この項目では、近代社会の制度について説明しています。武家社会の制度については「恩給 (武家社会)」をご覧ください。
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この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
恩給(おんきゅう)とは、恩給法(大正12年法律第48号)に規定される、官吏であったものが退職または死亡した後本人またはその遺族に安定した生活を確保するために支給される金銭をいう。なお、地方公務員については各地方公共団体が定める条例(恩給条例など)により支給され、退隠料と称されることもある。 近代恩給制度は1875年の海軍退隠令
恩給の歴史
敗戦後の1945年11月25日、連合国軍最高司令官総司令部は軍人(不具、廃疾の者を除く)および一部の軍人以外の者(黒龍会などの団体員、連合軍により解散させられた会社関係者、罷免された政府官吏、抑留・逮捕された者等)への恩給の支給を翌1946年2月1日まで禁止するように命令[1]。さらに1946年、連合国最高司令官指令に基づくポツダム勅令である恩給法の特例に関する件(昭和21年勅令第68号)により、重症者に係る傷病恩給を除き、旧軍人軍属の恩給は廃止された。その後、国会前座り込みを含む彼らの粘り強い運動の結果、1953年、1月17日閣議で軍人恩給の復活500億円を決定し、8月1日に恩給法の一部を改正する法律(昭和28年法律第150号)が公布され、8月1日に施行され、恩給が復活した。以後、旧軍人等に対する給付については、多くが恩給法本体ではなく恩給法の一部を改正する法律(昭和28年法律第150号)附則に規定されて運用されている。その後、公務員共済制度に移行(国家公務員は1958年、地方公務員は1962年)したため、恩給法は移行時点で既に退職していた公務員(旧軍人・軍属を含む)を対象とする法令となった。
なお、国民年金制度が誕生するのは1959年のことである(適用事務は1960年10月から、拠出制年金の開始に伴う保険料徴収は1961年4月から)。 恩給法第2条では、恩給の種類として次のようなものがある。 恩給の支給については、恩給法をはじめ恩給条例などに規定されている。 1958年と1959年の国家公務員共済組合法、1962年の地方公務員等共済組合法の改正に伴い、公務員(国家公務員・地方公務員)については共済組合の共済年金などが支給されることとなり、恩給については原則としてすでに恩給の受給権が発生している者に対し支給されるだけである。 恩給の支給に関する規定には、恩給法、 恩給法施行令(大正12年勅令367号)、恩給給与規則(大正12年勅令369号)、恩給給与細則(大正12年閣令第7号)、年金恩給支給規則(大正12年逓信省令92号)などがあった。 恩給法によれば、恩給には普通恩給、増加恩給、一時恩給、傷病賜金、扶助料および一時扶助料である。うち普通恩給、増加恩給および扶助料は年金であり、一時恩給、傷病賜金および一時扶助料は一時賜金である(2条)。 また恩給は、次の2つに分けられることもある。すなわち、 (1) 退職公務員への恩給、すなわち退隠料 - 普通恩給、増加恩給、一時恩給、傷病賜金など。 (2) 退職公務員の遺族への手当、すなわち遺族扶助料 - 扶助料および一時扶助料。 (1) 普通恩給を受ける権利を有する者は、文官、武官、教育職員(公立の学校および図書館の職員など)、警察職員、監獄職員および待遇職員(官国幣社の神職、判任官以上の待遇を受ける監獄の教誨師、教師など)である。 普通恩給は、原則として、文官在職15年以上、武官在職11年以上、教育職員在職15年以上で、失格原因なくして退職した者に支給される。 そのほか、それらの公務員が公務のため傷疾を受けまたは疾病にかかり、重度障害となり、失格原因なくして退職したときは、法定の在職年限に達しなくても普通恩給を支給する(46条1項)。 在職年限が上記法定の年限に達しても懲戒または懲罰処分によって退職した者または在職中禁錮以上の刑に処せられて失官した者は、失格原因による退職者とみなされる。 それはその失格事由の起った時期と相連続した在職期間について恩給を受ける資格を喪失する(51条)。 文官、教育職員、監獄職員および待遇職員の受ける普通恩給の年額は、退職当時の俸給年額の3分の1ないし2分の1である。 文官、教育職員および待遇職員の普通恩給の年額は、在職15年以上16年未満に対しては退職当時の俸給の150分の50に相当する金額とし、15年を増すごとにその1年に対し退職当時の俸給年額の150分の1に相当する金額を加えた額とする。在職40年を超える者に支給する恩給年額を定めるには、その在職を40年として計算する。公務のため傷疾を受けまたは疾病にかかり、重度障害となり、失格原因なくして退職した者に支給する普通恩給の年額は、在職15年の者に支給する普通恩給の額と同じである。 武官の受ける普通恩給の年額は、退職当時の階等およびその在職年限が異なるにしたがって一様でなく、その金額は、恩給法別表第1号表で定める(60条以下)。 (2) 増加恩給は、公務のため傷疾を受けまたは疾病にかかり、不具廃疾となり、失格原因なくして退職した公務員および准公務員のみが受ける恩給である。 公務員は、文官、軍人(武官)、教育職員、警察、監獄職員および恩給法24条に掲げる待遇職員をいう。 准公務員は、准文官、准軍人および准教育職員である。 それらの公務員は、文官15年、武官11年など法定の年数の間在職しなくても普通恩給を受け、そのほかになお傷痍または疾病による増加恩給を受ける。 公務員の増加恩給の年額は、恩給法別表第2号表で定められる(46条以下)。 (3) 一時恩給は、文官在職1年以上15年未満、下士官以上の軍人(兵卒を含まない)在職11年未満、教育職員在職1年以上15年未満、警察、監獄職員在職1年以上10年未満、待遇職員在職1年以上15年未満で、失格原因なくして退職した場合に支給される。 それらの者は、相当の期間在職したが、普通恩給を受ける資格を有していないが、退職の際に、一時賜金として一時恩給を与えるものである。 文官、教育職員、警察、監獄職員および待遇職員への一時恩給の年額は、退職当時の俸給月額に相当する金額に在職年数を乗じた金額である。 下士官以上の軍人(武官)に支給される一時恩給の額は、恩給法別表第4号表で定められる(67条以下)。 (4) 傷病賜金は、下士官以下の軍人(兵卒を含む)のみが受ける恩給である。 公務のため傷疾を受けまたは疾病にかかり、重度障害には至らなくてもこのために退職した下士官以下の軍人、または退職後1年内に公務のための傷痍、または疾病のために1種以上の兵役(例 現役、予備役、後備役)を免じられた下士官以下の軍人が傷病賜金を受けることができる。 それは一時賜金である。 その額は、恩給法別表第2号表で定められる(66条以下)。 傷病賜金は、普通恩給を受ける者または一時恩給を受ける者にも支給される。 ただし増加恩給との併給はされない。 (5) 扶助料および(6) 一時扶助料は、公務員の遺族に支給される恩給である。恩給法上の遺族とは「ア 配偶者 イ 未成年の子 ウ 父母 エ 成年の子(公務員の死亡当時から重度障害の状態にあり、生活資料を得る途のない者に限る。)オ 祖父母」でありこの順に受給者が決定する。 恩給種類別受領権者数は次のとおりである[2]。一時恩給及び傷病賜金は、退職時のみの給付であり。現在は実例はない。 (1) 普通恩給(3千人) (2) 傷病恩給〔増加恩給、傷病年金、特例傷病恩給〕(0.7千人)- 増加恩給は、必ず普通恩給が併給される。 (3) 普通扶助料(133千人) (4) 増加非公死扶助料(6千人) (5) 傷病者遺族特別年金(7千人) (6) 公務扶助料(6千人) (7) 特例扶助料(0.3千人) 2022年度(令和4年度)一般会計当初予算における恩給関係費予算は、総額1221億4937万7円[3]であり、内訳は次のとおりである[4]。
恩給の区分と種類
区分
文官恩給
軍人恩給
都道府県知事裁定恩給
年金方式による恩給
普通恩給
増加恩給
扶助料
一時金方式による恩給
傷病賜金
一時恩給
一時扶助料
恩給の支給
共済年金などとの関係
旧制度の恩給
恩給の種類
恩給受領権者および恩給額
恩給種類別受領権者
恩給関係費予算
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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