悪魔の寵児
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『悪魔の寵児』(あくまのちょうじ)は、横溝正史の長編推理小説。「金田一耕助シリーズ」の一つ。『面白倶楽部』1958年7月号 - 1959年7月号に掲載され、角川文庫『悪魔の寵児』 (ISBN 4-04-130412-1) に収録されている。また、女性漫画家JETによりコミカライズ(漫画化)された。
概要

名探偵金田一耕助をして「これほどえげつない嗜好を持った犯人を他に知らない」と言わしめた殺人犯が出現する。作中で「悪魔の寵児」と命名された犯人は、防水レインコートとゴム製の長靴フードをすっぽり頭から被り、黒革の手袋をはめ、大きな黒眼鏡と舌布(タング)で顔を隠した「雨男」として、専ら雨の日に出没する。この扮装によって複数人物が同一人物を装うことが可能になるというのが、作中の早い段階で金田一の「雨を巧みに利用している」という科白により明らかにされる重要なトリックである。実際「雨男」に扮していた人物は、犯人に操られていた被害者や単に模倣していた者も含めて5人いたことが最終的に明らかになる。

本作は『悪魔の手毬唄』の連載が後半におよぶころに同時並行で連載開始し、正統専門誌『宝石』に格調高いものを書く一方で大衆雑誌にこんなエログロを書くとは、という硬派な糾弾が寄せられたというエピソードが有名である。しかし、本作の描写は『幽霊男』や『吸血蛾』のような血なまぐさい猟奇趣味ではなく、ミスディレクションの活用やトリックの先進性など本格推理の骨法がきちんと保たれた作品である[1][2]
あらすじ

1958年(昭和33年)6月18日、「雨男」が吉祥寺の本屋・日月堂に現れて葉書の印刷を依頼する。内容は一組のカップルが外遊に出るという挨拶状であったが、夫婦かと思いきや2人の姓が異なっていた。そして、そのうち何枚かに禍々しい黒枠が墨で施され、6月28日に風間欣吾の愛人たちに届けられる。風間は闇行為で巨万の富を得た元職業軍人で「戦後派の怪物」の1人である新興実業家であり、挨拶状は風間の妻・美樹子と彼女の肖像画を描いていた画家の青年・石川宏の連名になっていた。不安を抱いた3人の愛人たちが、その1人・城妙子が経営する高級酒場(パブ)「カステロ」のホステスで宏の妹でもある早苗を連れて兄妹の住居を訪れ、美樹子と宏の心中に見せかけられた現場を発見する。美樹子は既に息絶えており、宏はまだ息があった。

「カステロ」の常連で早苗に淡い想いを抱いていた東都日報の記者・水上三太が、風雲ただならぬものを感じて尾行してきていた。さらに風間も挨拶状を持って現れる。三太は事件を記事にしようとするが、早苗の兄が自殺幇助罪に問われる可能性を指摘されて思い留まる。しかし翌朝には、風間が密かに自宅に運んだ美樹子の遺体が何者かに盗まれる。風間は、自分の事業は個人的なスキャンダルではもうびくともしないことから犯人の狙いは個人的な怨恨・復讐だと判断し、三太にスクープ差し止めと引き換えで情報提供を約すると共に、同姓の土建屋・風間俊六を介して面識があった金田一耕助に調査を依頼する。また宏が退院したら早苗と共に自邸内の執事宿舎に引き取ることにした。

風間は自分に復讐を考える者として美樹子の前夫・有島忠弘と自分の前妻・望月種子を挙げ、三太は種子の経営する蠟人形館へ出向く。休みだと追い返されるが深夜に忍び込び、風間の5人の妻妾たちの蠟人形を発見したところで種子に発見され銃殺されそうになる。しかし、先に潜入して隠れていた金田一が照明を消したので脱出することができた。

7月13日、種子の情夫でもある人形師・猿丸こと黒田亀吉(黒亀)の工房に雨男が現れ、君代の写真を示して人形製作を依頼する。7月25日、風間の愛人の1人・保坂君代が経営する美容院「ブーケ」が8月1日から丸の内へ進出するのに先立って、新しい店でカクテルパーティが開かれた。しかし、君代は前夕から行方不明で、代理と称する男からドラマチックな登場を計画していると電話があったきり。さらに雨男が入口で早苗を呼び止めて風間に鍵を渡すよう依頼、朝のうちに届いていた箱をその鍵で開けると、黒亀が蠟人形で作った風間と君代が情交している様子のオブジェの、君代の部分が本人の死体に入れ替わったものだった。君代は美樹子が心中に見せかけて殺害されたとき見当たらなかった帯締めで絞殺されていた。君代殺害の大々的報道が避けられない状況になったので、風間は三太が美樹子の偽装心中と死体紛失をスクープするのを解禁、翌日の東都日報は記録的な売れ行きとなる。

宏は強い麻薬を注射されたことによる精神の異状が完全には快復していなかったが、7月28日から事情聴取が始まる。8月15日に最後の精神鑑定があり、その結果を担当の古垣博士が発表することになるが、宏の神経に負担をかけないため、発表中にこっそり退院させることにしていた。しかし、待っていた運転手が殴られて昏倒している間に、偽の運転手が早苗と宏を連れ去ってしまい、薬を注射された早苗だけが翌朝上野公園で発見される。

9月4日、風間の世間に知られていない愛人である湯浅朱実宅を訪ねた三太は、風間に及川澄子のことを尋ねる。金田一が調査していることを掴んで、何者なのか風間に確認しようとしたのだが、風間は自分の人生をちらと影のように横切っただけの過去の女だとしか認識していなかった。そこへ風間のもう1人の愛人・宮武益枝が行方不明になっているという知らせが入る。等々力警部が関係者を風間邸に集めて事情を聞いているところへ、三太から益枝の死体を発見したとの知らせが入る。三太は君代殺害後に蠟人形館へ再び潜入して、黒亀が雨男を尾行して隠れ家を突き止めたことを掴んでおり、それを手がかりにその隠れ家が成城の街外れにある廃アトリエだと突き止め、そこで死体を発見したのである。

益枝は絞殺されており、背後から刺殺された黒亀の死体と情交している形に組まれていた。成城署に呼ばれた種子は、犯人からの電話による「神託」に基づいて行動していたことを供述する。黒亀も当日早朝に「神託」に従って出かけていた。味方と思っていた「神託」に裏切られて黒亀を失ったうえ、成城署の控室で風間と2人残されたことなども重なり、種子は発作を起こして倒れ、そのまま発狂してしまう。

三太は黒亀が益枝の死体と死姦におよんでいたことから、最初に蠟人形館へ潜入したとき聞こえた黒亀の喘ぎ声が美樹子との死姦である可能性に気付いて蠟人形館へ向かい、一度警察が調べて問題なしとなった美樹子の蠟人形の中に死体が隠されているのを発見する。また、地下には宏が監禁されていた。一方、発狂して病院に収容された種子はオートミールに仕込まれた青酸加里で毒殺される。

9月10日、小石川小日向台町で及川澄子について調べていた金田一が狙撃されて左肩を負傷し、翌日には重態だと新聞報道される。金田一に輸血するため病院を訪れていた風間は、9日の夜に会見する予定だった忠弘が約束のホテルの部屋へ来なかったという情報を等々力に伝える。忠弘は三太が朱実宅を訪ねる直前に朱実と風間の情交を盗撮しており、それをネタに自分の別居中の妻である朱実を風間に売りつけようとしていたらしい。そして、忠弘はホテルの約束の部屋の1階上の部屋で、妙子と共に死体で発見される。


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