成人病
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生活習慣病(せいかつしゅうかんびょう、: lifestyle disease、: maladie de comportement、: Zivilisationskrankheit)は、糖尿病脂質異常症高血圧高尿酸血症など、生活習慣が発症原因に深く関与していると考えられている疾患の総称である。日本では、かつて加齢によって発病すると考えられたために成人病(せいじんびょう)と呼ばれたが、1980年代から若者の発症が目立つようになり、その後の調査で生活習慣[注釈 1] が深く関与していることが判明してきた。このため、1997年頃から予防できるという認識を醸成することを目的として呼び方が変わった[1]

このような疾患と肥満を複合する状態を、医学的に(メタボリックシンドローム)と総称する。また、(悪性腫瘍がん)、(脳卒中脳血管疾患)、(心臓病)の3大死因も生活習慣との関わりが強い。肥満はこれらの疾患になるリスクを上げる。
原因

スウェーデンにおける32年の追跡調査によれば、生活習慣と生活習慣病による全死亡リスクは次のようになる[2]
喫煙 : 1.92倍

糖尿病 : 1.64倍

高血圧 : 1.55倍

メタボリック症候群 : 1.36倍

高コレステロール血症 : 1.10倍

このように、喫煙が最大のリスクとなるというデータがあるため、生活習慣病対策は禁煙を最優先とするべきだとの医療界からの意見がある[3]。日本でも喫煙は最も健康に影響するとの報告は1980年代からあり[4]、併せて日本での食生活の欧米化も指摘される[5]

同じく食習慣に関連して言えば、2003年には、アメリカカナダの栄養士会は合同で、牛乳や卵も摂取しない完全な菜食においても栄養が摂取でき、また菜食者はがん、2型糖尿病、肥満、高血圧、心臓病といった主要な死因に関わるような生活習慣病のリスクが減る、認知症のリスクも減ると報告した[6]食生活は がん発生原因の30%に関わっているとする報告もある[7]

日本では、食生活が西洋化してしまった[5]。つまり、戦後の混乱が沈静化した1950年以降、および魚介類の消費量が減少し、牛乳、肉類や卵といった高脂肪食品の摂取が増加してきた[5]。食の欧米化が早かった沖縄では2010年代には65歳以下の若い世代の男女の、心筋梗塞脳梗塞などいわゆる生活習慣病の増加による死亡の早さが見られNHKは「長寿崩壊の危機」として特集した[8]

虫歯も感染が最初の原因ではあるがさまざまな菌が関わっており、共生しているため特定の菌に原因を求めるのは難しく、このため食や唾液の分泌などもかかわるため、「食」生活習慣病とも考えられる。
日本

日本では生活習慣に起因する疾病として主として、がん脳血管疾患心臓病などが指摘され、それらは日本人の3大死因ともなっている。肥満はこれらの疾患になるリスクを上げる。また肥満自体が生活習慣病のひとつともされることがある[9]。また糖尿病1型糖尿病を除く[1]脂質異常症家族性脂質異常症を除く[1])・高血圧高尿酸血症などが挙げられることもある。

2011年の厚生労働省の国民健康・栄養調査で、10年前と比べて日本人が魚や野菜を食べる量が減り、肉食が1割近く増えていることが分かった。厚労省は「野菜の摂取量が少ないと生活習慣病の発症リスクが高まる」としている[10]

沖縄は1990年代末までは世界に名だたる長寿地域であったが、2000年代初頭には徐々に頭打ちとなり2010年代には65歳以下の若い世代の生活習慣病の増加により死亡年代が若年化していた。この事象は、「長寿沖縄」の崩壊とも呼ばれ 2003年には長寿崩壊が指摘されていた[11]。低下が明確になった 2013年にはNHKは「長寿崩壊の危機」として特集したが、番組の中で若い世代の動物性脂肪の摂取量の多さによる肥満の人の多さが指摘されており、日本全体では10年後以降にこれを後追いすると指摘されている[8]
日本における歴史

「成人病」なる概念は、昭和30年代に「主として、脳卒中、がん、心臓病などの40歳前後から死亡率が高くなり、しかも全死因の中でも上位を占め、40-60歳くらいの働き盛りに多い疾病」として、加齢と共に罹患の危険が大きくなるという視点から行政的に提唱された。丁度その頃から日本人の死亡率で上位を占めるようになったがん、脳卒中、心臓病は「三大成人病」とされ、集団検診による早期発見、早期治療の体制が整えられた。「人間ドック#歴史」も参照

「成人病」は厚生省が1955年頃から使いだした。40歳から60歳の働き盛りの人々に発生率が高い疾患を指し、脳血管障害、悪性腫瘍、心疾患、糖尿病、痛風など慢性疾患とした[12]。成人とは20歳を意味したので最初は違和感があったが、この言葉は徐々に定着した。しかし成人病の罹患に長年の生活習慣が大きく影響していたことが判明し[1]、更に、生活習慣の激変により、未だ成人していない子供も糖尿病やメタボリックシンドロームを発症する例が増えてきた。

このため呼称を見直し1997年頃から、成人病の多くについて「加齢すれば必ず罹患しやすくなるのではなく、生活習慣の改善によって予防し得る」という認識を人々の間に醸成することを目的として英語のlifestyle related diseaseをはじめ、国外における成人病の呼称なども参考にした上、「成人病」を「生活習慣病」へと置き換える動きが興り始めた[1][注釈 2]。現在では「生活習慣病」の語は広く普及し、定着している[注釈 3]

また、混同されることが多いが、成人病は加齢による疾病の区分、生活習慣病は生活習慣による疾病の区分であり、両者間で重複する疾病も多いものの、あくまで別個の概念である[1]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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