心筋梗塞
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心筋梗塞

心筋梗塞の図
閉塞 (1) した先の心筋 (2) が壊死している
概要
診療科循環器学
分類および外部参照情報
ICD-10I21-I22
ICD-9-CM410
DiseasesDB8664
MedlinePlus000195
eMedicinemed/1567 emerg/327 ped/2520
Patient UK心筋梗塞
MeSHD009203
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心筋梗塞(しんきんこうそく、: myocardial infarction)は、虚血性心疾患の一つ。心臓の筋肉細胞に酸素や栄養を供給している冠動脈に閉塞や狭窄などが起きて血液の流量が下がり、心筋虚血状態になり壊死してしまう症状。通常は急性に起こる「急性心筋梗塞(AMI)」のことを指す。心臓麻痺心臓発作: heart attack)とも呼ばれる。

心筋が虚血状態に陥っても壊死にまで至らない前段階を狭心症といい、狭心症から急性心筋梗塞までの一連の病態を総称して急性冠症候群(acute coronary syndrome, ACS)という概念が提唱されている。
発症形式心臓発作のメカニズムを説明するビデオ。日本語字幕付き英語。

急性心筋梗塞 (AMI:Acute Myocardial Infarction) :発症から3日以内

亜急性心筋梗塞 (SMI:Subsequent Myocardial Infarction):発症から30日以内

陳旧性心筋梗塞 (OMI:Old Myocardial Infarction) :発症から30日以上

原因

冠動脈の血流量減少は、主に動脈硬化などの何らかの要因によって狭窄(きょうさく)を起こすことによる。この要因には冠動脈部分での粥種の破裂 (plaque rupture) や攣縮 (spasm) が深く関係するが、他にも梅毒性動脈炎が起こす冠動脈起始部狭窄、解離性大動脈瘤が冠動脈に進展して起こる閉塞、川崎病などによる冠動脈での血栓塞栓)形成などもある[1]

RTIインターナショナル(英語版)の研究者が現在までの発見をまとめており、血液型O型では心筋梗塞に、ほかの血液型より44%なりにくい[2]。こうした研究は米国心臓協会のサイトに掲載されていたこともあり、20年以上の研究調査でO型の男女のリスクが低かった[3]
症状

強い胸部の痛みや苦悶感が生じ15分以上持続するが、虚血状態が解消されなければ数時間以上続く。顔面蒼白になり、冷や汗、徐脈、血圧の低下、脈拍の上昇などを伴い、意識不明に陥ることもある[1]。そして、最悪の場合は、死に至る恐ろしい病である。

左心不全を伴う症例が多く、湿性ラ音が広範囲で聴取できるようになる。Killipらはこのラ音所見を重症度の判定表にまとめ、これはKillip表と言う[1]

75歳以上の高齢者や糖尿病などを併発している場合、患者の20%程度で痛みを伴わない無痛性心筋梗塞をおこすことがある[4][5]。糖尿病患者では心筋梗塞を発症した患者の21%から41%が無痛性とされ、糖尿病を併発していない場合は、6%から15%との研究がある[6]。痛みを感じなくなる原因は、脳血管障害[7]や糖尿病性神経障害による自律神経障害が多いと考えられている。自覚症状がないまま心筋梗塞の病態が進行するため、発見時には既に重篤な状態(死亡も含む)となっている場合も多い[8]
発病因子

喫煙

高コレステロール血症(特に高LDLコレステロール血症)

糖尿病

高血圧

狭心症・心筋梗塞の家族歴

加齢(男性45歳以上、女性65歳以上)

ストレス

肥満

男性女性

痛風高尿酸血症

血液透析

高ホモシステイン血症

歯周病

検査
心電図

心電図 (ECG) の所見としては ST上昇[1]や異常Q波が特徴的であり、これがどの誘導肢に現れるかで梗塞部位や責任血管部位の診断が行える。もちろんミラーイメージの ST低下も含む[1]。hyper acute T は臨床所見と組み合わせて判断する。

障害部位ST上昇誘導ST下降誘導(Reciprocal image)責任血管
中隔(Septal)V1, V2(?)左冠動脈前下行枝(LAD)
前壁(Anterior)V3, V4(?)左冠動脈前下行枝(LAD)
前壁中隔(Anteroseptal)V1, V2, V3, V4(?)左冠動脈前下行枝(LAD)
前壁側壁(Anterolateral)V3, V4, V5, V6, I, aVLII, III, aVF左冠動脈前下降枝(LAD)、左冠動脈回旋枝(LCX)、左冠動脈主幹部(LMT)
広汎前壁(Extensive anterior)V1, V2, V3, V4, V5, V6, I, aVLII, III, aVF左冠動脈(LCA)
下壁(Inferior)II, III, aVFI, aVL右冠動脈(RCA)、左冠動脈回旋枝(LCX)
側壁(Lateral)I, aVL, V5, V6II, III, aVF左冠動脈回旋枝(LCX)、左冠動脈主幹部(LMT)
後壁(Posterior)V7, V8, V9V1, V2, V3, V4後下行枝(PDA)
右室梗塞(RV)II, III, aVF, V1, V4RI, aVL右冠動脈(RCA)

心臓カテーテル検査

心臓カテーテル検査とは冠動脈の狭窄・閉塞を造影剤により描出する。侵襲を伴う検査でもあるが、病変描出に続いて、血管内治療である経皮的冠動脈形成術を行うことができる利点がある。
心臓超音波検査

心臓超音波検査(エコー)は、ごく軽度の心筋梗塞を検出する上で心電図や血清生化学検査に勝る簡便で最も有用な検査であり、心筋の壁運動低下を検出することにより診断する[1]。ただし、心尖部や下壁に限局した梗塞の場合など、明らかな壁運動異常(asynergy)を検出しにくい場合もある。さらに副側血行路がある場合壁運動異常(asynergy)を呈さず、心電図も異常を示さず診断が困難になる場合も多々ある。

心筋梗塞による MR(僧帽弁閉鎖不全症)の有無の診断にも役立つ。三尖弁の圧格差(TRPG)を計測することで肺動脈圧を推定することが可能であり、心不全の評価にも役立っている。すでに壁運動低下部位が薄くなって輝度が亢進していればそれは陳旧性病変である。
Swan-Ganzカテーテル検査

Swan-Ganzカテーテル検査では、静脈から差し込んだカテーテルを右心房・右心室を経由して肺動脈まで進め、ここでバルーンを用いて間接的に左心房の圧力(肺動脈楔入圧)を計測する方法が取られる。また、先端から冷水を注入してセンサーを用いた温度測定を行い、血流の量を知る方法もある[1]

これらで得た肺動脈楔入圧(mmHg)と心係数(CI、心拍出量/体表面積、L/分/m2)で分類したものがForresterの分類である。心係数2.2以下を末端循環不全、肺動脈楔入圧18以上を肺鬱血状態とし、それぞれの区分から重症度を判定し投与する医薬品の種類や治療法を定めている[1]
心筋シンチグラフィー

心筋梗塞はないか、血流の少ないところはないか、心筋は正常に動いているか、心臓の働きを果たしているかなどを調べる検査。シンチグラフィーとは、体内に投与したグルコースなど放射性同位体から放出される放射線を検出し、その分布を画像化したもの[1]。陽電子放射型断層撮影法 (PET) と呼ばれる[1]画像診断法の一つ。腫瘍(がん)や各種臓器の機能の診断にも使われる。また、核種の組織親和性を利用して、異所性胃粘膜の検出、甲状腺や唾液腺の検査にも使われる。

心筋梗塞の部位はテクネチウム-99mピロリン酸を取り込み、逆に正常な心筋はタリウム-201を取り込む性質を持つ。これを利用しシンチグラフィーを行えば心筋梗塞の進展具合を確認できる[1]
冠動脈造影CT

冠動脈造影
CT
造影剤により冠動脈の形態を描出できる。64列マルチスライスCTによる冠動脈病変の描出は、感度 88%、特異度 96%、陽性的中率 79%、陰性的中率 98% との報告がある[9]


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