性教育
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教育ツールの一例。性教育の際に避妊法を説明するために使われる小冊子 (オーストリア、ウィーン、ヨーゼフシュタット地区博物館)

性教育(せいきょういく、英語: Sex education)とは、性別や性器性交生殖妊娠避妊[1])、男女の体のしくみ、恋愛感情や性的指向、性自認等の自己の性にかかわる事柄に対する考え方、それによって影響される態度や行動の仕方等のセクシュアリティ全般、人間と性について行われる教育全般を意味する言葉である[2][3]
概要

狭義には家庭や学校における教育を指し、広義には仲間同士のコミュニケーションや学び合い、様々なメディアを通しての情報のやり取り等も含まれる[3]

Leepson は性教育を、性的な反応と生殖に関する生理学的、心理学的、社会学的な様々な側面についての指導と捉えている[4]。Kearney は性教育を、「人間としての個人と社会制度としての家族を最もよく守ることができるような社会的に望ましい態度・習慣・個人的行動を、子どもや大人に身に付けさせるよう計算されたものであり、学校による包括的な(目標達成のための)活動指針を含む」と定義している。よって性教育は「セクシュアリティ教育」とも表現され、家族計画、生殖(受精、受胎、胚・胎児の発育から出産まで)に関する情報に加え、身体イメージ、性的指向、性的快楽、価値観、意思決定、コミュニケーション、交際、人間関係、性感染症とその予防方法、避妊法など、セクシュアリティのあらゆる側面に関する情報も含めた教育が盛り込まれている[4]

性教育の様々な側面は、生徒の年齢やタイミングに合わせ、子どもたちの理解力に応じて、学校で教育が行われることが適切だと考えられている[5]。Rubin と Kindendall は、性教育とは、単に生殖の話やどのように赤ちゃんを妊娠し誕生するかを教えるだけではなく、むしろ、子どもたちが現在と将来の生活に性をより有意義に取り入れるのを助け、子どもたちが完全に成熟するまでに、性のほぼ全ての面について、ある程度の基本的な理解を与えるという、はるかに幅広い範囲と目標を持っていると述べている[5]

心理学者の青野篤子は、「性教育において最も重要なことは、知識を与えることではなく、自分の意志に基づいた行動選択ができるようにすることである。」と述べている[3]
性教育の方向性

浅井春夫は、性教育を「セクシュアリティをめぐる社会の動向を反映し再生産するもの」と位置づけ、性教育の現状の方向性を3つ挙げている[3]
性道徳を教え込み性行動の抑制をめざす

罰則的対応で性行動の抑制をめざす

現状を踏まえて性的健康と性的自己決定の育成をめざす[3]

近年は 3 の方向性の性教育が求められているが、性について、セクシュアリティについて、何をどの年齢で教えるかについては議論が噴出している[3]。特に、「コンドームの装着方法、ピルの推奨、性的マイノリティに関する知識、快楽やコミュニケーションとしての性行為」などを性教育の中で教えることに対しては、「過激な性教育」「行き過ぎた性教育」という反発、性教育バッシングが少なくない[3]。日本、アメリカ、イギリスといった性教育に対する保守派の活動が盛んで、保守的な性教育が行われている国では、若者の性感染症や中絶が多いことが指摘されている[3]
性教育のフレーム

現在行われている性教育には様々なフレームがある。福永玄弥によると、東アジアで用いられてきたフレームには「純潔教育」「道徳教育」「性教育」「人権教育」「包括的セクシュアリティ教育」「男女平等教育」「ジェンダー教育」「ジェンダー平等教育」等がある[6]。性教育のあり方は流動的で多様であり、こうした様々なフレームに基づいて多様な性教育が行われ、性教育をめぐる闘争が行われてきた[6]
開始年齢

女子が思春期を迎える年齢は8歳から13歳、男子は9歳から14歳である[7]。保健の専門家たちは、どのような性教育が発達段階にふさわしいかについてコンセンサスを示しており、アメリカ疾病予防管理センターの思春期・学校保健部門のディレクター、キャスリーン・イーシアーは「どの年齢でも、自分の体に何が起こっているのかを理解することが大切」だと述べ、小学2年生までに、性器に関する用語を含め、医学的に正確な用語を使えるようにする必要があるという、コンセンサスに沿ったガイドラインを示している[7]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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