投資信託
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この項目では、広義の投資信託一般について説明しています。投資信託及び投資法人に関する法律において定義される投資信託については「投資信託 (法律)」をご覧ください。

投資信託(とうししんたく)は、多数の投資家から販売会社を通じて拠出された資金を、運用会社に属する資産運用の専門家(ファンドマネージャー、ポートフォリオマネージャー)が、株式債券金融派生商品などの金融資産、あるいは不動産などに投資するよう運用を指図し、運用成果を投資家に還元する金融商品[1]。運用による利益・損失は投資家に帰属する。投資信託は第二項有価証券とは流動性のあることで異なる第一項有価証券である[注釈 1]
投資信託の商品性

投資信託は、株式債券REITなどの有価証券に投資を行う。日本で飛ばしが流行った時代に行われたような元本保証はない。銀行などの普通預金定期預金よりも良い投資益が期待されるが、これは相当するリスクを取ったことに対するリスク・プレミアムを受取っていると解釈できる。特にペイオフが解禁され、低金利ゼロ金利政策)による預金での利息収入がほぼ見込めない現状では、資産運用のための一手段として注目されている。

どの程度のリスクを取ってどの程度のリターンが得られるかは、投資信託の投資対象によって千差万別である。たとえば、株式は債券よりリスクが大きく、リターンも大きいとされる。また、国内を投資対象としているものよりも、海外を投資対象としているもののほうが為替レートの影響も受けるためリスクやリターンが大きいとされる[注釈 2]

いつでも購入・解約できる追加型投資信託などでは、保有する資産の評価額の変動に対応して、基準価額[注釈 3]が計算されている。運用の利益は、一定期間ごとに払出される分配金の他、基準価額の値上がり益があれば、解約・売却時に受取ることができる。

信託財産の運用により大幅な収益が上がり基準価額が上昇すると、口数単位で購入する場合に購入単価が上昇し購入しづらくなるため、基準価額を下げるために受益権の再分割をすることがある[注釈 4]。1999年-2000年のITバブルの頃に流行した。そこで振替制度が必要になった。すべての投資信託ファンドの受益権は、2007年1月4日より証券保管振替制度[注釈 5]に移行された(有価証券のペーパーレス化)。完全電子化のため、受益証券は発行されていない。

従来は、ある証券会社や銀行にある口座では、その会社系列のファンドしか購入できなかったが、近年の自由化と競争のため、他社のファンドも購入出来るようになっている[2]。たとえば預金供託金庫が、比較的早くから中立的だった。

受益者がファンドを購入すると、販売した金融機関は購入手数料(フロントロード、front load)を得る[注釈 6]。購入者がそのファンドを保有している間も、その投資信託を販売した金融機関は、信託報酬の一部を受託者から間接的に受け取ることができる。受益者がファンドの解約を行うときに、解約部分から信託財産留保額を徴収するものもある。

信託報酬は、一定率(通常年間0.1?3%程度)がファンドの純資産から日々差し引かれている。証券会社以外にも、銀行各社がこぞって投資信託の販売に力を入れるのは、購入手数料と信託報酬間接取得分が、非常に高額なためであると言われる[3]日本の投資信託では、購入額の3%前後が多数だが、アメリカ合衆国のミューチュアルファンドでは、販売手数料を一切徴収しないノーロードファンドが一般的である。この原資も普通、ファンドの純資産である。
利点・欠点

一般に、投資信託は個別株式などに比べ個人投資家にとって左段以下5点の利点があるといわれる。

危険分散(
分散投資

投資のプロによる運用[注釈 7]

小額投資が可能[注釈 8]

スケールメリット」あるいは「マス・メリット」

国境を越えた投資の容易さ[注釈 9]

損害回避のため投信設定のできない普通の投資家にとっては、右段以下5つの欠点があるといわれる。

タイミングをはかり辛い[注釈 10]

各種費用[注釈 11]

必ずしも高収益を期待できない[注釈 12]

危険分散の対価[注釈 13]

信託されたプロの資金運用故のジレンマ[注釈 14]

募集方法

昔は契約型とクローズドが主であったが、ユーロクリアとそのカストディアンが出てからは会社型およびオープンが主流。
事業体の形態
資金や投資先商品を保有するための特別目的事業体(SPV)の形態により、契約型と会社型に分類される。前者は信託を用いたものであり、後者は株式会社類似の法人を用いたものである。
契約型投資信託
日本の投資信託及び投資法人に関する法律に基づく投資信託英国等のユニット・トラストなど。
会社型投資信託
日本の投資法人や英国のインベストメント・トラスト、米国のミューチュアル・ファンドREITなど。
応募・償還の機会による分類

オープンファンド
買い付け停止の措置がなされた時以外は、基本的にいつでも買い付け自由。また、いつでも解約・売却も可能。追加型投資信託とも言う。基本的に、購入時に代金とは別に買付手数料を支払う必要がある。
クローズドファンド
買い付け期間が定められており、その期間が過ぎれば追加買い付けは一切出来ない。ファンドによっては解約・売却が一定期間制限されるものもある。単位型とも言う。買付手数料は購入代金に含まれているものが殆ど。
オープンエンド型
投資家はいつでも自由に償還を求めることができる。投資家は売却だけでなく償還によって換価を行うことができる。償還により払い戻される金額は、一般に、一口当たり純資産額(基準価額と呼ばれる)に償還口数を乗じた金額となる。米国のミューチュアル・ファンドや英国等のユニット・トラストなど。
クローズドエンド型
投資家は自由に償還を求めることができない。投資家は、上場されている場合市場で売却して換価を行うことになる。売却価額と純資産額は必ずしも一致しない。英国のインベストメント・トラスト 、REIT(不動産投資信託: Real Estate Investment Trust)などはこの形態である。
投信法上の分類

投資信託:日本法上の契約型投資信託

委託者指図型投資信託:委託者の指図により資産運用が行われるもの。「委託者」、「受託者」、「受益者」の三者で構成される。信託財産の運用は、委託者である投資信託会社が、受託者である信託銀行に株式売買等の運用の指図を行う。

証券投資信託:主として第一項有価証券への投資がなされるもの。投資信託財産の総額2分の1を超える額を、有価証券に対する投資として運用することを目的とする委託者指図型投資信託。


委託者非指図型投資信託:委託者の指図によらずに受託者(又はその委託する第三者)によって資産運用が行われるもの。「委託者兼受益者」と「受託者」の二者で構成される。あらかじめ定められた1つの信託約款にもとづいて受託者である信託銀行が運用し、委託者である個々の投資家は運用の指図を行うことはできない。


外国投資信託:外国法上の契約型投資信託

投資法人:日本法上の会社型投資信託

外国投資法人:外国法上の会社型投資信託

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運用指標


アクティブファンド

インデックスファンド(パッシブファンド)- 上場投資信託

投資対象


公社債投資信託

マネー・リザーブ・ファンド (MRF)

マネー・マネージメント・ファンド (MMF)

長期公社債投信(狭義の公社債投信)

短期公社債投信

中期国債ファンド

外国債ファンド

ハイイールド債



株式投資信託

国内/国際株式型

バランス型

転換社債

インデックス型(業種別もあり)

派生商品

限定追加型

ファンド・オブ・ファンズ



ヘッジファンド型(マーケット・ニュートラルなどヘッジファンドの手法を利用して運用される投資信託)

ブル型(基準価格の値動きが指数の値動きの2倍程度大きく動くよう運用される投資信託。レバレッジ型とも。)

ベア型(基準価格の値動きが指数の値動きと反対に動くよう運用される投資信託。インバース型とも。)

コモディティ型(世界の商品価格に連動して動くよう運用される投資信託)

REIT(不動産投資信託)

ご当地ファンド

投資信託にかかるコスト

投資信託は、運用を外部に委託する仕組みであるため、購入時、運用期間中、解約・買取請求時に所定の手数料(コスト)がかかる。ノーロード普及まで、料金システムは顧客との公平性をめぐり何十年も議論された[9]。主な手数料は下の通りである。
販売手数料
投資家が投資信託を購入する時に販売会社が徴収するもの。同じ投資信託であっても、購入金額や取り扱い金融機関により手数料額が異なる場合がある。かつては搾取のため「フロントロード制」が横行した。またこれを徴収しない販売会社もあり、そのような投資信託はノーロードファンドと呼ばれている。「販売」ではない分配金の自動再投資の場合は無手数料で購入できる場合がほとんどである。また、販売手数料が必要な投資信託であっても、後日手数料をキャッシュバックすることで実質的な手数料の割引や無料化を行っている販売会社もある(バックロードやエグジットロード)。同じ販売会社でも、窓口購入とインターネット購入では手数料率が異なるところもある。
信託報酬
投資信託の運用期間中、運用会社と販売会社が徴収するもの。年間の徴収率(0.1%?2%程度)があらかじめ定めてあり、信託財産の純資産総額から毎日差し引く形で徴収される。販売手数料と違い、所有額や販売会社による差異は生じない。基本的に、投資対象が債券より株式、日本よりも海外(特に新興国)に投資するもの、投資対象を長期に渡って保有するパッシブ型・インデックス型より投資先を頻繁に変えるアクティブ型の方が、信託報酬が高くなる傾向がある。基準価額は信託報酬を差し引いた後の価額で表示されるため、受益者が意識する事は少ない。いわゆるファンドオブファンズ形式の場合は、マザーファンドにおいても信託報酬が徴収されていると、ベビーファンドで信託報酬が「〇〇%程度」とはっきり決まらないことがある。
信託財産留保額
投資信託の売却・解約時に徴収される費用。信託財産留保額がかからないものも多く存在する。信託財産留保額は信託財産の中に残り投資信託を保有している受益者に還元されるため、販売会社や運用会社に支払う手数料ではない。これは、解約に伴い信託財産の一部である株式や債権などの原資産を売却するときの費用を信託財産から支払うことになるので、他の受益者に対する迷惑料として説明される[10]
解約手数料
ほとんどの投資信託では、解約時に手数料を徴収されることはない。ごく一部(公社債投資信託など)の投資信託では手数料が発生する場合がある。
税金
投資信託そのもののコストではないが、解約時の基準価額が個別元本を超えて利益が出ている場合は、利益に対して所得税が課せられる。ほとんどの場合、税金は販売会社が計算して解約時の受取額から差し引かれる。取引時に源泉徴収を行わないようにしていると、確定申告などで所得税額を計算し納付しなければならない。
分配金

投資信託の分配金とは、投資信託の決算時に信託財産の一部から受益者に還元されるものである。信託財産の還元なので、定期預金の利子や株式の配当金とは性質が異なり、分配金が出るとその金額だけ基準価額が下がる。基準価額が個別元本を上回る部分の分配金は普通分配金となり課税扱い、基準価額が個別元本を下回る場合は特別分配金(元本払戻金、元本の一部払戻しに相当する部分)として非課税扱いになる。なお、自動再投資を選択しても普通分配金は課税され、課税後の金額が再投資される。

一般に多くの日本の個人投資家は(元本保証と)分配金にこだわり、投資信託を販売する側も分配金の多寡や予定・頻度を強調するが、特に「特別分配金(元本払戻金)」は自分で拠出した投資資産から払い戻す「タコ足配当」に他ならず、その投資資産も投資信託購入時の販売手数料と信託報酬が差し引かれた後の残金であり、拠出額から既に目減りしていることには関心を払わない傾向がある。このような分配金を再投資しても、普通分配金なら分配時点で課税され、例えて言えば銀行のATMで出金した現金をそのまま再預金するようなもので、時間外引き出しの手数料が徴収されることが普通分配金に課税されることに相当し、その分複利効果が薄れるので実質的には損をすることになる。一般に、定期的な分配金による生活費の安定した確保などが目的でなく、長期的な資産額の増大を目的とするならばむしろ分配金などなしでひたすら基準価格の上昇に注目するなど、投資の目的に応じて分配金と基準価格の値上がりを総合して評価するべきであると言われる[11][12]
インベストメント・トラスト

投資信託はイギリス発祥の国際金融手段とされる[13]。1868年、海外植民地投信(Foreign & Colonial Investment Trust)が設立された。同社は確定利付証券を発行して、その資金を海外・植民地証券に投資した。会社といっても勅許会社ではなく、信託約款による社団であり、ユニット・トラストに近い形態であった。特徴としては中流階級をターゲットとしていたことにある[13]。その後ロバート・フレミング(Robert Fleming & Co., now JP Morgan Chase)など複数の投資信託が設立された。スエズ運河買収後の1876年、イギリス投信は利払不履行となった。1879年、投信は1862年会社法(Companies Act 1862)に反するという判決を下された。以降1930年代までイギリス投信はユニット・トラストを禁止されて、全てインベストメント・トラスト(Investment trust)になった。インベストメント・トラストは会社型であり、普通株だけでなく社債・優先株も発行した。インベストメント・トラストは専ら海外証券を買ったので、1890年ベアリング恐慌の直撃を受けた。1907年恐慌も同様であった。


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