メンタルヘルス(英: mental health)とは、精神面における健康のことである。精神的健康、心の健康、精神保健、精神衛生などと称され、主に精神的な疲労、ストレス、悩みなどの軽減や緩和とそれへのサポート、メンタルヘルス対策、あるいは精神保健医療のように精神障害の予防と回復を目的とした場面で使われる。
世界保健機関による精神的健康の定義は、精神障害でないだけでなく、自身の可能性を実現し、共同体に実りあるよう貢献して、十全にあることだとしている[1]。精神的健康は、基本的人権であり、それを最大限に享受するという狙いから精神保健法が制定される[2]。それら法においては、精神障害を人権に配慮して治療し、また予防し、そして社会共同体の中へと回復し、精神的健康を維持し増進していくことがその方法として宣言されている。
精神障害は生産性低下・病欠・失職を引き起こす大きな社会的負担であり、任意の時点で常に成人人口の10%、軽?中等症では就業年齢人口の15%が罹患している[3][4]。経済協力開発機構(OECD)は精神的健康に関わる直接的・間接的コストはGDPの4%以上と推定しているが、しかし未だ多くの国の医療制度において重点が低い現状であり、精神医療サービスの成果や質を正確に把握できていないと述べている[4]。
年齢別の治療受給率(OECD6カ国の平均)[5]18-24歳25-34歳35-44歳45-54歳55-64歳
罹患率23%20%20%21%20%
治療受給率8%11%14%16%17%
(オーストリー、豪州、デンマーク、ノルウェー、米国、英国)
WHO World Mental Health Surveyによる 12ヶ月有病割合
(各国サンプリング調査、2001-2003年)[6]不安障害気分障害衝動制御障害物質乱用総計
コロンビア10.0%6.8%3.9%2.8%17.8%
メキシコ6.8%4.8%1.3%2.5%12.2%
米国18.2%9.6%6.8%3.8%26.4%
ベルギー6.9%6.2%1.0%1.2%12.0%
フランス12%8.5%1.4%0.7%18.4%
ドイツ6.2%3.6%0.3%1.1%9.1%
イタリア5.8%3.8%0.3%0.1%8.2%
オランダ8.8%6.9%1.3%3.0%14.9%
スペイン5.9%4.9%0.5%0.3%9.2%
ウクライナ7.1%9.1%3.2%6.4%20.5%
日本5.3%3.2%1.0%1.7%8.8%
中国(北京)3.2%2.5%2.6%2.6%9.1%
中国(上海)2.4%1.7%0.7%0.5%4.3%
目次
1 概要
2 定義
2.1 世界保健機関
2.2 日本の精神保健福祉法
2.3 行動的健康
2.4 その他
3 精神保健政策
3.1 受診までの期間
3.2 反スティグマ・キャンペーン
4 分野
4.1 職場
4.2 児童・青年
4.3 老年期
4.4 個人における精神の充足
5 各国の精神保健
5.1 WHOの指針
5.2 イギリスの精神保健
5.3 イタリアの精神保健
5.4 オーストラリアの精神保健
5.5 カナダの精神保健
5.6 フィンランドの精神保健
5.7 フランスの精神保健
5.8 スウェーデンの精神保健
5.9 ノルウェーの精神保健
5.10 日本の精神保健
5.11 シンガポールの精神保健
5.12 途上国における精神保健