強迫性障害
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強迫性障害

洗浄強迫は強迫性障害によくみられる症状である
概要
診療科精神医学, 心理学
分類および外部参照情報
ICD-10F42
ICD-9-CM300.3
DiseasesDB33766
MedlinePlus000929
eMedicinearticle/287681
MeSHD009771
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強迫性障害(きょうはくせいしょうがい、: obsessive?compulsive disorder , OCD)は、不合理な行為や思考を自分の意に反して反復してしまう精神障害の一種である[1]。1994年以前は強迫神経症の診断名であった。同じ行為を繰り返してしまう「強迫行為」と、同じ思考を繰り返してしまう「強迫観念」からなる。多くはその行為に日あたり1時間以上を費やし[2]、WHOは生活上の機能障害を引き起こす10大疾患の一つにあげている[3]アメリカ精神医学会発行のDSM-IV精神障害の診断と統計マニュアル)においては不安障害に分類されていたが、2013年のDSM-5からは独立した疾患概念として「強迫症および関連症群」の一つに位置づけられた[3][4]。世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)では「神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害」のカテゴリーに含まれている[3]

その原因は不明である。同様の症状を生み出す複数の疾患の基盤にある連続性に注目し、それらを強迫スペクトラム障害 (OCSD) として、その特異な関連の研究が行われている。このスペクトラムには自閉症アスペルガー症候群チックトゥレット障害抜毛症皮膚むしり症自傷行為身体醜形恐怖摂食障害依存症などが含まれている。

人口の約2.3%は、人生のある時点で強迫性障害を経験する[5]。年間の患者数は、全世界では約1.2%ほど[2]。35歳以降で発症することは少なく、患者の半数は20歳以下で発症している[6][2]。男性も女性も、ほぼ等しく発症する[6]

治療は主に心理療法によって行い、曝露反応妨害法 (ERP) 等を含む認知行動療法 (CBT) が進められ、それに並行して薬物療法などが行われる[7][1]。このような治療によって、症状が消失する[8]。治療を受けなければ、その症状は数十年続きえる[2]
定義「精神障害#定義」も参照

精神医学的障害の一種である。
症状

強迫症状とは強迫性障害の症状で、強迫観念と強迫行為からなる。両方が存在しない場合は強迫性障害とは診断されない。強迫症状はストレスにより悪化する傾向にある(「ストレス管理」も参照)。

強迫観念(きょうはくかんねん, Obsessions)とは、本人の意思と無関係に頭に浮かぶ、不快感や不安感を生じさせる観念を指す(侵入思考)。強迫観念の内容が現実になることはなく、事実であることもない[9][10]。強迫観念の内容の多くは普通の人にも見られるものだが、普通の人がそれを大して気にせずにいられるのに対し、強迫性障害の患者の場合は、これが強く感じられたり長く続くために強い苦痛を感じている。ただし、単語や数字のようにそれ自体にはあまり意味の無いものが執拗に浮かぶ場合もある。

強迫行為(きょうはくこうい, Compulsions)とは、不快な存在である強迫観念を打ち消したり、振り払うための行為で、強迫観念同様に不合理なものだが、それをやめると不安や不快感が伴うためになかなか止めることができない。その行動は患者や場合によって異なるが、いくつかに分類が可能で、周囲から見て全く理解不能な行動でも、患者自身には何らかの意味付けが生じている場合が多い。強迫性障害の患者の主要な問題は、患者の三分の一は強迫観念であり、残りの三分の二の患者は強迫行為である[11]

大半の患者は自らの強迫症状が奇異であったり、不条理であるという自覚を持っているため、人知れず思い悩んだり、恥の意識を持っている場合も多い[12]。また、強迫観念の内容によっては罪の意識を感じていることもある。そのため、自分だけの秘密として、家族などの周囲に内緒で強迫行為を行ったり、理不尽な理由をつけてごまかそうとすることがある。逆に自身で処理しきれない不安を払拭するために、家族に強迫行為を手伝わせようとする場合もある。これは「巻き込み」と呼ばれる。原則として強迫観念や強迫行為の対象は自身に向けられたものであり、これによって患者が非社会的になっても、たとえば犯罪のような反社会的行動に結びつくことはない。

強迫症状の内容には個人差があり、人間のもつ、ありとあらゆる心配事が要因となり得る。しかし、比較的よく見られる特徴的な症状があるため、これを下記に記す。これらの症状についても患者自身の対処の仕方(強迫行為)は異なり、一人の患者が複数の強迫症状を持つこともある。
行為・観念皮膚むしり症強迫的ホーディングのゴミ屋敷
不潔恐怖・洗浄強迫
潔癖症とも言われている。手の汚れが気になり、手や体などを何度も洗わないと気がすまない。体の汚れが気になるためにシャワー風呂に何度も入る等の症状(ただし、本人にとって不潔とされるものを触ることが強い苦痛となるため、逆に身体や居室に触れたり清掃することができずに、かえって不衛生な状態に発展する場合もある。手の洗いすぎから手湿疹を発症する場合もある。患者によっては電車のつり革を触ることが気持ち悪くて手袋をはめて触ったり、お金やカード類も外出して穢れた、汚れたという感覚を持つため帰宅の度に洗う場合もある。)。
確認行為
確認強迫とも言う。外出や就寝の際に、家のガスの元栓、窓を閉めたか等が気になり、何度も戻ってきては執拗に確認する。電化製品のスイッチを切ったか度を越して気にするなど。
加害恐怖
自分の不注意などによって他人に危害を加える事態を異常に恐れる。例えば、車の運転をしていて、気が付かないうちに人を轢いてしまったのではないかと不安に苛まれて確認に戻るなどの行為。赤ん坊を抱いている女性を見て、突如としてその子供を掴んで投げてしまったり、落としたりするというような、常軌を逸した行為をするのではないかという恐怖も含まれる。
被害恐怖
自分が自分自身に危害を加えること、あるいは自分以外のものによって自分に危害が及ぶことを異常に恐れる。例えば、自分で自分のを傷つけてしまうのではないかなどの不安に苛まれ、鋭利なものを異常に遠ざけるなど。過去に被害にあったのではないかと疑うこともある。
自殺恐怖
自分が自殺してしまうのではないかと異常に恐れる[要出典]。
疾病恐怖
または疾病恐怖症など。自分が重大な病や、いわゆる不治の病などにかかってしまうのではないか、もしくは、かかってしまったのではないかと恐れるもの。HIVウイルスへの感染を心配し、血液などを異常に恐れたりするものも含まれる。
縁起恐怖
縁起強迫ともいう。自分が宗教的、もしくは社会的に不道徳な行いをしてしまうのではないか、もしくは、してしまったのではないかと恐れるもの。信仰の対象に対して冒涜的な事を考えたり、言ってしまうのではないかと恐れ、恥や罪悪の意識を持つ。例えば、神社仏閣教会において不信心な事を考えてしまうのではないか、聖典などを毀損してしまうのではないか、というもの。ある特定の行為を行わないと病気や不幸などの悪い事柄が起きるという強迫観念に苛まれる場合もあり、靴を履く時は右足から、などジンクスのような行動や、○○すると悪いことが起きる、などの観念が極端になっているものも見られる。
不完全恐怖
不完全強迫ともいう。物を秩序だって順序よく並べたり、対称性を保ったり、本人にとってきちんとした位置に収めないと気がすまず、うまくいかないと不安を感じるもの。例えば、家具や机の上にある物が自分の定めた特定の形になっていないと不安になり、これを常に確認したり直そうとする等の症状。物事を進めるにあたって、特定の順序を守らないと不安になり、うまくいかないと最初から何度もやり直したりするものもある。郵便物を出す際のあて先や、書類などに誤りがないかと執拗にとらわれる場合もあるため、結果として確認行為を繰り返す場合もある。
保存強迫(強迫的ホーディング


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