志賀高原(しがこうげん)は、上信越高原国立公園の一部である長野県下高井郡山ノ内町とその周辺一帯に広がる高原である[1]。
区域
志賀高原の区域を明確に定義したものはない。
長野電鉄の創設者神津藤平は、志賀山の麓付近のなだらかな平坦地および丘陵地一帯(大沼池、丸池、蓮池、琵琶池、木戸池周辺)を志賀高原と命名し[2]、スキー場などの開発を始めた。その後一の瀬地区や横手山地区にスキー場エリアが広がるとともに「志賀高原」を連想させる区域は広がりを見せた。
環境省が指定する上信越高原国立公園の「志賀高原地域」は24,986haあり、その範囲は概ね西側境界が志賀草津道路の登り口、五輪山頂、竜王山頂、北側境界が木島平村のカヤの平や野沢温泉村の上の平、栄村の鳥甲山頂、東側境界が中津川(魚野川)、南側境界が群馬県境の範囲としている[1]。
環境省は、志賀高原地域のうち志賀高原スキー場とこれに付随する宿泊施設等を含めた集団施設地区の区域面積を2,547.5haとしている。この区域には、草津・万座・浅間地域に属する渋峠スキー場の区域面積を含まない[3]。
ユネスコは、志賀高原エコパーク(生物圏保存地域)の核心地域として上信越高原国立公園の特別保護地区の一部である志賀山、鉢山、大沼池、四十八池周辺の691haを指定し、その周辺部にあたる上信越高原国立公園の特別地域・普通地域のうち山ノ内町、高山村の一部と群馬県の中之条町、草津町、嬬恋村の一部をあわせた17,569haを緩衝地域に指定しており[4]核心地域と緩衝地域を合わせた面積は18,260ha、さらに周辺の移行地域を加えると30,281haに及ぶ。
志賀高原漁業協同組合が管理する指定河川の流域(漁場)は、雑魚川および中津川の切明より上流部分(魚野川)の流域をさし、東はエラクボ平や群馬県境の苗場山湿原の南端を含んだ地域(流域面積約21,230ha)である[5]。よって本流域面積は、高天ヶ原以南となる角間川流域の志賀山や横手山などの区域面積を含んでいない。
山ノ内町観光連盟は、山ノ内町内を「湯田中渋温泉郷」「志賀高原」「北志賀高原」の三つの区域に分け、このうち志賀高原の区域をホームページ上の地図で青色(面積約17,500ha)で示している[6]。
北志賀高原は、一般的に志賀高原には含まれず[6]、竜王山山頂から東側部分などの一部区域を除き、上信越高原国立公園の志賀高原区域、志賀高原エコパークの緩衝地域、志賀高原漁業協同組合の水利権域のいずれの区域にも属していない。
南志賀高原は、高山村の上高井山田、七味、五色一帯の名称[7]であり、志賀高原には含まれない。
「志賀」の名称自体は、開発を主導した神津藤平の出身地である長野県内東信の北佐久郡志賀村(現・佐久市)に由来する。
地理
気候
ケッペン気候区分にもとづく志賀高原の気候はDfb(亜寒帯湿潤気候)に属する。
CLIMATE-DATA.ORG(データはオープンストリートマップから取得)による年間を通じた山ノ内町(標高1932m)の気候は以下のとおりである。
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月 志賀高原地域は、その中心に2035.7mの志賀山をはじめ、鉢山
気温(℃)-9.7-9.1-5.91.06.010.214.515.611.34.7-0.6-6.2
最高気温(℃)-5.5-4.8-1.26.211.414.318.319.615.09.13.9-2.0
最低気温(℃)-13.8-13.4-10.6-4.20.76.110.711.77.60.4-5.0-6.2
降水量(mm)75781061431702452712882761909779
標高が1000メートル以上と高いために、夏でも最高気温が30度を超える真夏日になることは基本的になく、熱帯夜になることはまずない。
例年10月中旬から下旬頃に初雪を観測し、11月に入ると本格的な冬を迎える。日本海側気候に属するが、日本海に近い他の豪雪地帯に比べると若干内陸に位置しているため、平均の最深積雪量は2メートル半ば程度である。なお、標高2100mを超える渋峠の観測点では、4メートル超の積雪を記録する年もある。標高が2000mを超えるエリアでは、気温がマイナス20度以下になることもある。
地形・地質
志賀高原の中核に位置する志賀山の噴出物等は下流の谷を埋め、その後の浸食を受けて幕岩等の急崖や潤満滝、鳴洞滝を形成している。火山活動の結果、形成されたカルデラでは凹凸が生じ、多数の池及び湿原が創生された。岩菅山の南東域では、魚野川が岩菅山南東側を開析して両岸が切り立ったV字峡谷が形成され、また、カヤの平は本地域では珍しい噴出物に起因した平坦な地形を呈している。
また、本地域は降雪量が多いことから、標高2000m前後の山地には降雪による地形が形成されている。例えば岩菅山稜線東側では積雪に起因するカール地形、鳥甲山東壁急斜面には雪崩で形成されるアバランチシュートが特徴的である。
志賀高原地域は、新第三紀中新世のグリーンタフと呼ばれる緑色凝灰岩類を基盤とし、その上位を第三紀鮮新世の高井火山岩類が被覆している。さらに第四紀更新世前?中期の火山活動による噴出物が火山の形状を一部で残して被覆する。噴出物の多くは安山岩質から石英安山岩質まで変化に富む。また、魚野川流域のうち、低標高域は本地域の基盤をなす第三紀中新世のグリーンタフと呼ばれる変質を受けた海底火山噴出物及び深海底堆積物が見られ、山体の高標高域は基盤岩を広く被覆する安山岩等の火山岩類である。
注目すべき地形・地質として、志賀山の噴火によって形成された渦巻き溶岩流のほか、溶岩が冷えて固まる際に生じる柱状節理があり、本地域西側を流下する角間川の浸食により露頭した急崖である幕岩のほか、岩菅山の山稜下部や、鳥甲山南東部の急崖である布岩や稜線の東側急斜面部に見られる。 志賀高原スキー場を取り囲む主な山は以下のとおり(国土地理院地形図に記載されているもの)。 山岳名称標高(m)備考※
山
横手山2307○三角点の標高は2305.0m。横手山スキー場は日本一標高の高いスキー場、横手山山頂ヒュッテには日本一標高の高い所で営業しているパン屋がある。