復員殺人事件
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復員殺人事件
(樹のごときもの歩く)
作者
坂口安吾
補筆: 高木彬光
日本
言語日本語
ジャンル長編小説推理小説
シリーズ巨勢博士シリーズ
発表形態雑誌連載
初出情報
初出『座談』1949年8月号 - 9月号(第3巻第6号 - 第7号)、1950年1月号 - 3月号(第4巻第1号 - 第3号)
宝石1957年8月号 - 1958年2月号、4月号
刊本情報
刊行1958年、東京創元社
シリーズ情報
前作不連続殺人事件
次作選挙殺人事件
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『復員殺人事件』(ふくいんさつじんじけん)は、坂口安吾による未完長編探偵小説。のち、高木彬光によって完結編が補筆された。坂口安吾の探偵小説としては『不連続殺人事件』に続く第2作であり、『不連続殺人事件』に登場した巨勢博士が再び探偵役として登場する。

文藝春秋新社の雑誌『座談』第3巻第6号 - 第7号(1949年昭和24年〉8月 - 9月)、第4巻第1号 - 第3号(1950年〈昭和25年〉1月 - 3月)に連載されたが(1949年10月号から12月号までは休載)、掲載誌廃刊のため第19章までで中断された[1]。連載時には『不連続殺人事件』同様、懸賞金つきの読者への挑戦が出されていたが、読者へのヒントが出揃う前に中断されている。

その後、執筆の再開がなされぬまま、作者の坂口安吾自身も1955年(昭和30年)に没したため未完となっていたが、雑誌『宝石』の企画で、高木彬光が完結編を執筆することになり、『樹のごときもの歩く』(きのごときものあるく)と改題され、『宝石』1957年(昭和32年)8月号から11月号まで坂口安吾執筆分が再連載されたのち、高木による完結編が同年12月号から翌1958年(昭和33年)2月号まで連載され、1カ月の休載をはさんで、解決編が同年4月号に掲載され完結した[2]

1958年8月、東京創元社から『樹のごときもの歩く』の題名で刊行された[3]。1970年刊行の冬樹社版『定本 坂口安吾全集』第10巻で、原題の『復員殺人事件』に戻されている。

S・S・ヴァン・ダインの『甲虫殺人事件(英語版)』を意識して書かれた作品で、第7章で、そのトリックへの言及がなされている。
あらすじ

昭和22年(1947年)9月18日。小説家の矢代寸兵が、友人である私立探偵・巨勢博士の探偵事務所を訪れると、そこには倉田定夫・美津子の兄妹が依頼に訪れていた。

昭和17年(1942年)1月末、小田原の成金である倉田由之の長男・公一と、その子の仁一が、早川口での海釣りからの帰り、線路沿いで、轢死体となって発見された。二人とも顔面に殴られた痕跡があったことから、警察は、何者かが二人の顔面を殴って昏倒させ、線路に寝かせて轢死させた、と推定した。公一はその前日、倉田家の下男である杉本重吉一家の不潔さに耐え兼ね、大喧嘩をしたところであった。そして、倉田家の男子には全員アリバイがなかった。

公一の事件から一週間後に応召した倉田家の次男、安彦は、昭和22年(1947年)9月17日に復員した。彼は右手と左足を失い、両目を失明し、言葉も話せなくなっていた上、人相も崩壊し、安彦本人かどうかも見分けがつきかねるほどの状態となっていた。

翌日(9月18日)、安彦の弟の定夫と妹の美津子が、巨勢博士の事務所を訪れる。出征前に安彦が残していた手型と、復員兵の手型を照合してほしい、という依頼であったが、両者は同一であった。定夫は、公一父子の殺害犯は安彦であると主張し、美津子は、安彦は犯人ではないが犯人を知っており、犯人に殺害される恐れがある、と主張する。出征前、安彦は、自分が戦死したら中を見るように、と言い残して、美津子に一冊の日記帳を託していたのである。その包み紙には「マルコ伝第八章二四」と記されていた。マルコ伝第8章24は「人を見る、それは樹の如きものの歩くが見ゆ」[注釈 1]という文言であり、安彦が犯人を見たことを暗示しているらしい。だが、昭和19年(1944年)末、疎開の準備に際して調べたところ、日記帳はなくなっていたという。

何かを予期したらしい巨勢博士は、矢代と箱根に泊まりにいく、という口実を作って、小田原に乗り込んだ。彼らは、小田原駅前の自動電話ボックスで、不審な若い女性が電話で定夫を呼び出そうとしているのを目撃する。

小田原署を訪れた巨勢博士は、捜査主任の大矢警部補から、倉田公一事件の再搜査を求める不審な投書が相次いで寄せられていることを教えられる。そして、巨勢博士には東京のボクシングジムに泊まると告げた倉田公一は、なぜか小田原に帰ってきていた。

そこへ、倉田家で多重殺人事件が発生した、との通報が入る。


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