忍びの国
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忍びの国
著者
和田竜
発行日2008年5月28日
発行元新潮社
ジャンル歴史小説
日本
言語日本語
ページ数277
コードISBN 978-4-10-306881-5

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『忍びの国』(しのびのくに)は、和田竜による日本歴史小説
概要

天正伊賀の乱を題材とした小説。2005年に「忍者モノの脚本を書いてほしい」という依頼があり執筆したシナリオを原案にして書かれたものである[1]。 そのシナリオは2017年にオリジナル脚本として出版された。2009年、第30回吉川英治文学新人賞候補となった。同年、坂ノ睦の作画によりコミカライズされた同名作品が、『ゲッサン』(小学館)にて連載された。2017年大野智の主演で映画化された[2]

執筆にあたっては、天正伊賀の乱を伊賀側の視点で記述された「伊乱記」を中心に伊勢側の視点で書かれた「勢州軍記」などの史料も参考にしている[3]
あらすじ

天正4年(1576年)、北畠信雄は家臣の長野左京亮、日置大膳、柘植三郎左衛門と共に義父で元伊勢国司北畠具教討った。 同じ頃、伊賀国では国人の百地三太夫と下山甲斐の小競り合いの最中であり、絶人の忍びと謳われる無門が甲斐の次男である次郎兵衛を討ち果たしていた。 伊勢を落とした織田家と境を接することとなった伊賀は評定の末に織田家の軍門に下ることを決め、その決定を信雄に伝える使者として甲斐の長男平兵衛が選ばれた。 次郎兵衛が殺されても平然としている父に内心反発していた平兵衛は、信雄に伊賀攻めを進言する。 伊賀の出身で平兵衛と同様に伊賀者を「人間ではない」と唾棄していた三郎左衛門の進言もあって信雄は伊賀攻めを決め、手がかりとして伊賀の丸山城の再建をすすめることにした。 織田方から使者が来ると聞き、三太夫と甲斐はほくそ笑む。 彼らの目的は織田軍に勝ったという箔を付けることで下人たちの雇い口と収入を増やすことであり、平兵衛の裏切りは2人の策だったのだ。 信雄が抱える最大の戦力である大膳は旧主である具教を弑した事で信雄との間に遺恨があり、また伊賀の忍びを武士以下と見下していたため参戦を拒む。 三郎左衛門は銭に目がなく情のない伊賀者の習性を過信し、織田方が供出した大金に三太夫たちが飛びついたと思い込んでいた。 これらのことも全ては伊賀の忍びが得意中の得意とする心を読み操る「無門の一関」なる業によるものであった。 天正6年(1578年)、計画通り織田方の資金で城を再建し、三郎左衛門が伊賀者を城に閉じ込めて攻めようという目論見の上を行き、完成させたところで三太夫は城を焼き払い、織田方に痛撃を与えた。

天正7年(1579年)、とうとう織田方が攻めてくるという。自衛のための戦なので銭は出ないということに下人たちは反発し、半数が逃散すると決めた。その状態では勝てるわけはなく、戦自体を止めるしかないと考えた無門は織田方に直談判に行くが、大膳との談判はうまくいかず、田丸城に忍び込み信雄の寝込みを襲うが失敗。あまつさえ不参戦を決め込んでいた大膳に「無門の一関」を悟られ、信雄との不和を利用されていた事に気づいた大膳は信雄と和解し参戦に転じてしまう。 1万余の軍勢での伊賀攻めが始まり、数の上でも装備の上でも劣るうえに大膳の剛勇も加わり、伊賀者は劣勢に立たされる。 そのころ他の下人と一緒に伊賀を出ようとしていた無門は「なぜ逃げねばならぬのか」と不機嫌になるお国の様子を見て思い直し、ひょんなことで入手した北畠家の家宝の茶入「小茄子」を元手に「雑兵首には十文、兜首には十貫、信雄が首には五千貫を払う」と下人たちに伝え、形勢逆転をはかる。 銭が出るとわかった下人たちの勢いはすさまじく、なりふり構わない戦いぶりに織田軍は総崩れとなり伊勢へと敗走した。 田丸城に侵入して信雄を討とうとした無門だったが、平兵衛に阻まれる。「川」という伊賀の決闘手段で平兵衛を倒したが、決闘の前に平兵衛が語った話で十二家評定衆への怒りを募らせていた無門は、信雄のことはいったん置いて伊賀に取って返した。 そして十二家評定衆を糾弾し刃を向けた。 「無門を討ち取った者は生涯夫役を免じる」という下知が出され無門は下人たちに囲まれる。その時お国が無門をかばって命を落とし、自らの愚かさに気づいた無門は伊賀から姿を消した。

三太夫の思惑通り、天下の織田軍に勝利したということで下人の雇い口は増え価値も高騰した。 だがそれも長くは続かなかった。 織田信長は天正9年(1581年)、4万4千余の軍勢で伊賀に攻め寄せた。 伊賀者は老若男女関係なく討たれ、伊賀の国は壊滅。 そこには安土城の信長の元へ単身忍び入り、「伊賀を滅ぼさねばおのれの命はない」と焚き付けた無門の策があった。
登場人物
伊賀方
無門(むもん)
百地家の下人。「その腕絶人の域」と評されている伊賀一の忍び。
下山平兵衛(しもやま へいべえ)
下山家の長男。わが子を殺されても平気でいる父を見て伊賀者の人情風俗に絶望し信雄に伊賀攻めを進言する。
百地三太夫(ももぢ さんだゆう)
伊賀の国喰代の地侍。十二家評定衆のひとり。
木猿(きさる)
百地家の下人。土遁の名手。元の主は柘植三郎左衛門。
文吾(ぶんご)
百地家の下人。後の石川五右衛門
下山甲斐(しもやま かい)
伊賀の国上比奈知の地侍。平兵衛の父親。十二家評定衆のひとり。実は平兵衛を裏切らせるために彼の弟である自分の息子の暗殺を画策した。
下山次郎兵衛(しもやま じろべえ)
下山家の次男。
音羽半六(おとわ はんろく)
伊賀の国音羽の地侍。十二家評定衆のひとり。
鉄(てつ)
鍛冶の少年。百地家に関わる鉄砲以外の武具製造を一手に引き受けている。
お国(おくに)
無門の想い女。安芸の国の武家娘。無門にさらわれて伊賀に来たが「四十貫を稼げるようになるまでは夫婦の契りは結ばない」と無門を家から叩き出す。
織田方
織田信雄(おだ のぶかつ)
織田信長の次男。義父北畠具教を暗殺し伊勢を手中にする。有能とは言い難い人物であり、自身の非才に対する自覚と劣等感に苦しんでいる。
日置大膳(へき だいぜん)
信雄の家臣。六尺を超える偉丈夫で弓の名手。北畠具教の元家臣。具教の暗殺に加担させられたことなどから信雄と折り合いが悪い。
長野左京亮(ながの さきょうのすけ)
信雄の家臣。北畠具教の元家臣。背丈は五尺そこそこでありながら四尺余りの大太刀を扱う怪力の持ち主。
柘植三郎左衛門(つげ さぶろうざえもん)
信雄の家臣。棒手裏剣を操る。かつては十二家評定衆だった。
北畠具教(きたばたけ とものり)
北畠家当主で、伊勢国司。
凛(りん)
北畠具教の六女で信雄の妻。
書誌情報

和田竜『忍びの国』
新潮社

2008年5月28日発売、ISBN 978-4-10-306881-5


同文庫版〈新潮文庫

2011年3月1日発売、ISBN 978-4-10-134977-0


漫画版

和田竜(原作)・坂ノ睦(作画) 『忍びの国』 小学館ゲッサン少年サンデーコミックス〉、全5巻。


2009年12月12日発行 ISBN 978-4-09-122108-7

2010年4月12日発行 ISBN 978-4-09-122237-4

2010年9月10日発行 ISBN 978-4-09-122558-0

2011年3月11日発行 ISBN 978-4-09-122739-3

2017年6月17日発行 ISBN 978-4-09-127723-7


脚本

2017年6月15日発売、ISBN 978-4-10-306884-6


映画

忍びの国
MUMON ? THE LAND OF STEALTH
監督
中村義洋
脚本和田竜
原作和田竜『忍びの国』
製作原藤一輝
辻本珠子
下田淳行
藤井和史
製作総指揮藤島ジュリーK.
ナレーター山ア努
出演者大野智
石原さとみ
鈴木亮平
知念侑李Hey! Say! JUMP
マキタスポーツ
平祐奈
満島真之介
でんでん
きたろう
立川談春
國村隼
伊勢谷友介
音楽見優
主題歌嵐「つなぐ
撮影相馬大輔
編集上野聡一
制作会社ツインズジャパン
製作会社映画『忍びの国』製作委員会


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