この項目では、フレデリック・フォーサイスの小説と、その小説を基に作られたアメリカ映画について説明しています。日本の映画については「戦争の犬たち (1980年の映画)」をご覧ください。
戦争の犬たち
The Dogs of War
著者フレデリック・フォーサイス
訳者篠原慎
発行日1975年
発行元角川文庫
ジャンル戦争文学
国イギリス
言語英語
『戦争の犬たち』(せんそうのいぬたち、The Dogs of War)は、イギリスの作家フレデリック・フォーサイスの軍事・経済小説。1974年に出版された。 プラチナ鉱山の利権を狙ってアフリカの小国にクーデターをしかける資産家と傭兵たちの陰謀を描いている。 題材となったクーデターは、フォーサイスの項目で述べているように、彼が参画した赤道ギニア共和国に対する実際のクーデターに基づいているといわれている。作品中に出てくる将軍はビアフラ共和国のオジュク将軍がモデルであり、ジャーナリスト時代にビアフラ戦争の取材を行い『ビアフラ物語』を執筆したフォーサイスはビアフラに同情的であった。 タイトルの「戦争の犬たち」は原題の直訳であり、これはシェイクスピアの戯曲『ジュリアス・シーザー』の第三幕第二場に出てくる「戦争の犬を解き放て(let slip the dogs of war)
概要
内容はタイトルから想像される派手な戦争ものではなく、大部分は事前の綿密な情報収集・現地調査、武器弾薬や装備の入手、ペーパーカンパニーや輸送船の買収などの準備に費やされており、東西対立下のヨーロッパにおける闇兵器売買の実態、不正な経済活動の実例といったフォーサイスらしい薀蓄が多く示されている。
なお、シャノンの経歴としてコンゴ動乱における白人傭兵の活動もかなり詳しく書き込まれている。また、シャノンの部下の傭兵たちの出自、経歴はアフリカで戦う白人傭兵の典型例が使われており、後の作品の『ネゴシエーター』にも似たタイプの傭兵達が登場する。 一代で大企業マンソン鉱山会社(マンコン)を興した会長マンソン卿は、西アフリカの貧しい小国ザンガロの内陸部にある「水晶山」に高純度のプラチナ鉱脈があり、その埋蔵量が莫大な規模におよぶことを知った。プラチナは自動車用触媒としての将来需要を見込めるため、マンソン卿はその利権を密かに自分のものとすべく、現地調査報告書の内容を改竄して低品位の錫が発見されたことにして、プラチナの存在を伏せた。マンソン卿はザンガロにクーデターを起こして独裁者キンバ大統領を殺害し、傀儡政権を作り上げた上で、自らが操るペーパーカンパニーに採掘権を与えさせてプラチナ利権を手中に収め、さらにペーパーカンパニーの株売買でも利益を得る計画を企んだのだ。そのため、彼は腹心の部下サイモン・エンディーンにザンガロ情勢の調査を、そしてもう1人の部下マーチン・ソープには、現在は活動せず株価も最低レベルだが由緒のある会社の買収を命じた。 エンディーンは公刊資料を調べるかたわら、各国の傭兵にコネを持つジャーナリストに接触、北アイルランド出身で若いがやり手と評判の傭兵キャット・シャノンを選び出した。アフリカの戦場から生還してパリに滞在中のシャノンに面会したエンディーンは、素性と真意を伏せつつ、キンバ打倒を目論む国内勢力がいるという名目で、軍事面からのザンガロ調査を依頼した。シャノンは自ら観光客を装ってザンガロを訪れて、首都クラレンス一帯を詳細に調査し、国内勢力によるクーデターは困難だが、外部からの電撃的な軍事作戦なら可能とのレポートを提出する。その間にマンコンの動きがソ連に漏れ、ザンガロにとって数少ない友好国であるソ連は、水晶山にかかわる報告書が改竄された可能性をキンバ大統領に訴えて現地調査の許可を取り付ける。マンソン卿もまたソ連の動向を知り、ソ連調査団が到着するまでにクーデターを決行しなければならなくなった。クーデターの計画立案、武器・兵員調達、輸送、戦闘の全てを委任されたシャノンは以前からの戦友4人を集め、非合法な資金輸送や武器の裏取引の知識を使って、ヨーロッパ各国で準備を進める。一方でシャノンは依頼主の真意について探るため、私立探偵にエンディーンを尾行させて依頼主がマンコンであることをつかみ、マンソン卿の愛娘に接近するとともに、郷里での内戦に敗れてアフリカ某所に亡命している「将軍」を訪れていた。 正式依頼から100日後のザンガロ独立記念日未明、シャノン一行は買収した貨物船でクラレンス沖合に到着した。道中で合流した旧知のアフリカ人戦士達とともに上陸した傭兵達は、迫撃砲による砲撃で大統領官邸と兵営を制圧。突入した官邸でキンバを殺害し、味方に3名の死者を出しつつも、官邸の武器・金品・通信設備を確保することに成功した。
プロット