恋空
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『恋空』(こいぞら)は、美嘉ケータイ小説でありデビュー作。2005年から執筆が開始され[1]2006年には書籍化された。また2007年漫画化、映画化に続き、2008年にはテレビドラマ化もされた。サイト上で連載されていたころはノンフィクションを標榜していたが、2008年現在では「事実を元にしたフィクション」ということになっている[2]

携帯Webサイト魔法のiらんどに掲載され、同サイトのBOOKランキングで160日連続で首位を獲得した[3]。2006年10月7日に書籍化され、上下巻を合わせた初版発行部数は30万部。2007年1月の時点で上下巻を合わせた発行部数は140万部を突破、2010年には200万部を突破した[4]。ケータイ小説界においてYoshiの『Deep Love』やchacoの『天使がくれたもの』に次ぐものである。特に女子中高生や20代の女性に支持を得た[5]。物語の舞台は2005年12月までとされている。

2007年10月下旬にはヒロの視点から描かれたサイドストーリー『君空』が発売されている。

また、2016年12月下旬には『「恋空」10年目の真実 美嘉の歩んだ道』が出版。「恋空」執筆のきっかけ、書籍化への決意、「恋空」バッシングの真相など、今だから語れる美嘉の本音を赤裸々に綴った全文書き下ろしの作品秘話や、登場人物達の「手紙」も収録。

2018年12月下旬には新装版が発売された。

2021年11月時点でシリーズ累計発行部数は730万部を突破している[6]
あらすじ

主人公・田原美嘉は、身長が低いこと以外は普通の女子高生であった。ある日、ノゾムにPHSの番号を知られたことがきっかけで偶然ヒロ(桜井弘樹)と知り合って付き合うことになる。

ヒロは美嘉との交際に始めは本気ではなかったが、次第に本気になっていく。アヤとノゾムのカップルとダブルデートをしたり、一緒に授業をサボったりして高校生活を楽しんでいた。

そんな中、美嘉はヒロとの子供を妊娠する。美嘉は子供を出産することを決めたが、ヒロの元彼女・咲に強く押されて転び、美嘉は流産してしまう[注 1]。2人は大きなショックを受けるが、また強い絆で結ばれていく。

ところがある日、ヒロは美嘉に突然の別れを告げる。2人はそれぞれ別の相手と付き合うが、後に美嘉はヒロが末期のガンを患っており、“美嘉には幸せになってほしい”という願いから別れを選んだのだと知って、大好きな今の彼と別れ、ヒロの元へ走る。

適切な抗がん剤治療の甲斐もあり、ヒロは髪の毛が抜ける程度の副作用で奇跡的に3年も生きながらえるが、別れの時が来るのを食い止めることはできなかった。

しかし、彼の死後、美嘉は彼の忘れ形見を身篭っていることを知り、今度こそ産み、彼の分まで育てることを決心するのであった。
登場人物
田原美嘉(美嘉)
本作の主人公。一人称は美嘉。身長148センチと小柄である。中学生時代に彼氏がいたことがある。漫画版やドラマ版では脆くか弱い人物として描かれている。ヒロとの交際がきっかけで元カノの咲のけしかけでレイプされたり、妊娠後に流産させられたりと多くの不幸が襲う。病気が発覚し自暴自棄になったヒロから理由を伏せられて一方的に別れを告げられて一度破局する。その後、合コンで出会った大学生の優と付き合い、同棲までしていた。ヒロとの
水子の墓参りに行った際、ノゾムからヒロの現状と別れた本当の理由を伝えられる。優に事情を話すと背中を押される形で別れ、入院中のヒロの元に行き復縁する。その後は大学に通学しながらヒロの入院先に通って看病する。ヒロの病死後、川原で自殺を図ろうとするが、二羽の鳥を見て自殺することを踏みとどまる。ドラマ版の最終回では看護婦になっている描写がある。
田原勝冶
美嘉の父。厳しいが、すべて美嘉のためを思ってのこと。ドラマ版では彼にスポットがあたる場面が多かった。
田原安江
美嘉の母。子供を産み、母になることの意味を深く説く、娘思いな母親。
田原さおり
美嘉の姉。妹のことをよく考えている。美嘉によると「笑顔が胡散臭い」30代の彼氏がいる。
桜井弘樹(ヒロ)
通称ヒロ。美嘉の恋人。美嘉とは親友のノゾムを介して、自宅の固定電話越しに話して知り合う。イケメンで低く落ち着いた声の持ち主。色黒で178センチと高身長、染めた明るい茶髪に、耳には何個もピアスを開けて派手に装ったギャル男で、気が短く自己中心的で手が早い。他、気に入らない相手を濡れ衣を被せ退学に陥れるなど絵に描いたような不良で非行に走る場面が多い。美嘉に対しては咲と交際しながらも別れたと話し交際するなど最初は本気ではなかったが、次第に美嘉に惹かれていき、美嘉の恋人になる。しかし自分の命が長くないと知ると、自暴自棄になってシンナー乱交パーティーをやり、美嘉を悲しませないために美嘉との別れを選ぶ。音楽が好きで、愛聴曲は浜崎あゆみの「who…」、文化祭ではギターの弾き語りを披露している。高校卒業後は音楽の専門学校への進学を希望していたが、その後の闘病・入院のため断念している。悪性腫瘍に冒された後から病没するまで日記を書いていた。日記の内容で、美嘉を真剣に愛す描写が全体的にある。
桜井博一
ヒロの父。美嘉の父とは対照的に、美嘉の妊娠、さらにヒロが高校を辞めて働くことを了承していた。
桜井明美
ヒロの母。
桜井ミナコ
ヒロの姉。美嘉のよき心の支え。レディースの総長をしている。

ヒロの元彼女。背が高く、メイクがなじんでいる大人っぽい女子生徒として描かれている。ヒロが一方的に別れを告げられたことで彼女になった美嘉を妬み、妊娠している美嘉に危害を加え流産させたり、美嘉へのレイプをけしかけるたりと嫌がらせをした。中盤に再登場した時は妊娠していた。その後、立派に母親の役割を果たす咲の姿がうかがえる。
ノゾム
ヒロの親友で一番の理解者。お調子者。高身長で顔が整ったイケメン。いつも違う女生徒を連れている有名な「遊び人」。ヒロとは対照的に声のトーンが高い。隣のクラスの美嘉に興味を示し、アヤを通して美嘉のPHSの番号を教えてもらい、ヒロの家にある固定電話から酒に酔ってふざけて美嘉に電話をかけ、ヒロと美嘉を引き合わせた。密かに美嘉を想っていた描写がある。無免許であるにもかかわらず、車で美嘉を病院まで送ったことがある。ヒロが自暴自棄になりシンナー乱交パーティーをしていた際にヒロを止めずに一緒に参加しアヤにも無理矢理シンナーを吸わせたことがきっかけでアヤとは破局することになる。サイドストーリー『君空』には、ヒロ同様描かれている。また、漫画では番外編『NOZOMU』という物語がある。
アヤ
美嘉の親友でノゾムの彼女。スタイルが良く派手な美人だが、男運が悪く軽い男とばかり付き合ってしまう。ノゾムからせがまれて美嘉のPHSアドレスを教えてしまう等本人も流されやすく軽率な一面があり、また、男が絡むと豹変するタイプで美嘉に嫉妬して度々仲間外れにする。時には美嘉の頬を平手で叩く等気が強く攻撃的な人物でもある。美嘉と共にシンナー乱交パーティーに巻き込まれてノゾムにシンナーを無理矢理吸わせたことがきっかけで破局することになる。ノゾムと破局後も未練が残ったり、その後の恋愛もあまりうまくいっていない様子。高校卒業後は美嘉と同じ大学の同学部に進学し、その後も美嘉とは自分の異性関係が元の仲違いと関係修復を繰り返す。
ユカ
冒頭のみに登場する美嘉、アヤの友達。彼氏はいない様子。後半は登場しない。
タツヤ
美嘉の男友達。密かに美嘉のことを想っていたが、ある日それがヒロにばれてしまい、殴り合いの喧嘩をしてしまう。その後、ヒロはその腹いせに窓ガラスを割ってしまうが、ヒロたちによってその犯人になってしまい、高校を退学した。ドラマ版や漫画版では家の都合のために退学したことになっている。
サリナ
美嘉がヒロと別れた直後、ヒロがつき合いはじめた女。性格は悪く魔性の女。怒った美嘉によってヒロとの仲が悪くなり別れた。尚ヒロと交際していた際も別の男性と二股をかけていた。
ミヤビ
サリナと別れた後に付き合いはじめたヒロの彼女。学園祭のバンド演奏をきっかけに美嘉と仲良くなったが美嘉に元彼との思い出を無理に忘れる必要はないと助言していながら、密かにヒロとつき合っていた。他にもノゾムが美嘉にアプローチしていることを知り、まだノゾムに未練があるアヤと結託して仲間外れにしたりヒロと美嘉の子供を流産したことを知ると美嘉を人殺し呼ばわりするなど美嘉に対しては攻撃的な行動が目立つ。美嘉とヒロの間の子供の写真を捨てろと言ってヒロと口論になり、破局。
福原優
ヒロと別れた後に付き合い始めた、少し年上の美嘉の彼氏。初登場時大学生。ホスト系のイケメンで女子学生に人気がある。美嘉がヒロに未練があることを承知の上で交際を申し出た。関西出身。両親は離婚しており、大学進学以降は双方と疎遠。過去に6歳年上の人妻と不倫して彼女の家庭を崩壊させたことがあり、悔いている。美嘉の両親の離婚の危機を救う。美嘉を過去を知っても受け止め美嘉いわく「海のような人」で広い心で優しく包んでくれる。保育士志望。美嘉と同棲までしていたが、ヒロの病気を知って迷う美嘉を諦めヒロを支えるように後押しし別れを告げる。
ウタ
大学の入学式で知り合った美嘉の友達。派手なギャルで、明るく人懐っこい。八重歯が特徴。何かと真剣に美嘉の相談に乗ってくれる。美嘉と同じ機種の携帯電話をかなりデコレーションして使っている。初対面の美嘉に自分から声を掛けて気に入る。入学時はそれ以前から付き合っている社会人の彼氏がいたが、高校卒業前に彼の子を一度中絶しており、「次こそ妊娠したら産む」という約束を反故にされ二度目の妊娠中絶を機に関係が悪化し破局した。その翌年には大学を中退し、ジュエリーの店を開く夢を抱いてキャバクラに勤務している。雑誌に自分の記事が載る等、結構な売れっ子嬢となっている。
評価

若者特に10代から20代の女性に圧倒的な支持を得て書籍、映像作品共に高い評価を受けた。

性経験をかっこいいと思わせる小説を中学生に読ませるべきではないという意見や、一見すると不幸の連続のようだが実はそうでもなく、主人公の自己肯定に終始しているといった批判もあり、杉浦由美子は後者について、『恋空』は読んで元気を出すための自己啓発書のような消費のされ方をしたともいえると述べている[7]

社会学者宮台真司は自身のブログで本作品の映画版について、わざと短絡的につくった映画としか思えず年長者の自分からは理解できないとしたうえで、本作では時間の堆積が与える関係性が欠落し、そこには図書館で性交すれば妊娠して突き飛ばされれば流産する、というような脊髄反射だけが描かれており、単なる「死にオチ」の駄作では片づけられないとしている[8][9]


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