技術科教育学
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現在の日本の学校教育における教科「技術・家庭」については「技術・家庭」をご覧ください。

技術科教育(ぎじゅつかきょういく)は、技術に関連する教育活動・内容の総称。本項目では、主として中等教育までの技術教育、すなわち日本でいうところの教科「技術・家庭」の中の「技術科」に関連のある理論・実践・歴史などについて取り扱う。

世界人権宣言においては、教育を受ける権利のひとつとして、「技術教育及び職業教育は、一般に利用できるものでなければならない(第26条1)」と定められている。
目次

1 日本の技術教育

1.1 歴史

1.1.1 国民学校実業系科目の、「職業科」への統合

1.1.2 「技術・家庭」の誕生

1.1.3 学習内容の変遷


1.2 課題

1.2.1 理論および実践

1.2.2 授業時間の大幅な削減

1.2.3 教員養成に関する課題

1.2.4 「技術」免許所有者の不足



2 各国の技術教育

2.1 アメリカ

2.2 イギリス

2.3 フランス

2.4 スウェーデン

2.5 ドイツ

2.5.1 初等教育

2.5.2 中等教育


2.6 ロシア

2.7 台湾


3 脚注

3.1 注釈

3.2 出典


4 参考文献

5 関連項目

6 外部リンク

日本の技術教育
歴史
国民学校実業系科目の、「職業科」への統合

第二次世界大戦後、新制中学校発足時の技術教育に関する教科は「職業」科にあり、国民学校高等科にあった実業科の科目を引き継いだものであった。その後、1951年版の学習指導要領にて、「職業・家庭」科は、「実生活に役立つ仕事」として、「栽培・飼育・漁・食品加工」「手技工作・機械操作・製図」「文書事務・経営記帳・計算」「調理・衛生保育」の4分野を指導する科目としてまとめられたものとなった[1]。すなわち、このときにはすでに、技術教育は独立した教科で指導されなくなり、根本的に違う「工学」「農学」と「家政学」が同居することとなった。
「技術・家庭」の誕生

職業科で行われた学校における戦後の技術教育は、その後、1958年告示の学習指導要領にて「技術・家庭」に再編された。この「技術・家庭」は、直前まで「技術」科という名前であったが、女子については「家庭科」的な内容を主とするものだった。そして、技術分野と家庭分野は、「生活」というキーワードで無理やり結び付けられた[2]
学習内容の変遷
男女別学から共修へ
1958年には、前述のとおり男子は技術分野、女子は家庭分野を学ぶものであったが、その後、1977年告示の学習指導要領にて、比率は違うものの男子・女子ともに技術・家庭両分野を学ぶこととなり(相互乗り入れ)、1989年告示の学習指導要領にて、完全に男女同じ物を学ぶこととなった。これにより、女子が技術分野を学ぶことになった反面、技術分野としての時間数は、実質的に減ることとなった。
「情報」分野の新設
1989年告示の学習指導要領で、「情報基礎」の領域が新設された。このときは、選択科目であり、コンピュータの構造・プログラミング(
BASIC)を指導するものであったが、1998年告示の学習指導要領では「情報とコンピュータ」という形で、「コンピュータの利用」「情報通信ネットワークの利用」が必修となった。また、選択項目に「マルチメディアの利用」「プログラムと計測・制御」が加わった。この段階での「計測・制御」では「インターフェイスに深入りしないこと」となっていたが、2008年告示、2012年より完全施行された学習指導要領では、「情報に関する技術」として、「(マルチメディアによる)ディジタル作品の設計・製作」「情報通信ネットワークと情報モラル」「プログラムによる計測・制御」がすべて必修となり、さらにインターフェイスについても触れられることになった[3][4]
課題
理論および実践

指導の背景となる理論は、機械工学(木材加工・金属加工・機械工学)、電気工学製図(機械製図・電気製図)などの工学分野に、生物育成の技術に関する農学栽培畜産学など)を加えたものとなる。

技術科においては、危険を伴う作業もあり、作業安全を確保することが強く求められる。「中学校技術・家庭科における工作機械等の使用による事故防止について」(昭43年文部省通知)に記載されている、生徒に応じた「適切な指導」、工作機械使用の際の教員立会い、危険な作業を生徒にさせないこと、工作機械に対する留意事項を守ることはもちろんのこと、取扱説明を指導者・生徒ともに徹底させること、使用心得(安全規定)の徹底、および実習室の安全点検を適切に行うことが大切である。また、もし、それでも事故が起こった場合には、ただちに救護措置をとるとともに、学校として適切な処置対応が求められる。
授業時間の大幅な削減

ユネスコは、1974年に「技術および労働の世界への手ほどきは、これがなければ、普通教育が不完全になるような普通教育の本質的な構成要素になるべきである」という「技術・職業教育に関する改正勧告」[5]を出した。そして、15年後の1989年、「技術教育および職業教育に関する条約[6]」がユネスコ第25回総会において採択され、その第3条2項(a)において、「普通教育として、すべての子どもに対する技術および労働の世界への手ほどき……を提供しなければならない」と規定された[7]

しかし、日本の技術・家庭科の学習時間は年々減少している。技術分野に限って言うと、1958年公示の学習指導要領では男子のみ各学年105時間あったものが、1977年公示の学習指導要領で、男女ともに両分野を学び始めるという前提で「1・2年70時間、3年生105時間+選択35時間」となったため、技術分野を学ぶ時間が実質的に減少した[注 1]。すでにこのころには「ゆとりと充実」のもとに学習指導要領が組み立てられており[注 2]、技術科ができた当時の「科学教育の振興」という目的は変容してしまった[8]

さらに、1989年公示のいわゆるゆとり教育の指導要領では、選択科目が「2年生35時間、3年生70時間」に増えたものの、必修の時間数が「3年生が70時間?105時間」(技術科としては、その半分)となった。さらに、1998年公示のものでは「1・2年70時間、3年生35時間」(技術科としては、その半分)と必修の時間が大幅に減らされ、ほとんどが選択科目として「1年0?30時間、2年生50?85時間、3年生105?165時間」とされてしまった。

現行の2008年告示、2012年完全施行の学習指導要領では、その選択科目も実質上なくなり、技術・家庭として「1・2年70時間、3年生35時間」、すなわち技術科単体では「1・2年35時間、3年生17.5時間」しか時間が与えられていない。この中で4つの分野(材料と加工(木材・金属など)、エネルギー変換(機械・電気)、生物育成(栽培・飼育)、情報(制御・プログラム・情報発信))と前回告示の学習指導要領から大幅に増えた内容の授業を行う必要があり、「その矛盾は大き」く、「技術の真の学力を育てるのは難しい」という指摘[9]も出ている。
教員養成に関する課題

日本で中学校「技術」の教員免許を取得する際には、教育職員免許法施行規則第四条に基づき、次の内容を含む科目を規定単位数以上履修する必要がある[10]

木材加工(製図及び実習を含む。)

金属加工(製図及び実習を含む。)

機械(実習を含む。)

電気(実習を含む。)

栽培(実習を含む。)

情報とコンピュータ(実習を含む。)

このほか、第六条第四欄に規定されている「各教科の指導法」として、技術科の指導法(技術科教育法などと呼ばれる。)を履修する必要がある。

2014年4月現在、中学校「技術」の教員免許を取得できる大学は64大学であり、比較的多く存在している東京(7大学)、埼玉(3大学)、神奈川(5大学)、大阪・広島(それぞれ3大学[注 3])、まったくない秋田・富山以外は、1都道府県に1?2大学しかない[11]


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