悪性リンパ腫
[Wikipedia|▼Menu]

悪性リンパ腫(あくせいリンパしゅ、英語: Malignant Lymphoma、略称:ML)は、血液のがんで、リンパ系組織から発生する悪性腫瘍である。
概説

リンパ系組織は全身を巡っているため、肉腫及び癌腫のとは異なり、外科手術による切除は行わず(ただし、腫大による圧迫などを緩和するため姑息手術を行うことはある)、主に放射線療法および化学療法適応する。リンパ腫には「良性」はないため、必ず「悪性」ということになる。日本語の病名としては明示的に「悪性リンパ腫」と呼び習わしている。該当診療科目は血液内科耳鼻咽喉科、また診断および治療の観点から放射線科チーム医療を踏まえた範囲となる。

悪性リンパ腫は、単一ではなく、多様な病型のリンパ系組織のがんの総称である(その疾患分類については今でも分類作業が進行中である)。病型を大別すると、ホジキンリンパ腫 (Hodgkin's lymphoma, HL、あるいはHodgkin's disease, HD) と非ホジキンリンパ腫 (non Hodgkin's lymphoma, NHL) がある。欧米ではホジキンリンパ腫が多数を占めるが、日本人のホジキンリンパ腫は約10%であり、日本では殆どが非ホジキンリンパ腫で占めている。病型によって治療方針および予後が大きく異なるので、リンパ腫では自己の病型を知ることが重要である。

リンパ腫は全身に発生するというその性質上、治療を行ってもがん細胞が完全に消えたことを証明することはできない。そのため「完治」という表現はせず、腫瘍を検出できなくなった時点で「緩解(かんかい・寛解とも)[1]」したと表現する。これは、同じ血液のがんである白血病と同様の扱いである。緩解に至ってもがん細胞が残存していることがあって、再発・転移するケースもある。詳細は「転移」を参照

原因はわかっていないが、ウイルス説・カビ説・遺伝説などがある。小児白血病、絨毛癌などと並んで、悪性腫瘍の中では、比較的抗がん剤が効きやすいとされる。抗がん剤は活発な細胞を攻撃するため、一般に、がんの進行が早い悪性度の高いものほど抗がん剤に対する感受性が強く、進行の遅い低悪性度は感受性が低いとされている。
症状

頸部()、鼠蹊部(股の付け根)、腋窩(腋の下)などのリンパ節が腫大する(腫れる)ことが多い。リンパ節が1cmを超え肥大が進行したり、腫瘤の数が短期間で増加する場合は、慢性リンパ節炎、結核性リンパ節炎、亜急性壊死性リンパ節炎などがある。また、腫脹の原因が不明な場合は一度感染したEBウイルスが再活性化、病症が慢性化していないか調べることも重要である。

各臓器に発生するリンパ腫の場合にはレントゲン撮影内視鏡による検査で発見される場合もある。また全身の倦怠、発熱、盗汗(ねあせ)、体重の減少などがみられる場合もあり、これらの全身症状はB症状と呼ばれる。B症状は、予後不良因子とされている。

参考:研修医・医学部学生用 NETセミナー(悪性リンパ腫の診断)|金沢大学附属病院血液内科・呼吸器内科・細胞移植学講座(旧第三内科)(2008年12月27日時点のアーカイブ

進行すると全身の衰弱、DIC(播種性血管内凝固症候群)、多臓器不全などから死に至る。
検査・診断Diffuse large B-cell lymphoma.Diffuse large B-cell lymphoma. CD20 stain.

リンパ腫を疑う場合は触診血液検査、造影CT検査などを行い病変の部位を検索するが、確定診断はリンパ節生検を行うことにより病理組織分類や遺伝子異常の検索もおこなうことがある。針生検での診断は難しいため、リンパ節を切り取って組織を調べることが多い。
病期分類

リンパ腫の病期分類としては、次のAnn Arbor分類が世界的に用いられている。通常の癌と異なり、0期という分類はない。

Ann Arbor 分類病期解説
I期単独リンパ節領域の病変 (I)。

またはリンパ節病変を欠く単独リンパ外臓器または部位の限局性病変 (IE)。
II期横隔膜の同側にある2 つ以上のリンパ節領域の病変 (II)。
または所属リンパ節病変と関連している単独リンパ外臓器または部位の限局性病変で、
横隔膜の同側にあるその他のリンパ節領域の病変はあってもなくてもよい IIE)。
病変のある領域の数は下付きで、例えば II3 のように表してもよい。
III期横隔膜の両側にあるリンパ節領域の病変 (III)。
それはさらに隣接するリンパ節病変と関連しているリンパ外進展を伴ったり (IIIE)、
または脾臓病変を伴ったり (IIIS)、あるいはその両者(IIIES)を伴ってもよい。
IV期1 つ以上のリンパ外臓器のびまん性または播種性病変で、関連するリンパ節病変の有無を問わない。
または隣接する所属リンパ節病変を欠く孤立したリンパ外臓器病変であるが、離れた部位の病変を併せ持つ場合。
A およびB 分類(症状)

各病期は以下のように定義される全身症状の有無に従って、A またはB のいずれかに分類される。
発熱:38℃より高い理由不明の発熱。

寝汗:寝具(マットレス以外の掛け布団,シーツなどを含む、寝間着は含まない)を変えなければならない程のずぶ濡れになる汗。

体重減少:診断前の6 カ月以内に通常体重の10%を超す原因不明の体重減少。

※造血器腫瘍診療ガイドライン[2]より引用し改変。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:60 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef