この項目では、腎不全の末期状態の詳細について説明しています。慢性経過の腎不全の未病から末期までを包括する概念については「慢性腎臓病」をご覧ください。
慢性腎不全
概要
診療科腎臓学
分類および外部参照情報
ICD-10N18
慢性腎不全(まんせいじんふぜん、英: Chronic renal failure)は、慢性に生じた腎不全。糸球体や尿細管が冒されることで生じるが、原因はさまざまである。 自覚症状がないまま、数カ月から数十年かけて腎機能の低下が進み、失われた機能が回復する見込みはほとんどない[1] 便秘があると慢性腎臓病や末期腎不全になりやすいとの報告がある[2]。 病期は第1期?第4期に分けられる。
解説
統計
慢性糸球体腎炎が一番で50%、糖尿病性腎症が二番で15%。
透析導入まで至った症例では、糖尿病性腎症38%、慢性糸球体腎炎32%、腎硬化症7.6%。
疫学
原因
糖尿病性腎症(透析導入として最多の原因疾患)
慢性糸球体腎炎(2番目に多い)
悪性腎硬化症(3番目に多い)
多発性嚢胞腎(常染色体性優性多発性嚢胞腎/ADPKDなど)
病態
第1期(腎予備能減少期)
GFR(糸球体濾過値)が正常?50%の間に減少した時期であるが、生体の恒常性はほぼ正常に維持されており、無症状である。
第2期(代償性腎不全期)
GFRが、50?30%に低下し尿濃縮機能の低下、軽度の高窒素血症、軽度の貧血を認める。
第3期(腎不全期、非代償期)
GFRが30?5%に低下し、高窒素血症(高アンモニア血症)、等張尿、夜間尿、代謝性アシドーシス、低カルシウム血症、高P血症、低ナトリウム血症などが認められる(糸球体濾過量が30ml/分以下に低下した状態が続くものを言う)。
第4期(尿毒症期、末期腎不全)
GFRが5%以下となり、多彩な症状(尿毒症症状)が出現し、放置すれば死に至る。詳細は「慢性腎臓病」を参照
臨床像
第1期(腎予備能減少期)から見られるもの
第2期(代償性腎不全期)から見られるもの
第3期(腎不全期、非代償期)から見られるもの
腎性貧血腎性貧血は、腎不全が原因で起こる貧血。
病態
腎臓は赤血球を作るホルモンであるエリスロポエチンを作っているので、慢性腎不全ではエリスロポエチンが不足して正球性正色素性貧血になる。
高リン酸血症 : 糸球体濾過量の低下による。
低カルシウム血症高リン酸血症に反応した二次性の高副甲状腺ホルモン血症による事と、腎臓でのビタミンDの活性化障害による低ビタミンD血症による事との、二つの理由による。第3期から発症する。
第4期(尿毒症期、末期腎不全)から見られるもの
浮腫
尿毒症尿毒症は、尿毒素による症候。
症状
呼吸困難尿毒素は不揮発性酸性物質なので、代謝性アシドーシスを来たす。ホメオスタシスはアシデミアを回避するために呼吸を用いて代償しようとするために、呼吸が激しくなる。
腎性貧血エリスロポエチンの産生低下による正球性正色素性貧血を来たす。
肺水腫水分の排泄障害から体液の増加を来たし、循環血漿量の増加から鬱血性心不全を来たし、心不全から肺水腫に至る。心障害から至る肺障害を心性肺と言う。
中枢症状尿毒素による神経障害から、意識障害、頭痛、等を来たす。
線維性骨炎
病態腎不全ではリン酸の排泄が停滞して高リン酸血症