感電
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米津玄師の楽曲については「感電 (米津玄師の曲)」をご覧ください。
感電危険注意を促す意匠。高圧又は特別高圧の電気施設などに表示される。

感電(かんでん)とは、電撃(でんげき)、電気ショックとも呼ばれ、電気設備電気製品の不適切な使用、電気工事中の作業工程ミスや何らかの原因で人体または作業機械などが架線に引っかかる等の人的要因[1]、或いは機器の故障などによる漏電や自然災害である落雷などの要因によって人体に電流が流れ、傷害を受けることである。人体は電気抵抗が低く、特にに濡れている場合は電流が流れやすいため危険性が高い。軽度の場合は一時的な痛みやしびれなどの症状で済むこともあるが、重度の場合は死亡(感電死)に至ることも多い。高圧又は特別高圧の電気施設などには電気設備に関する技術基準を定める省令第23条に危険表示等の安全対策をすべきことなどが定められており、罰則はないが通常JIS規格[2]に基づく標識が使用される。
危険性による分類

感電の危険性は電圧電流周波数、通電経路によって異なる。

電圧としては、皮膚が乾燥している状態では数十Vでも感電しない場合もあるが、皮膚が発汗や水濡れに因って湿潤していたり、口鼻や生殖器など電気抵抗値が低く神経組織が豊富な部位に通電した場合は10 V程度でも強い苦痛とショックを受ける危険性がある。このような電圧は商用電源の他、点火プラグオルタネーターなどの自動車内電気回路、低い電源電圧から高電圧を生成する電子回路や、特殊用途に使われる高電圧の積層電池圧電素子も発生源となりうる。高電圧では直接接触が無くても、空中放電により感電を引き起こすことがある。また、電源回路からの接続が切り離されていても、コンデンサに充電された電荷が原因となり感電することがある。商用電源の100 - 200 Vの場合、短時間かつ小電流ならばショックのみで傷害を負わない場合もあるが、400 V級の通電部から感電した場合はアーク放電を伴う事例が多く、短時間かつ比較的小電流の感電でも重篤な火傷を負う危険性が高い。高圧線の6600 Vや数十万Vを超える事もある落雷では即死に至る危険性が極めて高く、即死を免れた場合でも後述の壊死による影響で長期の療養を経て結果的に死に至るか、手足欠損などの重篤な後遺障害を残すケースが多い。

電流としては、商用周波数で0.5 mAが人体に感じる最小の電流と言われており、10mAを超える電流では筋肉随意運動が不能となる。電流密度が高く通電部組織の発熱量が多い場合には、ジュール熱による火傷や組織壊死を生ずる場合もある。人体の器官のうち心臓は特に電流に敏感であり、100 μA(0.1 mA)を超える電流が心臓を通過すると心室細動心停止を起こし死に至る危険性があるとされている。また、平均的体格の成人男性と比して、女性ではこの2/3程度、小児では1/2程度の電流値で同等なショック及び傷害を生じると言われている[要出典]。

周波数としては1 kHz以下、時に40 - 150 Hz付近が最も有害とされ、高周波(特に50 kHz以上)は比較的影響が少ない。ただし放送局アンテナなどでは、大電力の高周波により感電に至る場合がある。この場合死ぬ事は少ないが、失明火傷をこうむることがある。

電流経路としては、感電元に触れて体内に電気が侵入した部位を入電部位、接地などにより地絡が成立し侵入した電気が体外へ出た部位を出電部位と呼ぶ。この入電部位と出電部位の間の経路に心臓が存在した場合に心室細動心停止に至る危険性が高まる。その確率は心筋を通過した電流値と通電時間の積に比例する。経皮的に感電した場合は、手?胸、胸?背中に通電した場合が最も危険で、同一腕内の感電や左右の脚間の感電では、心室細動心停止に至る確率が比較的に低い。

また、危険性は通電時間によっても異なる。低電流でも長時間の通電により感電することがある一方、高電圧の場合、無条件反射によって筋肉が瞬間的に収縮し、そのまま手などの感電部分が離れなくなることがある。一方、感電の衝撃で人体が跳ね飛ばされることによって、稀に大事故を免れる事例がある。
人体・動物に与える影響高圧線事故での重傷度U度熱傷国際電気標準会議(IEC)『IEC 60479-1人間及び家畜に対する電流の影響』から、左手から足に電流が流れている時間Tと交流電流Iの影響を示したグラフ。
* AC-1:ほぼ知覚できない
* AC-2:知覚できるが筋反応なし
* AC-3:不随意の筋収縮
* AC-4以降、心室細動を起こす可能性が上昇していく。

感電が身体に与える影響として次が挙げられる。なお、落雷による外傷に関しては、落雷および雷撃傷を参照。

電流斑・熱傷 - ジュール熱により皮膚に損傷が生ずる。電流が局所的に集中すると電流斑、広範囲に及ぶと熱傷となる。皮膚が硬質化する事も有り、落雷などの特に電圧の高い感電の場合、入出電部位や電流経路となった体組織が炭化する場合もある。

壊死腐敗 - 特に電圧の高い感電の場合、電流経路となった体組織が壊死を起こす場合がある。壊死に伴う腐敗は血行が相対的に少ない体組織の末端、多くの場合入出電部位となった場所から徐々に進行していくため、例えば右手より入電し左足より出電したような高圧電流感電の場合、時間の経過とともに右手と左足の先端が最初に壊死を起こし、その部位を切断して当面の生命の危機を回避したとしても、切断面からさらに壊死が進行した場合、前腕とふくらはぎ、上腕と太腿という順番で切断を繰り返す事となり、などの体幹部で壊死が止まらなかった場合には最終的に死に至る事となる。このようなケースは電気工事事故を取り扱う事例集などに多く報告されている。


電紋…肌の表面に発生したアーク放電の高温によって現れる、放射状・シダの葉状のパターン。I度程度の熱傷である。[3][4]

内臓


目を通過した場合は、白内障[5]

筋肉の圧迫により、コンパートメント症候群

急性腎不全[5] - 筋肉が大量に損壊した際にミオグロビンが血中に放出され、腎臓にダメージを与える褐色の尿が出るミオグロビン尿症になる[6]

血管の方が電気の通りがよく、それによって血管にダメージが出る。血栓・阻血・動脈瘤・遅発性動脈出血・組織壊死などが起きる[6]

随意運動への影響

心室細動、心停止 - これらがもっとも起きやすい交流周波数商用電源のそれと一致する。安全を考慮すれば商用電源周波数を下げるか上げるかすればよいのだが、医学的にこのことが判明したのは商用電源がインフラストラクチャーとして充分普及したのちであった。1900年代初頭の電気的除細動器黎明期には商用交流周波数が心筋に与える影響についての研究が進んでいる。

メンタル


後遺症として、行動の変化、失語症、視覚障害、頭痛、耳鳴り、記憶障害、注意散漫、神経質、怒り、攻撃行動などが確認されている[7][8]

高周波電流は人体に与える危険が少ないため、電気メスや、人体に微弱な高周波電流を意図的に流し刺激を与えて疲労回復などを図るマッサージ機器や電気風呂などに応用されている。また、スタンガンなど人為的に電気ショックを与える装置にも用いられる。ただし、電磁波による障害と同様に、長期間の暴露に対する危険性は解明されていない点が多い。

当然、ヒト以外の生物でも感電することは起き、上で述べた様な鳥類の他にも、たとえばクマサルなどの野生動物が町や村に迷い込んで電柱に登り、通電中の電線に接触して感電し負傷・死亡してしまう事態は散発的に起きている。また、1990年代の競走馬シーキングザパールは、競走馬引退後に繁殖牝馬として繋養されていた牧場で、落雷により感電死した。家庭で飼っているペット(特にネコやイヌ)がコードを噛んで感電する事故もあるので注意しなければならない。

なお水中や雨等で体が濡れていると、人体の表面抵抗が低下する。したがって、スマートフォン携帯電話のバッテリーのほか、アルカリ電池などの様な比較的低電圧でも感電死する。仮に水中で感電した場合、筋肉の弛緩で泳げなくなるほか、身動きが取れずに溺死することもある。
植物・キノコに与える影響

シイタケナメコなどの一部のキノコに雷のような刺激を加えると収量が増えることが確認されている[9]原木栽培で叩く刺激でキノコの出来を促進する方法をしけ打ち、打木刺激という[10])。


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