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昇圧剤(しょうあつざい)とは、血圧低下が見られた際に、血圧を上昇させ、維持することを目的として投与される薬剤のことである。降圧薬と逆の作用を持つ。 昇圧剤の作用機序は、末梢血管を収縮させることにより、血管抵抗を上昇させて血圧を上昇させるもの(血管収縮薬、vasoconstrictor, vasopressor)[1]と、心筋収縮力を上昇させて血圧を上昇させるもの(陽性変力薬、positive inotropic agent)[2]に大別される。血管収縮薬と陽性変力薬の作用を併せ持つものもある。例えば、カテコラミンα受容体作動薬であり、β受容体作動薬でもあるアドレナリンが該当する。旧来から用いられてきた強心薬(cardiotonic)は陽性変力薬に該当するが、代表的な古典的強心薬であったジギタリス製剤の薬理作用を示すものとしてよく用いられる。 何らかの原因により一過性に血圧が急速に低下して、輸液負荷でも改善が見られない場合に、昇圧剤の投与を開始する。 カテコラミンα1受容体刺激作用のある薬剤は血管収縮薬として、カテコラミンβ1刺激作用の強い薬剤は陽性変力薬として作用する。 ドーパミンは内因性カテコラミンであり、ノルアドレナリンの前駆物質である。血圧の維持と利尿効果を期待することができる。 近年ではこれらの製品はキット化されている。 具体的な量としては、利尿作用を期待する場合は3μg/kg/minから開始する場合が多い。血圧維持目的でも3μg/kg/minから開始して3?10μg/kg/minで維持されることが多いが、低?中用量で利尿作用があるため、純粋に血圧を維持したいのならば次項のドブタミンの方が使いやすい。 ドブタミンは合成カテコラミンであり、強力なβ1刺激作用をもつ。商品名としてはドブトレックスが有名である。通常は5μg/kg/minから開始し、20μg/kg/minまで増量可能である。心臓の酸素消費量がドパミンほど増加しないこと、不整脈の発生頻度が低いことから、虚血性心疾患で好まれる。 ノルアドレナリンは内因性カテコラミンであり、強力なα作用とβ1作用をもつ。ノルアドリナリンの商品名で広く流通している。血圧が上昇する際に末梢の循環は悪化するものの、主要部位の血流は保たれる。ただし、心収縮不全の場合は不整脈を起こしやすく、後負荷が増大するため、心疾患では使いにくい。0.03?0.3μg/kg/minで維持されることが多い。5%ブドウ糖液に溶解させることが多い。 体重が測定できない場合には、ノルアドレナリン6アンプル(6mg)を5%ブドウ糖液に溶解して48mlとし、2ml/hrで管理するという方法が知られている。この場合、体重50kgにて0.083μg/kg/minとなる。 アドレナリンはノルアドレナリン以上に強力なα作用とβ作用をもつ。商品名としてはボスミンが有名である。心肺蘇生、アレルギー疾患、ショックの対応で用いられる。心肺蘇生時は1mgを3分?5分間隔で静注していく。 フェニレフリンは選択的α1刺激薬である。β作用がないため心疾患の患者でも扱いやすい[要出典]。商品名としてはネオシネジン(興和)が有名である。ネオシネジンの場合、1アンプルあたり1mg含まれているため、これを生理食塩水で10mlに希釈し、1?2ml (0.1?0.2mg) の量で使用していく。持続投与する場合は0.03?0.3μg/kg/minで維持するので、体重50kgの場合はネオシネジン5アンプル(5mg)を5%ブドウ糖液で100mlに希釈し、2ml/hr(0.03μg/kg/min)から開始する。全身麻酔などで一過性の低血圧が起こる際に用いる薬物である。 エフェドリン(商品名もエフェドリン)はα、βの両作用をもつ。全身麻酔などで一過性の低血圧が起こる際に用いる薬物である。 ジギタリス製剤には経口薬のほか、静注薬も存在する。 製剤のジゴキシンはNa+/K+-ATPaseを阻害し、細胞内Na+濃度を高くすることでNa+/Ca+交換系を賦活させ、これによって心収縮力を増加させる。また、房室伝導も阻害することが知られている。 ジギタリス中毒の症状としてはPAT with blockや盆状ST低下といった心電図変化が有名であるが、自覚症状としては消化器症状や視覚障害が多い。カルシウム拮抗剤やβ遮断薬の併用、低カリウム血症、あるいはそれを起こすループ利尿薬投与の場合には中毒のリスクが高くなる。
作用機序
用途
カテコラミン製剤
ドーパミン(DOA)
ドブタミン(DOB)
ノルアドレナリン(NA)
アドレナリン(Ad)
フェニレフリン塩酸塩
エフェドリン
強心剤
ジギタリス
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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