戦闘技術
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戦闘技術(せんとうぎじゅつ、: Combat techniques)は、軍人戦闘において使用する軍事的な技術である。

ここでは主に現代戦における個人の戦技について述べる。
概要

戦闘技術は、作戦を遂行する上で兵士が用いる技術体系である。その目的は敵を殺傷・制圧する事であり、その主な内容は火器爆発物の効率的な運用の手法である。さらに広義には野外活動に必要な航法衛生などの技能を含む。

教育に際しては実践での有用性と、教導の簡易性が重視される。ほとんどの兵士には複雑な専門技能を多数習得するほどの時間的余裕が与えられておらず、また高度な専門技術はその技能のみを専門とする特殊部隊後方支援部隊との連携によって補うべき性質のものである。軍隊は戦闘技術以外の高度な専門技術者も多く必要とするが、兵士が戦闘技術者とそれ以外の専門技術者を兼ねる事は期待されない。

最も大きな比重が置かれるのは意志・自制心・冷静さ・判断力・知識・忍耐力などの資質を後天的に身に付ける技術である。言うまでもなく戦場は緊張状況であり、その重圧下でも任務を見失わず冷静かつ俊敏に行動するため、兵士は軍事心理学的な裏付けを伴う合理的な思考様式を構築する事が求められる。それらは戦闘技術の教導過程はもちろん、極度に規律正しい態度を強要される(いわゆる「軍隊的な」)日常生活によっても鍛え上げられる。
格闘術詳細は「近接格闘術」を参照

近接格闘術は、戦闘技術では味方との連携を前提とした白兵戦を行う技術である。火器が発達した現代においても近接戦闘の局面において重要性が認められている。

所持する武器としてはナイフ、または銃剣が着剣済みの小銃を想定し、打撃・圧迫・刺突、および刺突の亜種として切断を攻撃手段として想定する。顔面に集中した感覚器官中枢神経骨格の関節、内臓を持つ胴体などといった人体の急所を積極的に狙い、あるいは出血窒息によって機能不全を引き起こして敵を殺傷する事を基本とする。

武器を持たない徒手格闘では拳での突き技、手刀などの打ち技、足での蹴り技、敵への反撃を含めた受け技、喉を圧迫する絞め技、敵を地面に倒す投げ技などから構成される。
射撃術

射撃術は射撃、特に個人が拳銃自動小銃軽機関銃などの小火器を用いて行う射撃を効率的に統制する技術である。武器や戦場ごとに異なる気象地形・距離・弾丸の初速・旋動などを考慮して照準を統制する技術が含まれる。

基礎として射撃時の姿勢から学ぶ。これは立ったまま打つ「立射」と、狙いを定めるために腰を落とす「伏射」に大別され、細分化すれば直立して肩で銃を支える「肩射ち」、小銃を脇で固定する「抱え射ち」、銃身後部を腰に当てて支える「腰射ち」、うつ伏せでの「伏射ち」、膝立ちでの「膝射ち」、しゃがんだ状態での「しゃがみ射ち」、腰を落として上から銃身を支える「屈み射ち」など。

原則として射撃時は深呼吸や筋肉の弛緩を妨げない楽な姿勢を取り、左腕で銃を支え、右手人差し指を引き金に当てる姿勢を取る。銃身は頬の高さになるよう持ち、構えている間は狙いを定める目と銃口との位置関係が変化しないように動く。可能であれば建築物や地形などに寄りかかって体を支える。
偽装

偽装はその場の地形などを利用して兵士の身を隠し、敵から発見されにくいように行動する技術である。生身の人間が敵の軍用による先制攻撃から身を守る上でほぼ唯一の対抗手段であり、兵士の生存性に大きく影響する。

偽装において隠蔽すべきものとして形状・反射光・色彩・陰影・移動が挙げられる。実例としては、立ち止まる時は物陰に隠れる事、物陰のない場所を移動する際はできるだけ匍匐して進む事、金属製装備や人間の皮膚など光沢のあるものには塗料や泥を塗ってツヤを消す事、音を立てる装備は取り外すかテープ類で固定する事、戦場の環境に合わせた色の迷彩服を着用する事、必要のない時には微動だにせず待ち続ける事、などが必要とされる。
野戦築城詳細は「野戦築城」を参照

野戦築城は戦場における土木工事の技術であり、もっぱら陣地を構築するために用いられる。地雷原の設置、偽装、射撃区域の割り振りなどに関するセオリーも含まれる。

大規模な敷設は工兵重機を投入して行うが、歩兵も基本的な作業には精通し、必要に応じて人手で行えるような小規模な敷設を行う。

典型的な野戦築城はスコップなどで穴を掘るか土嚢を積んだ土の壁(塹壕)である。塹壕は兵士が偽装に用いる障害物であり、射撃に際して反撃から身を守る盾としても機能する。少なくともしゃがんだ(最低でも匍匐した)状態で頭まで隠れるだけの深さ・高さが必要とされる。

火力支援に際しても火砲の設置に適した地形を選び出し、なければ地面を掘り返して造成し、その上で野戦築城により火砲陣地を構築する。
運動

戦闘技術としての運動は、戦闘において不利な地点から脱出し、または有利な地点に移動するために兵士が行動する事である。その正否は兵士の生存性や戦闘の主導権と大きく関わっている。

原則としては塹壕・建築物・壁・斜面などの障害物や偽装を活用して最も安全な通路を選択し、敵の射界に入らないように常に注意し、敵から見て側面や後方に位置するよう移動する。迅速である事も重要であり、敵前では精密射撃を避けるために3秒から5秒以内に実施しなければならない。

具体的な方法としては地面にうつ伏せになる匍匐、突然に高速で移動する早駆け、物音を立てず静かに歩く静寂歩行に大別される。
爆破

爆破は爆発物を用いて敵兵を殺傷し、敵施設を破壊する作戦行動である。大規模な爆破は工兵の任務であるが、火力支援によって代替される事が多く、実戦では歩兵が現地で小規模な爆破を実施する事が多い。戦闘技術としては手榴弾地雷の運用を主とする。

手榴弾は手で投げられる小型の爆弾であり、放物線を描くように投げ込む事で陣地などの遮蔽物に隠れている敵にも攻撃可能である。ブービートラップとして用いる事で兵士自身が発見していない敵に対する攻撃も可能とする。

地雷は道路上など地面に設置し、敵がその地域を通過する際に起爆する。防御戦闘において有用である。設置方法は地雷の種類によっても異なるが、基本的に深さ9cm程度の穴まで掘り進めた穴の底に地雷を置き、土を埋め直して偽装する。

建造物やドア、地形障害などを破壊する必要に迫られた場合、プラスチック爆薬などを用いて爆破を実施する事もある。
火力支援詳細は「火力支援」を参照

火力支援は火砲空爆による火力によって敵を制圧し、歩兵の任務を支援する作戦行動である。砲兵戦車および攻撃機に割り当てられる任務であるが、歩兵も迫撃砲を携帯・配備して火力支援を行う事ができる。


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