引用
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引用(いんよう、英語:citation, quotation[注 1])とは、広義には、自己のオリジナル作品のなかで他人の著作を副次的に紹介する行為、先人の芸術作品やその要素を副次的に自己の作品に取り入れること。報道や批評、研究などの目的で、自らの著作物に他の著作物の一部を採録したり、ポストモダン建築で過去の様式を取り込んだりすることを指す。狭義には、各国の著作権法の引用の要件を満たして行われる合法な無断転載[注 2]のこと。引用は権利者に無断で行われるもので、法(日本では著作権法第32条)で認められた合法な行為であり、権利者は引用を拒否することはできない[注 3]。権利者が拒否できるのは、著作権法の引用の要件を満たさない違法な無断転載等に限られる。本項では著作権法で認められる引用(狭義の引用)について記述する。

科学論文においては、引用はむしろ内容そのものを参照することを指す場合が多い。下記を参照のこと。

以下で条数のみの記載は、著作権法である。

日本法における著作物の引用

日本では、一定の条件を満たした「引用」は、著作権法第32条によって認められている。引用は権利者に無許可で行うことができ、これは著作権侵害にならない。ただし、引用を要約したり、変形・改変・修正などを加えることは違反となる。47条6にて、32条については「翻訳」のみが認められており、「翻案」は違反となる。そのため引用内容を要約・改変・修正などしてしまうと、翻案となって27条の翻案権違反に接触するため、引用はそのまま載せなければならない(記述を略する場合などは3点リーダーを2個(……)を使用し、箇条書き・段落・改行などがある引用で略を使う場合は〔略〕と入れる)。

作品内容のあらましが把握できるような要約を著作権者に無断で掲載すると27条(翻案権)違反となり、作成された要約をウェブ上で一般公開する行為も28条違反となるため、掲載前に著作権者への確認が必要である(極めて短い内容紹介や一行のキャッチコピー程度であれば著作権法違反にならない)。

「引用」ではなく、自分の作品や文献などにおいての「参考」として、出所を明示した上で自分なりの言葉で要約して記載すれば、使用した出所は「引用文献」ではなく、一般に「参考文献」として扱われているようであるが、これは引用であることに変わりはなく、著作権法違反にならないようにする必要がある(自分の文が「主」で参考文献が「従」の関係であることが必要[1][2])。なお、「参考」は著作権法上の用語ではない。

著作権物の変更・切除・改変を著作権者に無断で行う場合、20条(同一性保持権)違反となる場合もある。

3点リーダー使用例

略する前の原文「来週にスーパーマーケットに行くつもりで、そこで食料を買う予定だ。その後に図書館へ行く予定だ。」

3点リーダーで略した文「……スーパーマーケットに……食料を買う予定だ。……」

趣旨

人間の文化活動のなかでは、批評・批判や、自由な言論のために、公表された著作物を著作者・著作権者に断りなく用いる要請が生じることがある。狭義の引用は、その要請を満たすために用意された著作権の制限・無断利用の許容の規定である。言論の自由と著作権の保護とが調和するように適切と認められるための条件が定められている。
法の条文
32条(引用)

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

国若しくは地方公共団体の機関又は独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。

47条 6
(翻訳、翻案等による利用)

次の各号に掲げる規定により著作物を利用することができる場合には、当該著作物について、当該規定の例により当該各号に定める方法による利用を行うことができる。

一〔略〕

二〔……〕第32条〔……〕翻訳

三〔略〕


48条(出所の明示)

次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。

一 第32条〔……〕の規定により著作物を複製する場合

二 〔略〕

三 第32条の規定により著作物を複製以外の方法により利用する場合〔……〕において、その出所を明示する慣行があるとき。


前項の出所の明示に当たつては、これに伴い著作者名が明らかになる場合及び当該著作物が無名のものである場合を除き、当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない。

第43条の規定により著作物を翻訳〔……〕して利用する場合には、前二項の規定の例により、その著作物の出所を明示しなければならない。

要件

著作権法において正当な「引用」と認められるには、公正な慣行に従う必要がある。最高裁判所昭和55年3月28日判決[3]によれば、適切な引用とは「紹介、参照、論評その他の目的で著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録すること」とされる。

文化庁によれば、適切な「引用」と認められるためには、以下の要件が必要とされる。

ア 既に公表されている著作物であること

イ 「公正な慣行」に合致すること

ウ 報道,批評,研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること

エ 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること

オ カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること

カ 引用を行う「必然性」があること

キ 「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)
? 文化庁 (2010)、§8. 著作物等の「例外的な無断利用」ができる場合 G ア、「引用」(第32条第1項)

このうち、出所の明示については著作権法の第48条に規定されており、後述する引用以外の合法な無断利用を含め、共通の必須事項である(これを怠ると剽窃とみなされる)。

また、

引用する分量を必要最小限度に抑えなければならない[4]

引用するには目的(必然性)が必要であり、それに必要な量しか引用してはならない[5]

質的にも量的にも[注 4]、引用先が「主」、引用部分が「従」の関係になければならない[注 5]。ただし、知財高裁平成22年10月13日(鑑定証書カラーコピー事件)判決においては主従関係は要件とされていない[7]

引用を独立してそれだけの作品として使用することはできない。

なお、引用部分を明確にする方法としては、カギ括弧のほか、段落を変える、参照文献の一連番号又は参照文献の著者名等を用いた参照記号を該当箇所に記載する[8]などの方法もある。

「引用」と認められず、違法な無断転載等とされた場合には、法第119条以降の罰則に基づいて懲役や罰金に処される。
引用以外の合法な無断利用

行政機関等の広報資料等一般に周知させることを目的とした転載を禁止する旨の表示がない「行政機関等の名義の下に公表された広報資料等」は、出所を明示すれば、行政機関に無断で説明の材料として新聞や雑誌などの刊行物に転載して構わない
[9][注 6]

時事論説等学術的な性質を有するものでない、政治上、経済上、社会上の時事問題に関する、転載・放送・有線放送を禁止する旨の表示がない、新聞又は雑誌に掲載して発行された論説等も、出所を明示すれば、新聞社等に無断で他の新聞等への転載、放送・有線放送・放送対象地域を限定した「入力」による送信可能化による放送の同時再送信[注 7]をして構わない[10][注 6]

公開演説等公開して行われた政治上の演説・陳述又は裁判手続きにおける公開の陳述も、同一の著作者のもののみを編集せずに、出所を明示すれば、著作者に無断で転載等して構わない[11]

以上3つの合法的な無断利用にあっては、それぞれの要件と出所の明示を守る場合に限って、主従関係や必然性などの引用の要件を考慮する必要なく、権利者に無断で全部を転載しても構わない。

ただし、特に新聞等はたいてい無断転載を禁じているため、法第39条に基づいて合法的に全部を無断転載することは実際には難しい。よって、法第32条第1項の引用の要件を満たして一部分のみを引用するか、著作権の保護の対象にならない「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(法第10条第2項)の範囲に限って転載するのが、現実的な合法的手段である。
著作権の保護の対象にならないもの

著作権法上適切な「引用」に関する問題は、対象が著作権法上保護されるものであることが前提となるが、以下のものについては、著作権法上保護の対象とならない。

著作者の死後70年以上経っている著作物(著作権法第51条第2項


公表後70年を経過した無名・変名の著作物(著作権法第52条第1項)

公表後70年を経過した団体名義の著作物(著作権法第53条第1項)

公表後70年を経過した映画の著作物(著作権法第54条第1項)

創作性のない表現(著作権法第2条第1項第1号)

情報(データ)そのもの(判例法[12]

アイディア(判例法[13]

事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道(著作権法第10条第2項)

解法(アルゴリズム)、規約(プロトコル)(著作権法第10条第3項)


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