必須脂肪酸
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「ビタミンF」はこの項目へ転送されています。重松清の小説については「ビタミンF (小説)」をご覧ください。

必須脂肪酸(ひっすしぼうさん、essential fatty acid)は、体内で他の脂肪酸から合成できないために摂取する必要がある脂肪酸である。ヒトを含めた後生動物には自身の生理代謝過程に必須であっても、自身では合成できない脂肪酸の分子種がいくつもあることが多い。それらを合成する他の生物を食物として摂取する必要がある。

ヒト及びその他の動物にとっては、多価不飽和脂肪酸のうち、ω-6脂肪酸リノール酸ω-3脂肪酸α-リノレン酸が必須脂肪酸であり必要量が定められる。広義にω-6脂肪酸とω-3脂肪酸が必須脂肪酸と呼ばれることがある。その変換された脂肪酸も、正常な機能に必要不可欠であるためである。そのため、DHAとEPAについては推奨量が議論されてきた。

ω-6脂肪酸

リノール酸 狭義の必須脂肪酸

γ-リノレン酸アラキドン酸

ω-3脂肪酸

α-リノレン酸 狭義の必須脂肪酸

エイコサペンタエン酸 (EPA) やドコサヘキサエン酸 (DHA)

目次

1 発見

2 生化学

3 必要摂取量

3.1 バランス

3.2 バランスに対する食事要因


4 食物中の必須脂肪酸

5 関連項目

6 出典

7 参考文献

8 外部リンク

発見「脂肪#発見」も参照

20世紀前半の半ばまで、食物中の脂肪は必須栄養素とまではみなされなかった[1]

物質が特定される以前、必須脂肪酸はビタミンのビタミンFだと仮定されていた。

1929年にはミネソタ大学の植物生理学者ジョージ・オズワルド・バー(George Oswald Burr)が、脂肪のない食事によってラットで欠乏症状が起こり、ω-6系の多価不飽和脂肪酸であるリノール酸によって欠乏症が回復するのを確認し、必須栄養素だと報告した[1]。1940年代までにリノール酸が必須脂肪酸だと示されていった[1]。1938年にはヒトでの研究が実施されたが、1968年の長期実験まで確実だとみなされず、1970年代にはヒトでもリノール酸が必須栄養素だと明らかになった[1]

また1931年にジョージ・オズワルド・バーは、ω-3系のαリノレン酸がラットで合成されなかったことを報告し、これも必須脂肪酸だと結論した[1]。しかし、欠乏症実験にてリノール酸と競合する結果が確認されるため、長い間αリノレン酸でも確実だとみなされなかった[1]。1953年には豚の脳からDHAが生成され、1960年にはαリノレン酸がDHAに変換される代謝経路が発見された[1]。DHAが神経伝達に重要だと提唱され網膜からも発見され、EPAの血小板凝集を阻害するプロスタグランジンE3への変換も報告されたが、1970年代初頭までω-3脂肪酸はあまり関心がもたれなかった[1]

1976年にCuthbertonが粉ミルクの必要成分としてリノール酸のみが必須だと主張したが、Crawfordは異議を唱え、1978年には世界保健機関(WHO)と国際連合食糧農業機関(FAO)が、脂肪に関する専門部会でαリノレン酸の必須性を確定した[2]。1982年に、ラルフ・ホルマンが、αリノレン酸の摂取が増加すると、血中のDHAが増加することを確認しヒトでαリノレン酸が必須だと裏付けた[1]

1978年に、DHAとEPAが豊富な海洋性脂質の摂取の多いグリーンランドのエスキモーに心筋梗塞の発生率が低いと報告され、脂質研究の最前線ではω-3脂肪酸が重要な話題となった[1]


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