指名競争入札
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指名競争入札(しめいきょうそうにゅうさつ)とは、競争入札の手法の一つ。(一定の条件を満たす)希望者すべてを入札に参加させる一般競争入札と異なり、特定の条件により発注者側が指名した者同士で競争に付して契約者を決める方式。各省各庁の長は参加資格を定めなければならない(予算決算及び会計令第95条)が、一般競争入札と同じ場合は、資格内容、名簿とも一般競争の物を準用できる。
手続きの流れ

一般競争入札と同様に、入札の方法や審査基準等について、審査会を開いて事前に決定する。通常指名競争入札と工事希望型指名競争入札においては、客観的基準に基づいて、通常指名競争入札では10者程度、工事希望型指名競争入札20者程度、指名対象業者を選定する。

公募型指名競争入札では、一般競争入札と同様に公示を実施する。工事希望型指名競争入札や通常指名競争入札では、公示は行われず、指名通知のみが行われる。

公示を見て応募する場合、または、通知を受けて参加を希望する場合は、一般競争入札と同様に、一般競争入札参加資格確認申請書類を応募書類に添えて提出する。

申請書の提出期限の後、再度審査会を開いて入札参加資格確認申請書類を審査する。公募型指名競争入札や工事希望型指名競争入札では、指名予定業者数(10者程度)を超えていた場合には、事前に定められた審査基準に基づいて序列をつけ、指名業者を予定業者数まで絞り込む。ただし、2002年より公募した条件さえ満たすのであればすべての業者を指名する方式(公募型指名競争入札など)も採用されるようになった。

これ以下の手続きは一般競争入札と同様であり、入札参加を認められた者は、入札期限までに、入札書を郵送または持参するか、電子入札の手続きを行い、契約担当官等は、開札日(通常は入札期限の翌日)に複数の職員立ち会いのもと、入札書の開札を行う。総合評価方式の場合は予定価格以内で評価値(評価点を入札金額で除した値)の最も高い入札書を、価格評価方式の場合は予定価格内最廉価格の入札書を、落札として決定する。同点の場合は、くじ引き等で落札者を決定する。
功罪

指名競争入札は、発注者が入札参加者の選定の段階で入札に参加できる者を指定(指名)して行う入札制度であることから、発注者は受注希望者の能力や信用などを指名の段階で判断し、これらに疑いを持つ者を入札執行前に排除することが可能であるため、受注(希望)者の地域貢献度を重視することや、入札執行後に受注者の能力不足や信用度の欠落によるトラブルを容易に防ぐことが出来るため、かつては地方公共団体を中心に入札制度の主流となってきた。

一方で近年では、指名の際の選定基準について明確なルールがないことによる発注者の恣意性を問題視する事例も少なくない。指名に漏れた業者の中には、行政の恣意的な指名要件により自らが排除され業務の受注機会を失ったとして発注者に対して裁判を起こす事例[1]もある。また、入札の際に信用度等が重視されるが故に価格のみの競争が起こりにくくなり、参加業者が少数になるために談合が起こりやすく入札価格が高止まりしやすい、官製談合の温床となっているとの指摘もある。後述のように官製談合による公務員の逮捕は2010年代以降も後を絶たない。

このため、要件を詳細に定める代わりに希望する者を入札対象とする公募型指名競争入札や条件付き一般競争入札を導入する動きが活発となっており、指名競争入札は少額入札などの例外的扱いとなる傾向が見られる。
指名競争入札をめぐる刑事事件「一般競争入札#一般競争入札をめぐる刑事事件」も参照
2009年


6月20日 - 宮崎県えびの市長の宮崎道公と市内の造園土木会社社長が競売入札妨害の疑いで逮捕された。宮崎は、2008年6月27日に行われた「2008年度榎田橋橋梁維持工事」の指名競争入札で、同社に落札させようと計画。入札直前の6月26日頃、同社社長に工事の最低制限価格を電話で伝え、同価格に近い金額で工事を落札させた疑いがある[2]

2014年


5月20日 - 長崎県南島原市長の藤原米幸、副市長の永門末彦ら7人が官製談合防止法違反や公契約関係競売入札妨害の疑いで逮捕された。2012年6月28日に行われたポンプ場の電気設備工事の指名競争入札で、福岡市南区の電気設備会社に最低制限価格を類推できる情報を漏らして落札させた疑いがもたれた。落札価格は9,900万円で、予定価格の93%だった[3]

2016年


2月22日 - 北海道美瑛町の美瑛町立病院の放射線技師が官製談合防止法違反で逮捕された。2011年に行われた、放射線室で使用する「全身用MRIシステム」の指名競争入札で、放射線技師は病院が購入を決めていた機器のメーカーの社員と共謀し、意中の納入業者にだけ、予定価格を下回る卸売価格を告げて落札させた疑いがある。業者は予定価格9,648万6千円のところ、9,648万円で落札した[4]

11月8日 - 札幌市の市職員が官製談合防止法違反で逮捕された。市観光文化局スポーツ部が2013年2月に発注した札幌市麻生球場の搬入ゲート取り換え工事の指名競争入札において、市職員は市内の建築金物製作会社の従業員に入札の設計金額などを漏らしたとされる[5][6]

12月8日 - 島根県奥出雲町の町職員が官製談合防止法違反で逮捕された。町職員は、2016年6月に行われた町役場の仁多庁舎で使う机などの調達にかかる指名競争入札の予定価格を漏洩した疑いがある[7]

2017年


2月14日 - 埼玉県蓮田市の市職員が公契約関係競売入札妨害の疑いで逮捕された。2016年7月から2017年1月にかけ、市発注の土木工事の指名競争入札3件で、同職員は業者2社が提出した見積書の金額を予定価格に設定するなどして、近接する金額で落札させた疑いがある[8]

6月16日 - 沖縄県渡名喜村長の上原昇が官製談合防止法違反と公契約関係競売入札妨害の疑いで逮捕された。2016年9月下旬、上原は、村が発注した多目的施設の電気工事の指名競争入札に関する情報を電気工事会社代表に漏らしたとされる[9][10]

2018年


7月9日 - 福岡県鞍手町長の徳島真次が官製談合防止法違反などの疑いで逮捕された。2015年7月、徳島は下水道事業の設計業務を巡る2つの指名競争入札で、最低制限価格などを元町議の福本博文と建設コンサルタント会社役員に漏らし、福本の会社と建設コンサルタント会社に同価格に近い金額で落札させたとされる[11]

10月22日 - 東京都小平市公立昭和病院を運営する「昭和病院企業団」事務局施設担当課長が官製談合防止法違反などの疑いで逮捕された。同年7月中旬?8月上旬、同課長は同病院の空調設備の保守・整備業務の委託を巡る指名競争入札を巡り、東京都大田区の空調工事会社の役員に予定価格の暫定価格や指名業者の情報を漏らした疑いがある。8月17日に行われた入札には4社が参加し、同社が予定価格の99.84%の約7,600万円で落札した[12]


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