拒否
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拒否権(きょひけん、: veto)とは、ある事柄について拒み断る権利を言う。この意味での用例としては供述拒否権がある。政治の世界で拒否権と言う場合にはさらに意味が限定され、政策決定の際に、決議された法律・提案された決議・締結された条約その他を一方的に拒否できる特権を意味することが多い。

下記の国連安全保障理事会の拒否権の例のように、権利が行使されると案件が停止するため、案件がその所持者の意に直接対立しないように作られたり、対立を回避するために曖昧にされたりすることがあり、拒否権はそれを行使しなくても影響力を発揮する。
目次

1 言葉

2 国際連合安全保障理事会における拒否権

2.1 常任理事国の拒否権発動回数


3 古代ローマの拒否権

4 近世ポーランドの自由拒否権

5 近代フランスの拒否権

6 アメリカの大統領および州知事の拒否権

7 日本の政治

7.1 国政

7.2 地方自治


8 株式会社と拒否権

9 出典・補注

10 参考文献

11 関連項目

12 外部リンク

言葉

英語のvetoは、共和政ローマ時代に護民官が保持していた権限 (ラテン語: veto) に由来する。

また、後述の国連安保理や拒否権付き株式などのように、条文上は「拒否権」の語が現れないことも多い。極端な例として、全会一致が必須要件である場合には、「全員が拒否権を持つ」と言っても間違いではない(#近世ポーランドの自由拒否権も全会一致に伴う拒否権である)。
国際連合安全保障理事会における拒否権

国際連合安全保障理事会では、実質事項について決議が有効となるには、理事国15か国のうち、常任国全てを含む9理事国(非常任国最低4か国)の賛成を要する[1]。但し、第6章(紛争の平和的解決)及び第52条3(地域的取極又は地域的機関による地方的紛争の平和的解決)に基く決定については、紛争当事国は、投票を棄権しなければならない。大国一致の原則、つまり大国の反対により理事会決定の実効性が失われることを防ぐことを趣旨とするものであるが、逆に常任理事国のうち1国でも当該決議案に反対すれば他の全理事国が賛成しても否決される。これが国連安全保障理事会での拒否権である(採決に当たって反対票を投じる事、即ち決議受け容れ拒否)。安保理拒否権は、国連発足以来一貫して常任理事国であるアメリカ合衆国イギリスフランスロシア(1991年にソ連の代表権をロシアが継承)、中華人民共和国(1971年に中華民国から中国代表権を交代した)の5つの連合国共同宣言署名国のみに与えられている。

冷戦期にはアメリカ・ソ連がたびたび拒否権を行使し、国際政治の停滞と冷戦長期化の一因となったとの批判も根強い[2]。冷戦終結後は、アメリカ合衆国によるパレスチナ問題関連決議でのイスラエル擁護のための行使が目立った。また、スエズ危機ではイギリス、フランスの拒否権行使が問題となって平和のための結集決議が行われた。これゆえ、大国利己主義(同盟国擁護のためのものを含む)を通すためだけの規定との批判もある。

中華人民共和国は米ソ英仏に比べて拒否権の行使に慎重(中華民国もモンゴル人民共和国の国連加盟に対して1回だけ行った)で国連加盟当初の国際連合事務総長選挙をめぐる紛糾で拒否権を連発(特にクルト・ヴァルトハイムに対するもの)したことはあったものの[3][4][5][6]、通常の決議では2007年時点で5回のみだったが[7]、2007年からはロシアと中華人民共和国が連携してミャンマーシリアジンバブエベネズエラなどへの非難決議で拒否権を度々行使したことで新たな対立(新冷戦米中冷戦)が懸念されるようになった[8]
常任理事国の拒否権発動回数

2008年7月現在の国立国会図書館資料[9]に加筆した。

常任理事国発動回数備考
 ソビエト連邦 ロシアソ連120回+ロシア7回=計 127回106回までが1965年以前の発動
アメリカ合衆国83回すべてが1966年以後の発動
イギリス32回
フランス18回
 中華民国 中国中華民国1回+中国9回=計 10回

古代ローマの拒否権


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