この項目では、身体的外傷について説明しています。心理的外傷については「心的外傷」をご覧ください。
外傷とは
身体を構成している組織の生理的な連続性が断たれた状態のこと。本項で詳述する。
機械的外力(力学的外力)による損傷。目視可能な損傷、比較的軽度な損傷などの俗称。
外傷
概要
分類および外部参照情報
ICD-9-CM ⇒800- ⇒999
MeSHD014947
外傷(がいしょう、英: injury, trauma)とは、外的要因による組織または臓器の損傷の総称。 通常、怪我と呼ばれ、外傷を負った者を負傷者と呼ぶ。なお、死亡した者と外傷を負った者とを合わせて死傷者と呼ぶ。 精神医学において、心理的外傷を単に外傷と呼ぶことがある。詳細は「心的外傷(トラウマ)」を参照 身体的外傷の場合、広義には、物理的あるいは化学的な外的要因による損傷全てを指すが、通常は機械的外力(力学的外力)による損傷を指す。 医学においては、損傷とは、身体を構成している組織の生理的な連続性が断たれた状態のことをいう。この定義においては機能障害、例えば脳震盪なども損傷に含まれると解釈されている。また胃潰瘍といった内因性のものも損傷には含まれる。 外傷とは損傷のうち外因によるものを指す。このうちISS>15の場合は重症外傷と定義され、特にAIS≧3の部位が2カ所以上ある外傷を多発性外傷と呼ぶ[1]。外因の種類は特に問題としていないため塩酸をかぶったというのも外傷となる。創傷という言葉があるがこれは損傷のうち機械的エネルギーにより形成されたものであり、外傷よりも言葉の意味が狭くなる。基本的に創とは開放性の損傷であり、傷とは非開放性損傷を示すことが多い。 基本的にはいわゆるキズを診て、内部の骨、特に骨折がないのか調べて、関節に損傷がないのかを調べ、その他の臓器傷害がないのかを調べるのが外傷患者の診方である。骨折とは骨の損傷であり、関節の損傷には捻挫、脱臼という言葉がある。脱臼とは関節面における関節頭と関節窩の相互関係が破綻(はたん)したものをいう。関節面の一部が接触を保っている場合は亜脱臼という。関節に外力が加わり、靱帯、関節包 外傷の種類には、以下のものがある。 損傷機転により、鋭的損傷と鈍的損傷に大別される。 創傷(Skin Lesion)は、皮膚の表面のけが(傷)を言う。 重症度を定量化する値として以下のものがある。 以下の方法は、致命的外傷・重症外傷が前提であり、一般的捻挫や切創は対象としていない。
概要
用語の定義
外傷の種類
物理的要因によるもの
機械的要因によるもの
1次元的なもの
切創
鋭利物(刃物など)による損傷。
裂傷
皮膚が2方向に引っ張られることによって裂ける損傷。
割創
裂傷が皮膚組織すべてを引き裂き、内臓・骨を露呈する損傷。
2次元的なもの
擦過傷
摩擦による損傷で、表皮のレベルまでしか達していないもの。
挫滅傷
摩擦による損傷で、真皮や皮下組織・それ以下のレベルまで損傷したもの。あるいは急激な圧力による同様な損傷。(急激でない圧力によるものは褥瘡と言う)
3次元的なもの
銃創
銃弾による損傷。
爆傷
爆発による損傷。ただし、爆傷は熱傷や衝撃による内部的損傷(いずれも下記)を伴う。殺傷用の爆発物による損傷であれば、多発性の銃創の病態も呈する。
杙創
鈍的な物体が人体を貫通する傷。
内部的なもの
内出血
骨折
捻挫
内臓破裂
熱的要因によるもの
熱傷(やけど)
凍傷
電気的要因によるもの
電撃傷
特に雷や空中放電によるものを雷撃傷と言う。
放射線要因によるもの
放射線被曝による損傷。原爆症など。
化学的要因によるもの
強酸・強塩基による損傷や、びらん剤(マスタードガス)による損傷
重症度評価方法
AIS(Abbreviated Injury Scale)
ISS(Injury Severity Score)(英語版)
RTS(Revised Trauma Score)(英語版)
重症外傷患者の診かた
病院前救護詳細は「外傷病院前救護ガイドライン」を参照
四肢外傷よりも救命処置を優先する。運動器の外傷は滅多に致死的にはならない。運動器の治療よりもバイタルの安定化を考える。
外傷をみたら骨折はあるものとして扱う。特に鎖骨より上の外傷がある場合や多発性外傷のある場合は頸椎損傷があるものとして扱う。
重大な骨折については、そのまま副子にあてて固定する。うかつに整復しようとすると神経、血管といった軟部組織を傷つけ、閉鎖骨折を開放骨折にしてしまう恐れがある。整復は病院での診療で行うべきである。
副子(シーネ)固定:ソフラットシーネ、アルフォンスシーネ、マジックギプスといったものがある。
病院での初期診療詳細は「外傷初期診療ガイドライン日本版」を参照
外傷部より末梢のPMSの確認をする。これはパルス(脈が触れるか、皮膚の色は大丈夫か)、運動、知覚の神経は保たれているかを確認することである。指の外傷の場合は爪の圧迫にてパルスの確認をする。
明らかな骨折以外にほかの外傷がないかの確認を常にする。特に手足の骨折を見逃しやすい。
下肢の大きな骨折がある場合は骨盤外傷の可能性がある。踵骨骨折があるときは脊椎圧迫骨折の可能性がある。また車にはねられた時はワドルの三徴というものが知られている。まずにバンパーによって下肢外傷が起こり、ボンネットで胸部外傷、最後に道路に転んで頭部外傷というプロセスをたどることが多い。この部位は入念に調べる必要がある。
四肢を動かして骨折部に音がした場合、その音を再現しようとはしない。X線写真で確認をするべきである。
骨折の症状は変形、短縮、腫脹であり患者は患肢を使おうとしないのが特徴である。触診をすると必ず骨折部に一致して圧痛がある。変形や短縮を見つける方法は左右の比較をすることである。骨折があってもその末梢が機能することは多い。機能障害は必発ではない。だから固定をしなければならないのである。
X線写真は最低で2方向は撮らないと外傷を評価したことにならない。
病院でのその後の診療