御先祖様万々歳!
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御先祖様万々歳!
OVA
原作
押井守
監督押井守
脚本押井守
キャラクターデザインうつのみやさとる
アニメーション制作スタジオぴえろ
製作スタジオぴえろ
発表期間1989年8月5日 - 1990年1月25日
話数全6巻
映画:MAROKO 麿子
監督押井守
制作スタジオぴえろ
封切日1990年3月31日
上映時間90分
テンプレート - ノート

『御先祖様万々歳!』(ごせんぞさまばんばんざい!)は、1989年8月5日から1990年1月25日にかけてリリースされた押井守によるOVA作品。全6話(全6巻)[1]

小松左京の小説『御先祖様万歳』との接点はない。
作品概要

スタジオぴえろ10周年記念作品として製作された。原作、脚本、監督は押井守

舞台演劇のような演出をアニメに持ち込み、登場人物が過剰なまでに饒舌な台詞を話す。「立喰いそば」、「」、「大洗海水浴場」といった、他の押井作品で見られる題材やネタも随所に含まれる。舞台演劇のような形式を採用した理由について、押井は2022年刊行の書籍に掲載されたインタビューで、「舞台が好きだという以上に、台詞だけで成立するアニメーションを作ってみたいという思いがあったから」と述べている[2]

南家こうじが担当したオープニングアニメーションは、エフェクト作画とセルアニメの撮影技術を最大限に利用した独特なものであり、当時としてはかなり衝撃的なものとなっている。

1990年に本作を90分に再構成・再編集したヴァージョンが、『MAROKO 麿子』というタイトルで劇場公開された。すべて犬丸の視点で描かれているため、OVAとは違った視点で楽しめるものの、犬丸不在で麿子の正体に迫るクライマックスがばっさり省略されており、押井自身もOVAの方がずっと面白いと認めている[3]

本作と同じスタジオぴえろで製作し押井が監督したヒットアニメ『うる星やつら』と同様に、ある家族に美少女がやって来て起こる混乱を描くコメディーである。『うる星やつら』との類似は押井の意図[4]で、声優の配役も重なっている部分があり、後にしばしば「裏『うる星やつら』」とも評された。しかし、売れ線の企画だと期待したスタジオぴえろ社長布川ゆうじの思いに反して、押井の趣味が反映された小劇場での舞台劇を模した演出と独特の長台詞は、アニメファンのニーズに合わず、商業的には成功とはいかなかった[5]。それにもかかわらず最後まで作らせてくれた布川社長に感謝していると押井は語っている。一方、出演した声優陣からは舞台劇を模したスタイルは概ね評判がよかった[2][6]。各巻冒頭のプロローグと次回予告のナレーションを担当した永井一郎は自分の出番が終わっても「面白いから最後まで見学させてください」と言った、という話が残されている[2]山寺宏一鷲尾真知子がデュエットした挿入歌「興信所は愛を信じない」には録音演出(音響監督)の千葉繁(これが初の音響監督であった)による「山寺、歌うますぎるよ!」というガヤが(わざと)入っている。

東浩紀からは、不条理ドタバタアニメの最高峰と評されている[要出典]。

本作で、うつのみや理レイアウト作画監督のデビューを飾っている。押井は1話目のみ自ら原画をチェックし、残りのエピソードでは基本的に口出しはせず原画、動画、レイアウトのチェックや作画修正など現場での作業の多くを「やりたいように、全部やんなさい」とうつのみやに任せたと語っている[7]

1994年7月にNHK-BS2の「夏休みアニメ特選」で声優の林原めぐみを案内役に毎日1話ずつ放送された。しかし事前に放送が予定されていた最終話は、当日になって事前に説明もなく別作品(スノーマン)に差し替えとなった。

その件の問い合わせに対して、NHKフィルムに異常があったためと説明したとされるが、本作は途中からビデオマスターしか制作されておらず、フィルムに異常があることはありえない。放送を決めておきながら本作第5話で描かれる意外にも過激な展開に驚き、急遽中止にしたのではないかというのが、もっぱら推測される理由である[8]

関西では讀賣テレビ放送の『アニメだいすき!』のプログラム内で1993年3月20日に「MAROKO 麿子」が放送されている。同プログラムは、春休み・夏休み・冬休みの学休期間中の昼間にマニアックなOVAやアニメ映画を中心に放送した名物特番枠で、押井守のインタビューを放送する(1988年11月23日放映「鬼才・押井守の世界」)など野心的な企画も行なっていた。

なお、2003年10月3日と17日にカートゥーンネットワークの『Toonami N.I.N.J.A』にて、その後2005年3月にはキッズステーションの『History of OVA』にて全話放送された。また2004年3月には日本映画専門チャンネルの『24時間まるごと押井守』でも放送されたが全話放送されたかは定かではない。さらに2004年9月12日にアニマックスの『ビッグサンデーズ』にて「MAROKO 麿子」も放送されている。
ストーリー
1.悪婦破家(あくふいえをやぶる)
埋立地の高層マンションに父母と住む高校生・四方田犬丸(よもた いぬまる)は、ホームドラマ的な日常に退屈していた。そんなある日、犬丸はマンションのベランダから黄色い一輪の花を目撃し、見失う。鬱屈を晴らすかのように犬丸は
金属バットを手に、メタルフェイスのドライバーを手にした父・甲子国(きねくに)とは一触即発の状態となる。そんな中、玄関のチャイムが鳴るが面倒臭がって両親は出ない。母・多美子(たみこ)にうながされ、しかたなく犬丸が玄関の扉のドアスコープから外を覗くとそこには、先程見かけた黄色い花がいた。迷いに迷った挙句、扉を開けた犬丸は黄色いドレスの少女に抱きつかれる。その少女は、四方田麿子(よもた まろこ)と名乗り、自分が犬丸の孫娘であり、彼に会いたいが為に未来からやってきたと言う。犬丸と甲子国は麿子を受け入れたが、多美子は受け入れることなく、家を出て行った。
2.酒池肉林(しゅちにくりん)
甲子国は麿子のために新たに一戸建て住宅をローンで購入。気がかりと言えば、家を出て行った妻の多美子と孫娘であるはずの麿子に色目を使う息子の犬丸。朝から家族団欒で鍋をつつく四方田家に、タイムパトロールを自称する室戸文明(むろと ぶんめい)が麿子を捕まえようと乱入してくる。室戸文明を退けた犬丸は麿子と手に手を取って2人で逃避行へ。
3.虎視眈眈(こしたんたん)
アパート暮らしの犬丸、麿子を訪れたのは甲子国名義の住宅ローン返済を迫る室戸文明(むろと ふみあき)と名乗る男であった。前話と異なり、犬丸の攻撃をかわした文明は犬丸、麿子を捕える。
4.捲土重来(けんどちょうらい)
季節外れの大洗海岸の海の家で、犬丸は借金返済のためにトウモロコシを焼かされていた。そこへ、私立探偵・多々良伴内(たたら ばんない)を伴った多美子が訪れ、麿子および文明が詐欺師であるという調査報告を突きつける。甲子国もそこへ現れ、久方ぶりの四方田家再会となる。しかし、メタルフェイスのドライバーを手にした銀行強盗のニュースが流れパトカーのサイレンの音が近づいてきたことで、四方田家そろっての逃避行が始まる。
5.一蓮托生(いちれんたくしょう)
万引き置引きかっぱらい食い逃げといった手段で生活をするようになっていた四方田家+伴内。大量の食品をスーパーから万引きし、一夜の宿にと逃げ込んだのは廃業したドライブイン。だが、ドライブインは警察に包囲され、刑事のふりをした室戸文明が三度現れる。すったもんだの末、犬丸、甲子国、多美子、伴内は気絶。文明は麿子を相手に、これまで語られながら登場することのなかった麿子の父=犬丸の息子=四方田犬麿(よもた いぬまろ)について、そして犬麿の母親について衝撃の独り語りを行い、銃声と共に幕が降りる。
6.胡蝶之夢(こちょうのゆめ)
犬丸は立喰師に身をやつしてまで、麿子を探していた。放浪の末にたどり着いたのは、以前に住んでいた高層マンション。欠陥工事が露見して、すっかり廃墟となった高層マンションに黄色いセイタカアワダチソウを見た気がした犬丸は、小雪舞い散る中、麿子が時を超えるタイムマシンとして見せた黄色い飛行船を目撃して廃墟マンションへと走るが、力尽きるように倒れる。降りしきる雪に埋もれるように犬丸は動かなくなった。
登場人物
四方田犬丸(よもた いぬまる)
古川登志夫スケベかつ血気盛んな高校生で、本作の実質的な主人公。孫娘であるはずの麿子と禁断の恋に堕ちた為に、曲がりなりにも平穏だった生活を失って破滅していく。お尻の部分に四方田家の人間のみに引き継がれる、大人になっても消えない『五芒星蒙古斑』を持つ。最終話(および映画版)では、消えた麿子を探し、自身の身の上に起きた奇妙な出来事を語ることで憐憫から無銭飲食を行う立喰師「哭きの犬丸」と呼ばれるようになる。ただし、最終話における立ち食い蕎麦屋では店主(声:永井一郎)から「話にリアリティが欠ける」と袋叩きにあっている。
四方田麿子(よもた まろこ)
声:勝生真沙子38年後の近未来[9]からやってきた犬丸の孫娘を自称する少女。肉体年齢としては犬丸と同年齢。大人になっても消えない『五芒星の蒙古斑』が尻にあることを見せ、自身が四方田家の直系であることを示した。


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