情報リテラシー
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情報リテラシー(じょうほうリテラシー、: information literacy)とは、情報と識字(リテラシー)を合わせた言葉で、情報を自己の目的に適合するように使用できる能力のことである。

「情報活用能力」や「情報活用力」とも表現するが、文部科学省が定義する「情報活用能力」とは意味合いが異なる。また「情報=IT」との連想やインターネットの利用時において情報リテラシーが要求される等の理由からコンピュータ・リテラシー、他にもITリテラシー(情報技術リテラシー、information technology literacy)、ネットリテラシーとの表現がある[1]。しかし、以下に定義されるように、本来必ずしもコンピュータと直結するものではなく、情報モラルと大きく同じ意味だと認識されている。
概要

アメリカ図書館協会(ALA)が1989年に発表した最終報告書は、情報が必要とされるときに情報を効果的・効率的に(1)探し出し、(2)精査し、そして(3)使うことができる能力を保持する人のことを情報リテラシー能力を保持している人と定義する[2]。また、Shapiro & Hughes (1996)による Information literacy as a liberal art は、現代におけるリベラルアーツと定義する[3]。つまり、中世の大学における三科 (文法・論理・修辞) のように、現在の情報化社会において、コンピューターをただ使用するだけではなく、情報にアクセス、精査し、社会的、文化的、そして哲学的な状況・影響を知ることができる能力としている。

ニューヨーク州立大学では、修士・博士課程では絶対にあってはならない盗用も、情報リテラシー教育に含まれている[4]

北米においては、アメリカ図書館協会(ALA)の一部門である大学研究図書館協会(英語版) (ACRL)が「高等教育のための情報リテラシー能力基準」( ⇒Information literacy competency standards for higher education)(ACRL, 2000)[注釈 1]を作成した。これを基に、オーストラリアニュージーランドの環境を加え、改変したのが Australian and New Zealand Institute for Information Literacy (ANZIIL) が2004年に発行した Australian and New Zealand Information Literacy Frameworkである[5]。Australian and New Zealand Information Literacy Framework は、情報リテラシーが備わっている人には次の6つの要素が備わっているとする。下記6項目は原資料では細目に展開され、その中には「複数の情報源を使用しての意思決定」「他者の著作権・知的財産権への配慮」「他者の文化的背景等の尊重」等が記される。
情報に対するニーズを認識し、必要とする情報の性質と範囲を決定できる。

効果的に、そして、能率的に必要な情報を見付けられる。

批判的に情報や情報探索過程を評価できる。

収集した情報や自らの研究などから生み出された情報を管理できる。

より重要で新しい情報を適用して新しい概念や新しい理解を生み出せる。

理解しながら情報を用い、情報を用いるということの周囲にある文化的・倫理的・経済的・社会的な問題を認識できる。

「財団法人社会経済生産性本部認定UBA能力試験」のウェブサイトにある「情報リテラシーとは」は以下の記述をする。
情報は様々な形式で表されるため、情報リテラシーは、これまでの文字に代表される印刷物以外の媒体についても対象となる。

文字の読み書き以外にも、視覚、聴覚、コンピュータ(携帯機器、ネットワークを含む)に関する能力などが含まれる。

大きくは、情報を収める媒体に注目したメディア・リテラシーと、情報の高速多量の処理が可能なコンピュータに注目したコンピュータ・リテラシーに分けられる。

これらのことを踏まえると、「激しく変化する社会の中で生き抜くためには生涯学習が必須となり、そしてその方法をそれぞれが身に付けるためには情報リテラシー能力の獲得が必須となっているということ」、情報リテラシーとは、「私たちが社会生活を行っていく上で、媒体を問わずあらゆる情報に対する(1)情報ニーズを認識する能力(2)情報を発見・獲得する能力(3)情報及び情報探索過程を評価する能力(4)情報管理能力(5)情報に基づいて新たな理解を生み出す能力(6)情報の背後にある問題を認識する能力」であることが言えよう (『私たちの暮らしにとって情報リテラシーとは何か』より)。
情報リテラシーの日本的概念

日本では情報リテラシー理解は特有のものであり、国際的な理解とは異なる点がある[6]

日本では、情報機器を活用して情報社会を生きていく能力といったニュアンスで使われているようである。

図書館情報学者の根本彰は「情報リテラシー」の日本での理解とACRLによる定義(ACRL,2000)を比較、分析している[7]。根本によれば、日本で理解されている「情報リテラシー」は、コンピュータシステムを利用する方法の習得であり、定型的な学習スキルを重視している[7]。対して、ACRLによる定義における「情報リテラシー」は、情報環境全体から情報を得るための能力全般を指す[8]。また、情報利用の認知的・評価的側面が重視されている[8]。つまり、アメリカでは、図書館も含めた一般的な情報利用環境における情報のありようが問題とされており、コンピュータを用いた情報システムという情報環境だけを想定しているわけではない[6]。また、利用するだけでなく、探索し、評価することに重点が置かれている[7]

また、インターネット利用について、日本とアメリカの情報リテラシー教育の違いがどのように現れているかにも違いがある[9]。日本では、インターネットの技術的な部分やサービスの仕組みとそれを使用する方法に加え、セキュリティの問題、倫理的な問題、個人情報、著作権の保護についての一般的な注意を行う[8]。対して、アメリカでは、技術的な部分は軽く済ませて、個々のサービスが何を提供するか、利用するためにはどのような方法があるのか、どのような情報が引き出せるのか、さらに情報の特性や利用方法の検討、内容のあり方、利用の仕方、内容の評価にまで踏み込む[10]
情報リテラシーにかかわる取り組みの経緯


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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