弦_(幾何学)
[Wikipedia|▼Menu]
赤い線分 BX はこの円の弦である。(線分 AB は円の直径)

初等幾何学におけるの弦(げん、: chord[注釈 1])は、その円周上に両端点を持つ線分を言う。弦を無限に延長して得られる直線を、割線と呼ぶ。より一般に、任意の曲線(例えば楕円)において、その曲線上の二点を結ぶ線分を、その曲線上の弦と総称する。円の中心を通る弦はその円の直径である。任意の直径は弦であるが、任意の弦が直径となるわけではない。直径 (diameter); 半径 (radius); 弦 (chord); 割線 (secant); 接線 (tangent)
円の弦「:en:Circle#Chord」も参照

円の弦に関する性質には、例えば以下のようなものがある:
二つの弦が、円の中心から等距離にあるための必要十分条件は、それら弦の長さが等しいことである。

長さの等しい弦を、円の中心から見込む角(中心角)は等しい。

円の中心を通る弦は直径と呼ばれ、その円の最長の弦である。

弦 AB および CD を延長して得られる割線が点 P で交わるならば、それらの長さは AP・PB = CP・PD を満足する(方冪の定理)。

楕円の弦

楕円における互いに平行な弦の族が与えられたとき、それら弦の中点はすべて同一直線上にある[1]
弦をもとにした三角法

三角法の初期の段階では弦が手広く用いられていた。知られた最古の三角函数表はヒッパルコスの編纂した弦の数表(英語版)で、それには7.5°刻みで弦函数の値が書き並べられていた。AD 2世紀に、アレクサンドリアのプトレマイオスは、天文学に関する著書『アルマゲスト』において、より詳細な弦の数表を編纂している(0.5°から180°まで0.5°刻みで値が与えられ、これは円の直径を120として小数点以下60進ふた桁まで正確であった)[2]中心角 θ に対する弦; 弦の半分が正弦

弦函数 crd は幾何学的には(図のように)中心角 θ の見込む弦の長さが r⋅crd(θ)(r は半径)となるように定義される。すなわち、弦函数の値 crd(θ) は、中心角 θ によって隔てられた単位円上の二点間を結ぶ弦の長さである。ここでは角度 θ は正の向きに測るものとし、弧度法で区間 0 < θ ? π の範囲に入るものと考えている。この元函数 crd をより現代的な正弦函数 sin と関連付けることができる。それには、一点 (1, 0) ともう一つの点 (cos(θ), sin(θ)) を結ぶ弦の長さを三平方の定理を用いて計算すればよい。すると crd ⁡ θ = ( 1 − cos ⁡ θ ) 2 + sin 2 ⁡ θ = 2 − 2 cos ⁡ θ = 2 sin ( θ 2 ) {\displaystyle \operatorname {crd} \theta ={\sqrt {(1-\cos \theta )^{2}+\sin ^{2}\theta }}={\sqrt {2-2\cos \theta }}=2\sin \!{\Bigl (}{\frac {\theta }{2}}{\Bigr )}} を得る[2]。最後の等号は半角公式による。

現代的な三角法が正弦函数に基づいて構築されているのと同様に、古来の三角法はこの弦函数をもとに構築されていた。ヒッパルコスは(いまではもうすべて失われたけれども)12巻にも及ぶ弦についての文献を書き上げたというから、三角法についてはかなりのことが知られていたと考えられる。現代的な三角函数に関するよく知られた恒等式の弦函数版がある:

恒等式正弦版弦版
三平方の定理 sin 2 ⁡ θ + cos 2 ⁡ θ = 1 {\displaystyle \sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta =1} crd 2 ⁡ θ + crd 2 ⁡ ( π − θ ) = 4 {\displaystyle \operatorname {crd} ^{2}\theta +\operatorname {crd} ^{2}(\pi -\theta )=4}
半角公式 sin ⁡ θ 2 = ± 1 − cos ⁡ θ 2 {\displaystyle \sin {\frac {\theta }{2}}=\pm {\sqrt {\frac {1-\cos \theta }{2}}}} crd ⁡   θ 2 = ± 2 − crd ⁡ ( π − θ ) {\displaystyle \operatorname {crd} \ {\frac {\theta }{2}}=\pm {\sqrt {2-\operatorname {crd} (\pi -\theta )}}}
辺心距離 a c = 2 r 2 − a 2 {\displaystyle c=2{\sqrt {r^{2}-a^{2}}}} c = D 2 − 4 a 2 {\displaystyle c={\sqrt {D^{2}-4a^{2}}}}
中心角 θ c = 2 r sin ( θ 2 ) {\displaystyle c=2r\sin \!{\Big (}{\frac {\theta }{2}}{\Bigr )}} c = D 2 crd ⁡ θ {\displaystyle c={\frac {D}{2}}\operatorname {crd} \theta }
ただし、半径 r(直径 D)の円の中心角 θ が見込む弦の長さを c とする。

弦函数 crd の逆函数 acrd もまた存在して、逆正弦函数とは acrd ⁡ ( y ) = 2 arcsin ( y 2 ) {\displaystyle \operatorname {acrd} (y)=2\arcsin \!{\Big (}{\frac {y}{2}}{\Bigr )}} の関係にある[3]
脚注[脚注の使い方]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:17 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef