内支店・出張所

収納や事務の便宜を図るため、都道府県や大規模な市の本庁舎内には、指定金融機関の店舗(支店または出張所)があることが多い。例えば、東京都庁第一本庁舎のみずほ銀行東京中央支店東京都庁出張所、大阪府庁本館のりそな銀行大手支店、横浜市役所内の横浜銀行横浜市庁支店などがある。このような店舗では、庁舎外の店舗と同様に公金に限らず各種銀行業務を取り扱っている。
庁舎内派出

小規模な市や町村では、本庁舎内に店舗は無く、公金の出納のみを行う「派出」の形で行員が派遣される形態となる。なお、庁舎内に派出を置くことは制度上必須ではなく、2020年(令和2年)3月末で本庁舎の派出を閉鎖した室蘭市北海道[5]、指定金融機関の派出撤退に伴って指定代理金融機関の派出を置いた期間が過去にある庄内町山形県[6]瀬戸市愛知県[7]のような例もある。
ゆうちょ銀行の扱い

ゆうちょ銀行銀行法上の銀行であって金融機関であるが、2007年(平成15年)10月の郵政民営化により発足した経緯から指定金融機関制度において特別な扱いがされており、ゆうちょ銀行を指定金融機関にすることはできない。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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