感情の分類とは、ある感情を他の感情と区別したり対比したりするための手段である。
感情には、喜び・恐れ・驚き・嫌悪・怒り・悲しみなどの基本感情が存在すると考える基本感情説と、感情が「快 ― 不快」、「覚醒 ― 睡眠」などの次元上のひとつのベクトルとして表されると考える次元説がある。[1]
基本感情説を代表する理論にはポール・エクマンの分類やプルチックの感情の輪、ダライ・ラマ14世とポール・エクマンの分類などがある。このような理論では基本感情の組み合わせによって、異なる様々な感情(応用感情)が生じるとしている。[1]
次元説は基本感情説と対立した理論である。基本感情説では「研究者によって基本感情の数が異なる」・「同じ刺激でも人や場面によって受け取り方が異なっている」などの問題点が指摘されていた。このような問題点から、感情を基本感情ごとに分ける考え方ではなく、いくつかの要素の違いで連続的に変化するものだという主張が現れた。これが次元説である。次元説には、ラッセルの感情円環モデルなどがある。[1][2]ポール・エクマン 詳細は「ポール・エクマン#表情の分類」を参照。 アメリカの心理学者であるポール・エクマンはパプアニューギニアの部族民などを調査することで、基本的な感情のリストを作った。[3] エクマンは怒り・嫌悪・恐れ・幸福感・悲しみ・驚きの6つの感情が全人類に普遍的であり、生物学的基盤を持つと結論した。また、1990年代には追加で11の感情(喜び・安心・満足・面白い・興奮・自負心・納得感・軽蔑・困惑・罪悪感・恥)を追加した。[3][4]プルチックの感情の輪プルチックの感情の輪(混同感情の関係) 詳細は「感情の一覧#プルチックの感情の輪」・「ロバート・プルチック#プルチックの感情の輪」を参照。 アメリカの心理学者であるポール・エクマン(Paul Ekman)は1980年にプルチックの感情の輪を提唱した。この理論は、円錐を逆さまにしたような色彩立体の感情モデルである。[5] プルチックの感情の輪は、8つの基本感情(喜び・期待・怒り・嫌悪・悲しみ・驚き・恐れ・信頼)と16の強弱派生、24の混同感情から成り立つ。[5]
ポール・エクマンの分類
プルチックの感情の輪
怒り激怒苛立ち
嫌悪憎悪退屈[8]信頼
悲しみ悲嘆[9]哀愁[10]喜び
驚き驚嘆放心[11]期待
恐れ恐怖不安[12]怒り
信頼敬愛容認嫌悪
ダライ・ラマ14世とポール・エクマンの分類ダライ・ラマ14世
チベット仏教の指導者であり、チベット行政府の国家元首を務めるダライ・ラマ14世とアメリカの心理学者ポール・エクマンは2016年に感情を5つのカテゴリーに分け、合計46種類に分類した。[13]
ここでの5つのカテゴリー(五大感情)とは、楽しみ・嫌気・悲しみ・恐れ・怒りである。[13]
また、それぞれのカテゴリーの感情は以下の通りである。[13]
楽しみ:狂喜・興奮・驚嘆・ナチェス・フィエロ・高慢・平穏・安心・シャーデンフロイデ・面白い・同情・喜び・感覚的快楽(計13種類)
嫌気 :強い嫌悪・憎悪・反感・嫌気・嫌悪・嫌い・苦手(計7種類)
悲しみ:苦悩・悲嘆・悲哀・絶望・悲惨・落胆・無力・諦め・逸脱・挫折・残念(計11種類)
恐れ :震駭・恐怖・パニック・自暴自棄・恐れる・不安・緊張感・狼狽(計8種類)
怒り :憤激・執念・怨み・論争性・激昂・フラストレーション・苛立ち(計7種類)
ラッセルの感情円環モデルラッセルの感情円環モデル
1980年にジェームズ・ラッセルはラッセルの感情円環モデルを提唱した。[1]
ラッセルの円環構造モデルは、横軸に「快 ― 不快」という感情価、縦軸に「覚醒 ― 眠気」という覚醒をとったとき、感情が円環状に並ぶ。[14][15]
また、感情の強さは原点からの距離によって表わされる。[14]
その他の分類情念論
スピノザの分類
オランダの哲学者バールーフ・デ・スピノザは、喜び・悲しみ・欲望の3つを基本感情として、感情を48種類に分類した。