悪魔くん
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悪魔ちゃん命名騒動」とは異なります。

この項目では、水木しげるの作品について説明しています。漫画「アクマくんシリーズ」については「日渡早紀」をご覧ください。

悪魔くん

「悪魔くん」ブロンズ像
境港市水木しげるロード
漫画:貸本版
作者水木しげる
出版社東考社
発表期間1963年 - 1964年
巻数全3巻
漫画:少年マガジン版
作者水木しげる
出版社講談社
掲載誌週刊少年マガジン
発表号1966年1号 - 1967年16号
巻数全2巻
漫画:悪魔くん復活 千年王国
作者水木しげる
出版社集英社
掲載誌週刊少年ジャンプ
発表号1970年14号 - 43号
巻数全3巻
漫画:悪魔くん 世紀末大戦
作者水木しげる
出版社光文社
掲載誌コミックBE!
発表号1987年9号 - 1988年15号
巻数全1巻
漫画:最新版 悪魔くん
作者水木しげる
出版社講談社
掲載誌コミックボンボン
発表号1988年12月号 - 1990年4月号
漫画:ノストラダムス大予言
作者水木しげる
出版社辰巳出版
発表期間1993年8月1日・1994年7月15日
巻数全2巻
ドラマ:月曜ドラマランド版
監督大井利夫
制作フジテレビ東映
放送局フジテレビ系列
放送期間1986年9月15日 - 同日
話数一話単発

アニメ
アニメ:テレビアニメ
原作水木しげる
シリーズディレクター佐藤順一
キャラクターデザイン鈴木欽一郎
音楽青木望
アニメーション制作東映動画
製作テレビ朝日、東映、東映エージエンシー
放送局テレビ朝日系列
放送期間1989年4月15日 - 1990年3月24日
話数全42話
アニメ:Webアニメ
原作水木しげる
総監督佐藤順一
シリーズディレクター追崎史敏
シリーズ構成大野木寛
キャラクターデザイン渋谷秀
音楽井筒昭雄
アニメーション制作エンカレッジフィルムズ
製作東映アニメーション
配信サイトNetflix
配信期間2023年11月9日 -
話数全12話
映画
監督佐藤順一
脚本菅良幸
キャラクターデザイン鈴木欽一郎
音楽青木望
制作東映動画
配給東映
封切日1989年7月15日
上映時間40分
映画:悪魔くん ようこそ悪魔ランドへ!!
監督佐藤順一
脚本菅良幸
音楽青木望、つのごうじ
制作東映動画
配給東映
封切日1990年3月10日
上映時間25分

テンプレート - ノート
プロジェクト漫画テレビドラマアニメ
ポータル漫画テレビドラマアニメ

『悪魔くん』(あくまくん)は、水木しげる日本漫画作品、およびそれを原作として作成された特撮テレビドラマテレビアニメ、ならびにこれらの作品の主人公のニックネーム。
概要

「悪魔くん」と呼ばれる少年が、悪魔の力を借りて世界を平和へと導くために戦う物語。社会に対する義憤の感情から生まれた水木の代表作の一つであり[1]、一般的に知名度の低かった魔法陣や呪文といったオカルト世界を広く知らしめた作品でもある[2]

1963年の貸本漫画から始まり、1966年の『週刊少年マガジン』、1970年の『週刊少年ジャンプ』、1987年の『コミックBE!』、1988年の『月刊コミックボンボン』、1993年の描き下ろし単行本と掲載誌を変えて断続的にシリーズが発表された。作品は貸本版の松下一郎、『少年マガジン』版の山田真吾、『コミックボンボン』版の埋れ木真吾と主人公の異なる三種類のシリーズに大別される。単行本は体裁を変えて何度も出版されており、文庫や電子書籍などで読むことが出来る。また、『水木しげる漫画大全集』では全ての作品が復刻された。

映像作品は特撮テレビドラマ『悪魔くん』が1966年から翌年にかけて放送。『少年マガジン』版を原作としており、水木作品では初めての映像化である。1986年には単発のテレビドラマが月曜ドラマランドの枠で放送され、1987年には悪魔くんと鬼太郎の共演が実現したオリジナルビデオが発売された。1989年から翌年にかけてテレビアニメが放送され、劇場版も2作製作された。映像作品のソフト化は、月曜ドラマランド版を除いてDVDが発売されている。2023年には、テレビアニメ版の続編となる新作アニメがNetflixにて全世界独占配信された。
基本設定

本作品は、水木しげるの漫画が数シリーズおよび特撮、アニメとあるがそれぞれ内容が異なっている。これらの諸作品は大別すると救世主(メシヤ)悪魔くんについての物語と、悪魔・妖怪を退治するヒーロー悪魔くんの物語とに分かれる。さらに後者は主人公、基本的設定の違いから2つに分けられる。

全ての漫画『悪魔くん』で共通する点を以下に記す。

主人公は一万年に一人という天才児で、「悪魔くん」と呼ばれている。

悪魔くんは全人類が幸せに生きられる世界を築こうとしており、それには
悪魔の力が必要と考えている。なお、作中で「悪魔」と呼ばれる存在はキリスト教起源のものに限らず、世界中の神話・民話に語られる様々な妖怪怪物も含んでいる。

物語の始まりでは、まだ悪魔くんは悪魔の召喚に成功しておらず、懸命に魔術の研究と実験を繰り返している。しかし伝説的魔術師ファウスト博士が現れて悪魔くんに秘儀を授け、ついに悪魔を呼び出すことに成功する。

さらにファウスト博士は悪魔くんに「ソロモンの笛」を与える。これは悪魔を従わせる力をもつ笛で、ソロモン王が使ったというものであった。

悪魔くんには自分に付き従っている部下が複数人いる。それらは「十二使徒」と呼ばれることもある。十二人のキャラクターはシリーズにより異なる。また、マガジン版には複数人の悪魔の部下がいるものの十二使徒という言葉自体が出てこない。

悪魔を呼び出す時は魔法陣を前に「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり」と呪文を唱える。これは18・19世紀のフランスで流布した魔法書に記された、悪魔を呼び出すために黒い雌鶏を引き裂いて唱える呪文(Eloim, Essaim, frugativi et appelavi.)[3][注 1][注 2]に由来する。

それ以外の設定は各作品ごとに異なっている。
漫画
悪魔くんと十二使徒一覧

バージョン悪魔くん第1使徒第2使徒第3使徒第4使徒第5使徒第6使徒第7使徒第8使徒第9使徒第10使徒第11使徒第12使徒
松下
一郎版松下一郎蛙男ヤモリビト
(佐藤)ロソン
千年王国ふくろう女ベルゼブブ家獣松下太平キリヒト
世紀末大戦ロソン町田灰怒羅視鬼魅
山田
真吾版山田真吾メフィスト百目の子魔女
ノストラダムス大予言蛙男つらら女夜雀鉄鼠そろばんぼうず雷獣家獣倉ぼっこ
埋れ木真吾埋れ木真吾メフィスト二世ユルグヨナルデパズトーリ幽子ピクシー百目妖虎家獣バウー象人鳥乙女ナスカサシペレレこうもり猫

「松下一郎」版

悪魔くんの名前は松下一郎。ストーリーの骨格は「人類が平等に幸せな生活ができる理想社会『千年王国』の樹立を目指す悪魔くんが現代社会に戦いを挑む」というもので、社会問題を扱う作風でもある。
『悪魔くん』
1963年から1964年にかけて貸本劇画の出版社である東考社より刊行。作品の背景には、極貧生活をしていた水木の社会に対する怒りが大きく影響しており、親交のあった同社の桜井昌一の依頼に応える形で、貧乏を打ち砕く魔法の話を考え出す。平凡社の世界教養全集『魔法』やゲーテの『ファウスト』などを参考にし、当時はまだ一般には知られていなかったオカルトの世界を取り入れて、悪魔くんが十二使徒とともに革命を目指す物語を描いた[1][2]白土三平の大河劇画『忍者武芸帳』に刺激を受け、当初は全5巻予定の壮大な構想だった。しかし2300冊を発行した第1巻の実売が902冊の結果となったため、その時点で3巻目での打ち切りが決定。既に2巻目が印刷され、3巻目の執筆が始まっていたため、当初の構想を全うすることができなかった。そのため使徒が全員揃うことはなく、全ての事件の謎が解けないままとなり、主人公は暗殺されるという結末になってしまった[5]小学館クリエイティブ角川文庫から復刻されている。
『悪魔くん復活 千年王国』
1970年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載。結末の補完を目指した貸本版のリメイク作品。貸本版とは異なり十二使徒が全て揃うが、千年王国の建国に向けて行動を開始するところで物語は終わる。1980年代以降では『悪魔くん 千年王国』のタイトルで何度か復刻されており、現在はちくま文庫から復刻されている。
『鬼太郎対悪魔くん』
1976年『月刊少年ジャンプ』7月号に掲載。初出時のタイトルは「新作悪魔くん 悪をほろぼせ!!の巻」であったが、単行本収録時に改題された[6]。地獄の悪魔を引き連れて現れた悪魔くんが鬼太郎と戦う内容の読み切り作品。
『悪魔くん世紀末大戦』
1987年10月31日号(No.9)から1988年10月31日号(No.15)にかけて『コミックBE!』(光文社)に連載。貸本版の直接的な続編。1997年の東京を舞台に復活した悪魔くんが千年王国の樹立のために再び動き出す。当初は企画発案者の朝松健がシナリオ協力として参加していたが、本業が多忙になり降板を余儀なくされ、後半は竹内博が担当した[7]。なお、これも十二使徒が全員揃う前に連載終了を迎えている。光文社から単行本が出た後に、徳間書店から復刻されている。
登場キャラクター(「松下一郎」版)
松下 一郎(まつした いちろう)
小学二年生。大手電機メーカー「太平洋電気」の社長令息。大きな垂れ目、タマネギを思わせる髪型、突き出た額といった独特の容貌をしている。「精神的異能児」と言われるほどの天才的頭脳を持つ少年で、貧富の格差がない平和な世界を創造しようとしている。一般的な倫理の枠にとらわれず、目的のためなら手段を問わない面がある。あまりの頭の良さゆえにクラスメートから「悪魔くん」とあだ名されている。貸本版・『千年王国』版ともに野望を叶える前にヤモリビトの佐藤の密告により暗殺されるが、後に復活することが予言される。『世紀末大戦』では蛙男の手で34年後に復活を遂げ、十二使徒とともに再び平和世界の実現に向けて活動を開始。死亡していた間、魂が天界で修行を積んでいたため、本物の悪魔を凌ぐほどの魔力を身につけている。『千年王国』では八仙人の助けにより数年後に復活。
ファウスト
一万年に一人あらわるという東方の神童を待ち続けて400年を生きた老人。ゲーテの『ファウスト』の主人公をモチーフにしている。松下一郎に悪魔を召喚する方法とソロモンの笛を与え、その生涯を閉じる。今際の際に「現世は夢になり、夢は現世になる」という言葉を残し、松下に深い感銘を与えた。
蛙男(かえるおとこ)
元は松下一郎の家庭教師だが、古代の魔法使「蛙男」の魂を入れられたことで蛙のような顔の別人になった。悪魔くんの右腕というべき存在の第一使徒。『世紀末大戦』でも登場し、儀式により松下を復活させた。
ふくろう女
『千年王国』に登場する第二使徒。松下一郎が古代の魔法使「ふくろう女」の魂を蘇らせて一羽のふくろうに宿らせた。悪魔を召喚するための正しい魔法陣の図面を知っているのは彼女だけとされる。
佐藤
松下一郎の二番目の家庭教師。松下の計画によりヤモリビトの魂を入れられたが、呪医フラン・ネールにより完全に乗っ取られることを免れる。その後は第三使徒ヤモリビトを演じながら松下に従う。イスカリオテのユダに対応したキャラクターであり、松下をあざむいて官憲に引き渡し、死に導く。その後は悪魔と組むが、結局は都合よく利用されただけであり、三年後には無一文になって病に苦しみながら路傍で途方に暮れているところを蛙男に見つかる。そこで蛙男の説得を受けて改心し、共に松下のために働くことを誓う。『世紀末大戦』では既にこの世を去っていた。
ヤモリビト
松下一郎が復活させようとしていた古代の魔法使のひとり。ヤモリを操るほか、『千年王国』では悪魔を呼び出す方法が書かれた「創造の書」を読めるのは彼だけとされる。奥軽井沢の入らずの森に墓があり、松下の手引きでそこに導かれた佐藤に魂が入り込むが、完全に佐藤と入れ替わる前にフラン・ネールの呪法で魂を殺される。容姿が少年マガジン版の「悪魔メフィスト」の元になっている。
松下 太平(まつした たいへい)
一郎の父親で、大手電機メーカー「太平洋電気」の社長。息子の頭が良すぎることに悩んでおり、普通の人間になって欲しいと願って社員の佐藤に家庭教師を依頼した。『千年王国』では悪魔ベルゼブブに陥れられて会社を乗っ取られてしまい、最後は殺されそうになるが、一郎に助けられて十二使徒に加わる。続編の『世紀末大戦』でも健在で、山本魔州から一郎の抹殺を命じられるが、それには従わず何かあれば自分も協力すると一郎に告げた。
ロソン
松下一郎に呼び出された悪魔。第四使徒。見た目は背広を着て髭を生やした男性で、特別な力もなく、人間とほとんど変わらない。狡賢く、後に日本を経済的に支配する。続編の『世紀末大戦』にて「ロソン」という名が出る。ロソンコンツェルンの会長として君臨していたが、復活した松下によって半ば強制的に十二使徒として働かされる。悪魔を呼びだす呪符を使うなど、多少悪魔らしい力も披露している。
ベルゼブブ
『千年王国』で松下一郎に呼び出された悪魔。第五使徒。ロソンと違い、毛むくじゃらで人間離れした容姿をしている。悪魔の中では最下級で魔界のハエにすぎないと言われており、腕力も弱いが、不死身で女性を魔女に仕立て上げる能力がある。松下と契約したものの忠誠は誓っておらず私腹を肥やすことのみを考えており、第五使徒として働くふりをしながら、ヤモリビト佐藤を唆して松下を暗殺させる。
家獣(かじゅう)
『千年王国』に登場する第六使徒。『世紀末大戦』でも登場し、蟹の悪魔シェキリロンを倒すなど活躍する。「埋れ木真吾」版にも第八使徒として登場。
別荘番(べっそうばん)
眼鏡をかけた禿げの老人で、松下一郎の別荘を管理している。『千年王国』では妻たちとともに家獣の内部に閉じ込められていたところを松下に助けられて第七使徒となる。
ロナルド・サタン
世界の三分の一を占める石油会社の社長で、政財界を牛耳る権力者。ファーストネームは『世紀末大戦』で判明する。裏の顔は三千年前に東方の三賢人に呼び出された悪魔サタンの末裔で、エジプトのスフィンクスに仕えている魔法使い。悪魔を呼び出す権利は自分だけにあると考え、松下一郎と対立する。貸本版では奥軽井沢で松下との魔法合戦に敗れて九千億円を払わされるが、それでも懲りずに軍隊を率いて再び松下たちを襲ったところを返り討ちに遭い死亡。『千年王国』では松下の父親に助けを求められてベルゼブブと戦うが、相手の方が上手でありダイヤモンドの中に逃げ込むも出られなくされてしまうが、松下の手で救出されてスフィンクスと共に帰って行った。
スフィンクス
サタンの主。貸本版ではサタンが松下一郎に殺されたことにより日本に向かって動き出したが、松下が死亡したため途中でエジプトに帰った。『千年王国』では囚われの身になったサタンを助けるため日本に上陸して暴れたが、松下からサタンを返されたことにより帰っていった。
キリヒト
松下一郎のクラスメート。クラスでは聖人の如く振舞っているが、貸本版ではサタンの手下で松下の暗殺を計画する悪役。『千年王国』では最後の十二使徒として松下の仲間となる。
フラン・ネール
インドの高名な呪医。インド首相の命令で松下一郎が「東方の神童」であるかどうかを見極めるために来日し、ヤモリビトの魂に支配されかけた佐藤を救う。しかし本当の主は蓬莱島の八仙人で、彼らの命によりソロモンの笛を奪い、さらに悪魔くん抹殺の指令を受ける。


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