建設業
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建設工事

建設業(けんせつぎょう、英語: construction)とは、建設工事の完成を請け負う営業をいい、日本においては土木建築に関する工事で、建設業法に規定する建設工事の種類にある工事の完成を請け負う営業[注釈 1]をいう。第二次産業に含まれる。

建設業法は、以下で条数のみ記載する。

特記

特に注記がない場合、以降の記載は全て日本の建設業についての記述である。
概要

建設業においては、発注者に注文を受けてから生産が始まり、発注者が施主となるため、建築物を「生産」するという意識は強いが、「販売」するという意識は薄い[1]。建設業において生産される建築物は、単品生産であり、多種多様な種類を持ち、生産される場所も異なる[1]。また、建設業は土地に依存し、自然条件の影響を受ける[1]。産業形態は複合化しており、総合組立産業(アセンブリ[要曖昧さ回避]産業)としての側面も有している[1]。なお、近年は、大手ゼネコンを中心として、「受注から造注へ」の流れも生じている[1]。建設業を営む企業の多くは、自ら建売住宅や分譲マンションなどを建設して販売することも多い。この場合、宅地建物取引業(不動産業)の免許も必要になる。また、系列グループに不動産会社を有することも多い。

建設の事業においては、事業開始をもって(特段の手続きをしなくても法律上当然に)労災保険関係が成立する。建設の事業においては労災保険の保険料を、元請負人において一括して申告納付することが義務付けられており(一定の要件を満たせば、手続きにより下請負人に保険関係を分割することが出来る)、事業所には労災保険関係成立票を見やすい場所に掲げることも法令により定められているので、上記の問題は「労災隠し」として厳正に処罰されることに留意されたい。

法人個人を問わず、工事を請け負う実態であっても、請負契約でなければ建設業ではないので、工事内容にあわせて人数を計算し、単価×日数で労働力を提供する[注釈 2]ものであるなら、一般的な雇用契約(従業員としての労働)、あるいは労働者派遣[注釈 3]に該当し、建設業の範囲からは外れ、建設業許可の対象外となる。この場合、雇用保険厚生年金健康保険は元の業者の従業員としての加入が必要である。

ただし、工事中における事故等で対象となる労働災害に代表される労働保険などでは、偽装的な労働者派遣にあっては万一の場合に保険が適用できないなどの問題が多く、山谷あいりん地区寿町地区等に代表される、いわゆる「ヤマ」や「寄せ場」に集まる日雇い労働者の雇用では社会問題に発展する場合がある。仮に雇用契約が存在するとしても、日雇い労働者は「日々雇用されるもの」という区分があり、労働条件の明示もなく雇用されている実態がある。保険が適用されるような重大事故となると問題が起きることがある。
建設業者
業種一覧

建設業法上の許可は、別表第一の上欄に掲げる建設工事の種類ごとに、それぞれ同表の下欄に掲げる建設業に分けて与えるものとされている(第三条(建設業の許可))。例えばダクト工事は管工事業に含まれるなど、工事内容の例示もある。国土交通省による工事内容例示(外部リンク)

略号上欄に掲げる建設工事の種類下欄に掲げる建設業
(土)土木一式工事土木工事業(指定)
(建)建築一式工事建築工事業(指定)
(大)大工工事大工工事業
(左)左官工事左官工事業
(と)とび・土工・コンクリート工事とび・土工工事業
(石)石工事石工事業
(屋)屋根工事屋根工事業
(電)電気工事電気工事業(指定)
(管)管工事管工事業(指定)
(タ)タイル・れんが・ブロツク工事タイル・れんが・ブロツク工事業
(鋼)鋼構造物工事鋼構造物工事業(指定)
(筋)鉄筋工事鉄筋工事業
(舗)舗装工事舗装工事業(指定)
(しゅ)しゆんせつ工事しゆんせつ工事業
浚渫工事のこと、法律では「しゆんせつ」と表記)
(板)板金工事板金工事業
(ガ)ガラス工事ガラス工事業
(塗)塗装工事塗装工事業
(防)防水工事防水工事業
(内)内装仕上工事内装仕上工事業
(機)機械器具設置工事機械器具設置工事業
(絶)熱絶縁工事熱絶縁工事業
(通)電気通信工事電気通信工事業
(園)造園工事造園工事業(指定)
(井)さく井工事さく井工事業
(具)建具工事建具工事業
(水)水道施設工事水道施設工事業
(消)消防施設工事消防施設工事業
(清)清掃施設工事清掃施設工事業
(解)解体工事解体工事業

工務店

法律上の厳密な定義ではないが、主に戸建住宅等を請け負う建築専門の地場産業の建設業者のことを、伝統的に工務店と呼ぶ事が多い。工務店は、個人やメーカー等から戸建住宅を請け負い、専門工事業者(いわば大工左官板金電気水道等の建築系の職人)の手配、管理その他工事全体を監督する役割を担う。

戸建住宅の建築の現場は、社長(親方)と職人が中心であり、社長(親方)には、職人の争いの仲裁をして、報酬の前金の都合を付け、責任者として地域住民の苦情に頭を下げて回る役割が求められる。そのため信用が第一であり、人格者であることが求められる。大企業の役員が言うような現場主義とは異なり、現場主義でなければそもそも戸建住宅の建築が不可能である。そのため、社長(親方)の目が届く範囲での規模の方がうまくいくことが多く、そのような形態の建設業者を工務店と呼び称するのである。

建築士の場合で、必要に応じその都度工事現場に行って職人の指導から工事監督をも行うが、直接工事を実施しないもの、また建築士事務所が設計監理で工務店は工事管理と、役割が分担するものもある。だが、その逆に、大工が経営する形態も多く存在する。田鎖郁男『そうか、こうやって木の家を建てるのか』(小学館、2011年)『建て主1187人調査レポート』(日経ホームビルダー編、日経BP社、2009年)などでわかるとおり、過去から日本では、設計から職人のマネジメントまで住宅建築に関するすべてを取り仕切っていたのは大工の親方・棟梁である。この大工の棟梁が発展した形が工務店であるともいえる。竹中工務店一条工務店穴吹工務店などゼネコン、サブコンといった建設会社の社名にも使用されるが、会社規模が違うだけでもとは上記の工務店と本質的な違いはない。

『全国優良工務店100選』(全国優良住宅協議会監修、日本建築出版社、2011年)では工務店のタイプわけを行っている。これによると従来型の棟梁型店、社内に建築士を抱えデザインで他社との差別化を図っている店、外部の建築家の設計による施工だけを行う店、ハウスメーカーの下請けや、特定工法のフランチャイズ業務が中心の店、特定の建材・設備などを使った住宅を商品化・シリーズ化して販売型の店、自社土地購入で建売住宅や売建住宅販売を展開する店などがみられるという。

近年はほとんどの工務店は上記の複合形スタイルでの経営状態である。またその影響やニーズから現在では工務店といっても様々なタイプがある。「工務店のネットワーク化――工務店の業界動向とグループ化の方向性」(『ヤノ・レポート』2011年3月号)、大内俊一『介護ビジネス進出の実務 中小建設業・工務店の強みを活かす』(日本実業出版社、2004年)、野崎進『大震災に強い家づくり 福島県郡山の地域工務店発!』(PHP研究所、2012年) などをみても、工務店の数だけその形態があると言っても過言ではない。

「東京で家を建てる 2006夏 東京都の工務店・ハウスメーカー・建築事務所情報42」(月刊ハウジング編集、リクルート、2006年) 「インタビュー 被災地の再生が工務店の使命」(『新住宅ジャーナル』2011年6月号)をみるとおり、工務店は、地域密着で営業していることが多く融通がきき、アフターケアもきめ細かく受けられる利点があるといえる。なお『建築雑誌』2011年4月号<特集>日本のデザイン×ビルド、を観るとおり、工務店に直接家を建てる依頼をするというのは、例外もあるが通常は工務店側に家の設計と施工の両方を委託する設計施工というスタイルとなる。
法令

建設業法 - e-Gov法令検索
許可制

建設業を行うには、原則として、請け負う工事の種類ごとに
許可を受けなければならない。

請負として建設工事を施工する者は、「元請[注釈 4]」・「下請」ともに個人法人の区別なく許可を受ける必要がある。下請から更に請負をする孫請(まごうけ)と呼ぶ2次下請、更に2次下請から次の下請に発注する3次下請の曾孫請(ひまごうけ)以下の場合も同様である。


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