投手
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野球のポジション図

投手(とうしゅ)とは、野球ソフトボールにおいて打者ボールを投げる役割選手英語からピッチャー(pitcher)とも呼ぶ。

野球における守備番号は1。また、英略字はP(Pitcherから)。クリケットの投手はボウラー(bowler)と呼ぶ。

投球の速度(球速)を表示する一般的な単位として、メジャーリーグではマイル毎時(mph)、日本プロ野球ではキロメートル毎時(km/h)が使われる。これはアメリカ合衆国イギリスなどの一部英語圏ではヤード・ポンド法が主流なのに対し、世界的には国際単位系であるメートル法が主流であるため。
投手の役割
投球投球動作については投球を参照

投手の主な役割は、投球によって失点を最小限に抑え、チームの勝利に貢献することであり、野球は投手で7-8割が決まるともいわれている[1]。特に第1イニングから投げる先発投手の場合は「試合を作る」と表現され、6イニング以上を3失点以内に抑えることをクオリティ・スタートと呼び好先発投手の目安の一つとなっている。また、リリーフ投手は引き継いだ試合の状況を守りきること(先発投手が作った勝てる試合を逆転させないこと)が要求される。

投手の役割は、単にボールを投げるだけではなく「打者を出塁させないこと、走者を生還させないこと」であるとも言える。投手は打者から三振を奪ったりゴロフライを打たせるなどしてアウトを取る。そのために捕手とサインを通じて連携して個々の打者が苦手とするコースや球種を投げるなどする。『ドジャースの戦法』の著者アル・キャンパニスは投球で最も大事なのは制球だとしている[2]塁上の走者を牽制する投手
守備
投球前

塁上に走者がいる場合は、簡単に盗塁されないために状況に応じて目線による牽制あるいは牽制球による牽制を行う必要がある。
投球後

投手は投球を終えた時点で「五人目の内野手」として他の野手同様に守備をすることが求められ[3]、投球時点で後の守備に備えて体のバランスを取れているか否かという点で守備の得手不得手が明確になる[4]

一般的に投手へのゴロやフライは処理しやすいため、それほど高い守備力は求められない。投手の疲労及び怪我を回避する目的や打球処理に慣れていると思われる選手に任せた方が確実であることから、バントによる小飛球を除けば投手の守備範囲へのフライであっても捕手や一塁手、三塁手などが処理することが多い。この時、投手は飛球があがっている位置を指さし、野手に知らせる。しかし、「ピッチャー返し」と呼ばれる強いライナーが飛んでくることもある。この場合は、投球により崩れた体勢を整える前に高速の打球が飛んでくるためうまく反応することは難しく、ピッチャー返しが体に直撃すると負傷につながりやすい。中には顔面に受けて大怪我を負った例もある(マイク・ムッシーナ石井一久など)。

打球処理以外で重要なプレーとしてはベースカバーがある。一塁手がゴロを追ってベースを離れた場合には、投手は素早く一塁をカバーし、送球を受けて打者走者アウトにしなければならない。他にも、走者三塁の場面で暴投捕逸が出た場合は本塁へのベースカバー、三塁手がバント処理などで空けているベースを走者が狙った際には三塁へのベースカバーを行う必要がある。

また、ヒットなどで外野から本塁(三塁)への送球が考えられる時、外野と本塁(三塁)を結ぶ線上のファウルゾーンに入り、送球が逸れた場合に備えることも忘れてはいけない(バックアップ)。さらに状況によっては捕手や外野からの送球をカットし、適切な塁に送ることでアウトにするプレーも求められる。塁間に飛び出している走者を挟殺するランダウンプレイには投手も参加しなければならない。

このように投手に求められる守備は細かいものが多いが、よい守備ができれば結果として自分自身の投球を楽にするので、その役割は軽視できない。
打撃

投手は投球が役割の中心となるため、打撃に関しては期待されないことが多い。リーグによっては打撃を務める指名打者という打撃専門の選手を置くルールを採用することもあり、そのルールの下では投手が打撃を行わない場合がほとんどである。指名打者制がない場合も投手は作戦上安打を打てないのを前提として、走者がいる時にはバントを試みることが多い。また「2死」や「大差でリード」、「凡退でチャンスが潰れる」場面で打席が回った際にわざと本塁から最も離れて立って三振し、投球に負担を掛けない(走者になると接触プレー等での怪我の可能性がある)、ランナーがいる場合に安易に打っての併殺を防ぐ、自軍の攻撃を上位打線から始めさせ、次打者以降に安打を期待という先を見越した作戦を取る事もよくある。ただしこれには「わざと三振するのはスポーツマンシップ上問題」とする意見もある。

このように様々な理由で、特にプロ野球の投手に打撃力は求められないが、打撃に優れる投手も存在する。メジャーリーグベースボールナショナルリーグでは、最も打撃に優れた投手にシルバースラッガー賞が与えられる。マイク・ハンプトンは2001年には7本塁打を放つなどし、同賞を投手として最多の5度受賞している。また川上憲伸は2009年代打として2試合に出場したり、中日時代は通算8本塁打を放っている。

少年野球などでは、運動能力に優れている選手が、投手と打者の両方の実力で他の選手を上回ることがある。高校野球でも、投手が上位打線に組み込まれていることが多い(いわゆる「エースで4番」)。そのため、ベーブ・ルース川上哲治王貞治を筆頭に投手としてプロ入りした後、打者に転向する選手は比較的多い。対照的に、野手がプロ入り後に投手に転向した例は野口正明ティム・ウェイクフィールドなど極少数である。その理由は、投手の技術は野手の技術と大きく異なり、習得に時間を要するからである。

野手は右投左打の選手も多いが、大半の投手は利き腕と同じ側の打席に入る。理由は右投左打(左投右打)の場合、打席に立った時に投球腕である右側(左側)を相手投手に向けることになってしまい、死球を受けるなどして負傷すると投球に支障をきたすからである。ただし,打撃時に詰まった打球を打つと押し手側のほうがよりしびれ,投球に支障をきたしてしまう場合もあるのであえて反対側の打席に立つ投手も存在する上,幼少時より右投左打(左投右打)で打っていた投手は矯正が難しいため右投左打(左投右打)の投手も少数ながらいる。また利き腕と反対側の打席に入る場合、アームガードで腕を保護する投手は少なくない。

進塁した投手がウインドブレーカーを着ることがある。これは肩を冷やさない、擦り傷を防ぐ意味があり、コーチ監督が着ているが、選手としては投手のみ許されている。
投手の分類.mw-parser-output .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .trow>.thumbcaption{text-align:center}}左投手
シーザー・ラモス右投手
中田廉(動画)前田健太の投球フォーム
利き腕による分類

投手は利き腕でボールを投げることが多く、右投げと左投げ(サウスポー)の区別がある。極く稀に「両投げ」の投手(スイッチピッチャー) も存在する(逆にスイッチヒッターつまり両打ち打者はそれほど珍しくはない)。

カーブ」「シュート」「スライダー」などの左右に変化する変化球は、投手の利き腕の左右により逆方向に変化する。即ち、右投げ投手のスライダーが右打者視点で外角に逃げていくのに対し、左投げ投手のスライダーは右打者視点では内角に食い込む変化となる。

右腕投手・左腕投手の状態的差違はセットポジション(投球前の一旦静止する姿勢)で最も如実に現れる。右投手が三塁方向を向いて静止するのに対し、左投手は一塁方向を向いて静止する。走者が一塁にいる場合、左投手は投球の直前まで走者の動きを捉えることができるため有利と言われる。


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