持ち時間
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持ち時間(もちじかん)とは、将棋囲碁などのボードゲームをする際にあらかじめ定められた対局に使用できる時間限度のこと。持ち時間を使い切った対局者は負けとなるのが通例。対局両当事者に同じ持ち時間を定めることで公平を保ち[注 1]、ゲームの途中放棄や故意の遅滞による相手への嫌がらせを排除する目的で設定される。
持ち時間設定
切れ負け

あらかじめ定めた持ち時間を過ぎると即時間切れとなる設定。将棋においては「指し切り」とも言う。最も単純な方式で、対局時間もあらかじめ定めた時間よりも延長しないこと、どのような対局時計でも対応していることから、アマチュアの大会、早指し、練習対局などで採用される。

シビアで緊張感がある一方、時間切れ間際では雑な手になりやすい、盤上の勝負と無関係な時間切れによる決着、終盤時間に追われた対局者による局面の乱雑化(駒や石の位置が正確に分からなくなる)、対局時計を叩きあう見苦しい状況などが起こりうるため、将棋や囲碁の公式棋戦ではほとんど採用されない。

オセロは最大でも60手(初期に置かれている石が4つ、盤は8×8=64マスのため)なので、公式大会でも切れ負けが採用される。
秒読み

囲碁や将棋で主に行われる設定。持ち時間を使い終わった後も一定時間内に着手し続ければ時間切れにはならない方式で、時計係が秒数をカウントすることから「秒読み」と呼ばれる[1]。すでに盤上でほぼ勝負がついている場合、次の手にほとんど時間をとる必要はないため、秒読みを採用することで「勝負に勝って試合で負ける」ような事態を避けることができる。

切れ負けの問題点を解消できる代わりに、採用するには時計係や秒読みに対応したデジタル式の対局時計が必要となる。加えて、対局終了の時間が定まらず、延々と続く可能性があるため、アマチュアの大会では進行の遅延を招くとして敬遠されがちである(決勝や準決勝など上位対局にのみ採用されるケースもある)。
フィッシャーモード

あらかじめ定められた持ち時間に加え、一手ごとに決められた時間が加算されていく設定。加算時間より早く次の手を着手すると、残りの加算時間分持ち時間が増える点で秒読みと異なる。考案者であるボビー・フィッシャーから「フィッシャーモード (Fischer mode) 」と呼ばれ、「フィッシャールール」「フィッシャー方式」なとども呼ばれる。

秒読みと同様、切れ負け方式の問題点を解消した方式だが、対応したチェスクロックを必要とする。また、設定によっては持ち時間が増え続けるという事態も起こりうるが、チェスは将棋などに比べると一局が短いので、あまり弊害がない。また、公式な競技会で採用されるため、チェスクロックにはフィッシャーモードへの切り替えができる物もある。

チェスでは世界選手権からアマチュア大会まで広く採用されており、加算される時間は大会の規模などで調整されている。

将棋ではABEMAトーナメント(2018年スタート)や新銀河戦(2022年)、囲碁では新竜星戦(2021年スタート)で採用されており、ABEMAトーナメントでは対応した戦型も確立されている[2]
NHK杯方式

通常の秒読みに加え、考慮時間として一定時間を一定回数使うことが出来る方式[1]。将棋や囲碁のNHK杯で使われているため「NHK杯方式」と呼ばれる。秒読みの利点に加え、長考したい局面だけに時間を使うことができるため、時間が決まっているテレビ棋戦に向いている[1]。考慮時間の配分も戦略に組み込めるのが特徴である[1]。一方で考慮時間をカウントするため、対応した対局時計が必要となる。NHK杯では記録係が残り回数を書いたカードを提示している。

プロ棋戦では対局者自身が使用を宣言する必要はなく、着手がないまま考慮時間に入った時点で記録係がその旨を告げる。

将棋ではNHK杯テレビ将棋トーナメントの「持ち時間10分、使い切ると1手30秒未満。秒読みに入ってから1分単位で合計10回の考慮時間」というルールが早指し棋戦で多く使われている。

囲碁ではNHK杯テレビ囲碁トーナメントの「初手から1手30秒の秒読み。1分単位で任意の10分間の考慮時間」というルールが早碁棋戦で多く使われている。
カナダ式秒読み

通常の秒読みとは異なり、持ち時間を使い終わった後は、所定の時間内に所定の手数を着手する必要があり、時間内に着手が終わらないと切れ負けになる方式。切れ負けと秒読みの問題を緩和した設定である。

北米で開かれた囲碁のアマチュア棋戦のために考案された設定でアメリカ囲碁協会も採用している[3]。日本でもアマチュア棋戦に採用されるようになり、対応した対局時計も登場している[4]
将棋
消費時間の計測
1分未満切り捨ての計時
プロ
将棋の対局では多くの場合、記録係によりストップウォッチで計時され、実際に消費した時間から1分未満の部分を切り捨てたものが消費時間として記録される[5]。持ち時間の最後の1分は使い切らずに残して指す必要があり、残り1分になってからは1手1分未満で指し続ける「1分将棋」となる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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