戦闘妖精・雪風
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『戦闘妖精・雪風』(せんとうようせい ゆきかぜ)は、神林長平によるSF小説。これを原作としてラジオドラマOVA漫画化もされた。

SFマガジン』誌上に1979年から1983年にかけて掲載された連作短編で、1984年に『戦闘妖精・雪風』の題名で文庫にまとめられた。

1992年より『SFマガジン』誌上で断続的に第2部となる続編が連載され、1999年にハードカバーの単行本『グッドラック―戦闘妖精・雪風』としてまとめられた。また『グッドラック』に合わせた改訂版として2002年『戦闘妖精・雪風〈改〉』(ハヤカワ文庫)が発表された。

第3部は『SFマガジン』2006年4月号から不定期に掲載され、2009年7月『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』として発売された。

第4部は『SFマガジン』2020年2月号より掲載が開始され、2022年4月に『アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風』として発売された。

短編「スーパー・フェニックス」(『戦闘妖精・雪風』に所収)が第15回(1984年)星雲賞、『戦闘妖精・雪風』は第16回(1985年)星雲賞、『グッドラック―戦闘妖精・雪風』は第31回(2000年)星雲賞を受賞した。

2013年4月16日、米ワーナー・ブラザースにより実写映画化権取得とのニュースが流れた[1]。主演はトム・クルーズ。プロデューサーはトム・ラサリー、アーウィン・ストフ。後者は日本のアニメ『カウボーイビバップ』の実写化権をキアヌ・リーブスとともに所有している。目次

1 ストーリー

2 登場人物

3 ジャム

4 登場兵器

4.1 フェアリィ空軍

4.2 日本海軍

4.3 ジャム(兵器)

4.4 その他


5 書誌情報

6 OVA版

6.1 キャスト

6.2 スタッフ

6.3 主題歌

6.4 各話リスト


7 漫画版

8 関連商品

9 脚注

9.1 注釈

9.2 出典


10 外部リンク

ストーリー

超空間通路から南極に出現した謎の異星体ジャムの侵攻を受けた人類は、その先鋒を撃退し、逆に超空間通路の向こう側に攻め込み、そこに存在した惑星フェアリィに橋頭堡となる基地を築いてジャムの侵攻を食い止めていた。設立初期には選び抜かれた精鋭によって構成されていたフェアリィ空軍 (FAF) だったが、長引く消耗戦にエリートの損失を嫌った各国は、やがて犯罪者や精神疾患者といった社会的不適合者のなかから才能を持つものに訓練を施し、FAFに送り込むようになる。

そのFAFの主要基地のひとつ「フェアリィ」に属する戦術戦闘航空団特殊戦第五飛行戦隊、通称「ブーメラン戦隊」は、社会不適合者のなかでも「他者に関心を持たない」という心理傾向がある人間ばかりを集め、高性能な戦術戦闘電子偵察機「スーパーシルフ」を擁する対ジャム戦における戦術電子偵察部隊であり、たとえ目前の味方を見捨ててでも敵の情報を持ち帰ることだけを要求される特殊部隊だった。

きわめて高度な中枢制御体を搭載し、完全自律制御による高度な戦術判断や戦闘機動を可能とするスーパーシルフ。その3番機 (B-503)、パーソナルネーム「雪風」のパイロット、深井零は、雪風をみずからの半身と偏愛し、雪風以外のあらゆるものを「関係ない」と切り捨てるまでに雪風がすべてと信じていた。一方、特殊戦の前線指揮官で零の唯一の友人でもあるジェイムズ・ブッカーは、ジャムの戦術やそれに対する雪風の振る舞いを疑問視し、「この戦いに、人間は必要なのか」との疑念を抱く。

激化していくジャムとの戦いのなか、零は雪風だけを信じフェアリィの空を舞い続ける。しかし、戦いは人類には不可知の存在であるジャムと、人類が生み出した戦闘機械集団との戦争の呈を見せていく。そのなかで零と雪風は、単なるパイロットと愛機という関係を超越した「複合生命体」と呼ぶべき存在へと変化していく。そしていよいよ、FAF基地へのジャムの総攻撃が始まる。

一方、地球の著名なジャーナリストで、零やブッカーとも親交のあるリン・ジャクスンは、ある人物からの手紙を受け取る。その内容は「ジャムの代理人として、人類に宣戦布告する」という衝撃的なものだった。
登場人物
深井零(ふかい れい)
FAF少尉。のちに中尉、大尉に昇進する
[注 1]。日本国出身。特殊戦3番機「雪風」パイロット。乗機である雪風、および友人のブッカー以外の何者も信頼せず心を閉ざしていたが、雪風やジャムとの関わりを通じて変化していく。主人公格のキャラクターながら謎が多く、排他的人格者になった理由や、最新版文庫本ではFAFに来た理由も明らかになっていない。初出時は「非効率な機械は嫌いだという理由で博物館のSLを爆破した」、改定前文庫本にまとめられた際は「仕事のストレスで職場に放火した」という扱い[注 2]。コミック版では窃盗団の運転手をした犯罪歴が描かれており、スピンオフ的短編小説では、学齢期に自分用のネットワークコンピュータを外部から利用されるのを嫌って、結果的に独自アーキテクチャのマシンを組み上げ、CPU処理時間の外部開放義務を忌避した罪[注 3]に問われたことが描写されている。
ジェイムズ・ブッカー
FAF少佐。特殊戦の戦隊指揮官。イギリス出身。零の唯一の友人。日本人である零以上の日本通で、特殊戦三番機への「雪風」の命名と漢字のペイントも彼の手によるもの。元ロイヤルマリーン所属のパイロットで電子工学のスペシャリストでもあり、人間とジャム、そして雪風をはじめとするFAFの戦闘機械群との関係に疑念を抱いている。ブーメラン製作が趣味。イギリス軍所属のころ、殺したくなるほど憎みながらも同棲していた女性がブッカーの仕業に見せかけて何者かに殺された際、軍法会議であえていっさい抗弁せず有罪となり、FAFに送られた。無神論者であり、その様は「哲学を崇拝している」とたとえられるが、ジャムの総攻撃のなかではたびたび神や信仰について語る。
リディア・クーリィ
FAF准将。アメリカ合衆国出身。FAF入隊はみずからの意思によるもの。肩書きは特殊戦副司令だが、事実上の司令官。改訂版以後、特殊戦を軍団レベルの地位と実力に押し上げた人物との描写が増えている。
エディス・フォス
FAF大尉。アメリカ合衆国出身。特殊戦所属の軍医[注 4]。みずからの研究テーマ「実戦下における『排他的傾向者』の精神構造」を追求するために、志願してフェアリィ星にやってきた。当初は特殊戦のあり方に理解が及ばなかったが、特殊戦やジャムとのかかわりを通じて変化し、ジャムに対するプロファイリングを担当するようになる。クーリィ准将とは遠縁にあたり、OVA版では「エディス」「叔母様」と呼びあう。
リチャード・バーガディシュ
FAF少尉。戦死したノーマン・ヒューズ少尉の後任として雪風のフライトオフィサに配属された。任務にしか興味のない零以上に冷淡な人物。
リン・ジャクスン
世界的ジャーナリスト。アメリカ合衆国出身。JAMの脅威を記した著書「ジ・インベーダー」で一躍有名になるが、多くの人はその内容をフィクションであるかのように受け止めている。現在もジャムの脅威を世界に訴え続けている。ブッカーや零とも関わりを持つ。
カール・グノー
FAF大佐。システム軍団所属。無人戦闘機「フリップナイト・システム」の開発者。撃墜されれば人的損害が発生し、しかも人間のために性能を落とさざるを得ない有人機を時代遅れと断じ、「この戦いには人間が必要」と主張するブッカーや、雪風のパイロットであり続けようとする零と対立する。
アンディ・ランダー
アメリカ出身のフリーコラムニスト。軍事評論家、ロビイスト、作家でもあり、右翼的な記事を書くことで知られる。FAFの体制や実態に疑問を持ってフェアリィ基地を取材に訪れる。
トマホーク(トム)・ジョン
FAF大尉。電子工学の専門家でネイティブアメリカン。本来の名前は部族独特の発音でしか呼ぶことができないため、英語の発音でもっとも近い「トマホーク」やトム・ジョンと呼ばれている。先天性の心臓病を克服するためにプルトニウムで駆動する人工心臓を移植されており、そのことで「自分は機械なのではないか」というコンプレックスを持っている。コミック版では心臓のほか、脚を機械化している描写がある。
ヒュー・オドンネル
FAF大尉。新型戦闘機ファーンIIのテストパイロットを務める。もともとはアメリカ軍の戦闘機パイロットであり、志願してFAFにやって来た。婚約者のエイヴァ・エメリー中尉を秘書のように伴って行動している。
天田守(あまだ まもる)
FAF少尉。除雪師団所属。地球で犯罪を繰り返してフェアリイに送られる。パイロットになれず有用な能力もなく将来を悲観し、酒に溺れている。最高位の武勲賞であるマース武勲章を身に覚えの無いまま受章することになり、仲間から孤立、疑心暗鬼に陥っていくなかでブッカーと出会う。OVA版には登場しない。
矢頭元(やがしら はじめ)
FAF少尉。死亡した13番機のパイロット、ジョージ・サミア大尉の後任としてTAB-15所属の第505飛行隊より特殊戦に引き抜かれてきた。第505飛行隊の中ではエースとして活躍していたが、対人コミュケーション能力に問題があり、本人も人知れず悩んでいた。OVA版には登場しない。
桂城彰(かつらぎ あきら)
FAF少尉。バーガディシュの後任として情報軍から送り込まれてきた。かつての零と同じ性格傾向を持っていたが、彼もまたジャムとの接触により大きく変わることになる。OVA版には登場しない。
アンセル・ロンバート
FAF大佐。イギリス出身。FAF情報軍の代表者であり、桂城彰少尉を特殊戦に派遣した人物。生まれたときから脳に微小な傷を持っており、その影響からか思考傾向が常人とかけ離れた方向に偏りがちであり、他人と同じことをするのを嫌う。情報戦の見地から、ジャムに対する独自の戦略を練ろうとしていたが、あるときを境にひとりで独自の行動を開始する。
ヒロシ・ヤザワ
前線基地であるTAB-14所属のFAF少佐。ジャムが生み出したコピー人間で、墜落した零とバーガディシュを捕らえ、雪風のセキュリティ解除コードを聞きだそうとする。小説版では、その後、ジャムと雪風との会見の場にてスーパーシルフのコピーに搭乗し、ふたたび零の前に現れる。
マーニィ
TAB-14所属の看護婦で、ヤザワと同じくジャムの作ったコピー人間。
ギャビン・メイル
FAF大尉。前線基地TAB-15所属の第505飛行隊隊長。ジャムの迎撃に出撃した際、乗機のエンジントラブルによって窮地に陥る。


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