心臓
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音楽アルバムについては「心臓 (KREVAのアルバム)」を、数学分野のt構造の心臓については「t構造(英語版)」をご覧ください。

心臓
ヒトの心臓
ラテン語Cor
英語Heart
器官循環器
動脈大動脈
肺動脈
冠動脈
静脈上大静脈
下大静脈
肺静脈
神経心臓神経叢
心臓神経節
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心臓(しんぞう)とは、血液循環の原動力となる器官のこと[1]血液循環系の中枢器官のこと[2]
概説

心臓は特に脊椎動物のもつ筋肉質の臓器であり、律動的な収縮によって血液循環を行うポンプの役目を担っている[3]。あるいは、環形動物軟体動物節足動物における似たような役割の構造である。

ある程度規模の大きな多細胞動物において、細胞代謝を維持するには常に血液によってエネルギー源や酸素を受け取り、老廃物二酸化炭素を運び出す必要がある。そのため、心臓が機能を停止することは生き物の存続条件の一つである代謝・呼吸ができなくなることである。心臓が止まっただけでは個体を意味せず、心臓が再度動き出す可能性がある。
構造
軟体動物

軟体動物は、頭足綱以外は開放血管系という循環器系を持ち、心臓には動脈血と静脈血を分ける壁を持たない[4]。また、一部の種はが心室を貫く構造を持つが、これがどのような機能に益すのかはっきりしない[4]腹足綱は古腹足類やアマオブネの仲間の多くは2心室1心房を持つが、その他は1心室1心房である。前者は双心型、後者は単心型という[5]カサガイの仲間には、囲心嚢の中に筋肉の球(動脈球)を持つものがあり、これは脈動の補助をすると考えられている[5]。頭足綱はほぼ閉鎖血管系であり、心臓の形はオウムガイ類のみ2心房で、他は1心房である。一方でオウムガイ類以外はえらの根本に鰓心臓という部分があり、ここも収縮を起こして血流を生じさせている[6]二枚貝[7]無板綱多板綱の心臓は2心房1心室であり[8]単板綱は4心房1心室という特殊な心臓を持つが、小さな種では心臓を持たないものもある[8]
脊椎動物

脊椎動物の心臓は、以下のような構造からなっている。
心室とは、収縮することで心臓外に血液を拍出する器官。

心房とは、心室の上流にあって、心室に入る前の血液を貯留し、心室へ血液を送り込む器官。

一心房一心室
魚類[3]の心臓に見られる構造である。一対の心房と心室から静脈血酸素に乏しい血液)がエラへ送られ、エラからそのまま全身を循環して心臓へ戻ってくる。
二心房一心室
両生類[3]や大半の爬虫類にみられる構造。全身から戻ってきた静脈血とから戻ってきた動脈血(酸素に富んだ血液)が別々の心房を通じてひとつの心室に入り、混合した上で肺・全身に送り出される。脊椎動物が陸上に上がる際、呼吸手段はエラから肺に移行したが、肺はもともと食道から発生した臓器であり、全身循環の支配下にあった。これを、還流路だけでも他の臓器から独立させた形である。動脈血と静脈血が混合されるのは一見非効率的なようであるが、粘膜呼吸もする両生類・爬虫類にとってはむしろフレキシブルな構造であるとも言える。また、水生のカメを除く爬虫類では粘膜呼吸はほとんど見られず、動脈血と静脈血の混合も巧みに防止されていることがわかっている。ほとんどの爬虫類では二心房一心室型の心臓は、潜水時など肺呼吸を一時停止している間は肺循環を停止してバイパスを生み出すことによって循環の効率化を図るシステムとして機能していると考えられている。なお、両生類の心室は完全に一つであるのに対して爬虫類の心室には心室を二つに分離する不完全な壁がある。
二心房二心室
哺乳類鳥類、および、ごく一部の爬虫類にみられる、二対の心房・心室系からなる4つの中空部を持つ構造。これらの容積はほぼ同じである[3]。呼吸は両生類と異なり肺のみで行い、また内温性を維持するために高い代謝率を保たなければならず、爬虫類のように肺呼吸を一時停止するゆとりがないため、動脈血を駆出する左心系と静脈血を肺に駆出する右心系が完全に分離されている(心筋を栄養した血管系の静脈など、一部左心系に戻るものもあり、シャント(短絡)と呼ばれる)。
ヒトの心臓
位置

ヒトの心臓の位置は胸腔内の縦隔下部ほぼ中央にあり[9]心膜が包む形で形成される心嚢の中にあり、前胸壁と食道が挟んでいる[3]。大きさは握りこぶし程度である[9]。形はおおまかに逆円錐状で、その軸は左斜め側に傾いている。そのため心臓の下部は左側に傾き、肋骨の左側第5肋間から鎖骨中線の間に位置する[9][注釈 1]。心臓は、上部の太く大きな血管があり右後方に尖る[10]部分を「心底」、下部の左前方に[10]尖った部分を「心尖」と言う[9]。成人の場合、心尖は第5肋間・正中線から左に7-9cmの場所にあり、ここに触れると拍動を確認できる[10]
構造ヒトの心臓の構造
血液の流れは白い矢印で示されている

心膜は繊維性部分と漿膜性部分がある。繊維性心膜(壁側膜)は臓器間を埋める繊維性結合組織の一部でできており、これによって心嚢は、前面で胸骨の裏と、底で横隔膜の中央にある腱の真ん中上部と、それぞれしっかりと固着されつつ、内側では心筋肉と接触している。漿膜性心膜(心外膜・臓側膜)は繊維性心膜の内側にあり、心嚢を内張りする役目を負っている。漿膜性心膜の内側には心膜腔というすきまがあり、内側には液体の漿液(心膜液)が分泌されている。この液は、心臓の拍動から生じる摩擦を低減する効果を持つ[9][10]

心臓を動かす厚い筋肉[3]心筋と呼ばれ、骨格筋と同様にアクチンとミオシンのフィラメントが滑走して動く横紋筋でありながら、多くの枝分かれ構造を持ち互いに境界膜(介在膜)で電気的に連絡し、まるで1つの大きな細胞のように同期する機能的合胞体となっている。この心筋は心臓を螺旋状に取り囲んでいる[10]。心筋は伸展の大きさに対応して強い収縮を行い、流入する血液が多くなると強く縮んで拍出量を増やす。これはスターリングの法則と呼ばれる[10]。なお、骨格筋と異なり不随意筋である。

内臓の配置を決める役目を持つ細胞群には、6μm (6/1000 mm)程の長さの「線毛」と呼ばれる細長い細胞の突起があり、この線毛は常に時計回りに回転運動をしている。この動きにより体液に流れができ、線毛の根元にある「情報伝達物質」が一定の方向に流れていく。心臓に限ると、この情報伝達物質が付着した部分が「左」側となる。心臓や他の臓器の左右が決まると、線毛を持つ細胞群の役割は終わり、消失する。この仕組は、東京大学で分子細胞生物学を研究する廣川信隆のグループにより、1998年に世界で初めて解明された。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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