座屈
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短い柱(左)と長い柱(右)が圧縮力を受けたときの比較。細長い柱は座屈を起こす。

座屈(ざくつ、buckling)は、構造物に加える荷重を次第に増加すると、ある荷重で急に変形の模様が変化し、大きなたわみを生ずることをいう[1]。構造に座屈現象を引き起こす荷重をその構造の座屈荷重という。座屈荷重はその構造の剛性および形状に依存し、材料強度以下で起こることもある。圧縮荷重を受けるの場合、材料、断面形状、荷重の条件が同じであっても、座屈荷重は柱の長さに依存するため、短い柱では座屈を起こさず、長い柱のみに発生する(右図)。

座屈現象は構造の不安定現象のひとつである。例えば、圧縮荷重を受ける長柱が、擾乱(例えば、風による圧力など)を受けて横方向に変形しても、圧縮荷重が座屈荷重以下であれば、長柱の横剛性(曲げ剛性)により擾乱が消えればもとに戻る。しかし、荷重が座屈荷重ちょうどであると、それに対する長柱の横剛性は十分でなく、擾乱を受けて生じた変形は元に戻らない(変形した状態で安定する)。荷重が座屈荷重よりも少しでも大きいと、小さな擾乱でも長柱は倒壊する。このように、座屈荷重を超える圧縮荷重を受ける構造は不安定な状態にあり、座屈による破壊とは、不安定な状態から倒壊というもう一つの安定状態に飛び移ることである。

圧縮荷重を分担する部材の設計では、座屈強度に対する注意が必要である。
圧縮荷重を受ける長柱の曲げ座屈応力

以下は圧縮荷重を受ける長柱の曲げ座屈荷重に関する記述であるが、曲げ以外にも、ねじりや、曲げ?ねじり連成などの座屈がある。座屈が起こる時の応力はの末端部分の形状、曲げ剛性、細長比などによって異なる。
支配方程式

曲げ剛性 EI の一様断面の柱が圧縮荷重 P を受けるとき、変位 y は以下の式に従う[2]。 d 4 y d x 4 + P E I d 2 y d x 2 = 0 {\displaystyle {\frac {\mathrm {d} ^{4}y}{\mathrm {d} x^{4}}}+{\frac {P}{EI}}{\frac {\mathrm {d} ^{2}y}{\mathrm {d} x^{2}}}=0}

ここで x は柱の長さ方向の座標を表す。この微分方程式の一般解は次式で表される。 y = a sin ⁡ k x + b cos ⁡ k x + c x + d {\displaystyle y=a\sin {kx}+b\cos {kx}+cx+d}

ただし、 k := P E I {\displaystyle k:={\sqrt {\frac {P}{EI}}}}

である。

座屈問題は、特定の境界条件の下でこの方程式の非自明解(a=b=c=d=0以外の解)を求める固有値問題に帰着される。
端末条件係数

座屈応力を求める際に、端末条件係数と呼ばれる値が関係してくる。棒の末端部分の形状により係数は次のような値になる。

端末条件座屈形基礎式境界条件特性式最低次の解( k L = C π {\displaystyle kL={\sqrt {C}}\pi } )端末条件係数C
自由端-固定端
E I y ′ ′ ′ ′ + P y ′ ′ = 0 {\displaystyle EIy^{\prime \prime \prime \prime }+Py^{\prime \prime }=0} y ( 0 ) = 0 {\displaystyle y(0)=0}
y ′ ( 0 ) = 0 {\displaystyle y^{\prime }(0)=0}
E I y ′ ′ ( L ) = 0 {\displaystyle EIy^{\prime \prime }(L)=0}
E I y ′ ′ ′ ( L ) = 0 {\displaystyle EIy^{\prime \prime \prime }(L)=0} cos ⁡ k L = 0 {\displaystyle \cos kL=0} k L = 0.5 π {\displaystyle kL=0.5\pi } 0.25
ヒンジ(回転端)-ヒンジ(回転端) E I y ′ ′ ′ ′ + P y ′ ′ = 0 {\displaystyle EIy^{\prime \prime \prime \prime }+Py^{\prime \prime }=0} y ( 0 ) = 0 {\displaystyle y(0)=0}
E I y ′ ′ ( 0 ) = 0 {\displaystyle EIy^{\prime \prime }(0)=0}
y ( L ) = 0 {\displaystyle y(L)=0}
E I y ′ ′ ( L ) = 0 {\displaystyle EIy^{\prime \prime }(L)=0} sin ⁡ k L = 0 {\displaystyle \sin kL=0} k L = π {\displaystyle kL=\pi } 1
ヒンジ(回転端)-固定端 E I y ′ ′ ′ ′ + P y ′ ′ = 0 {\displaystyle EIy^{\prime \prime \prime \prime }+Py^{\prime \prime }=0} y ( 0 ) = 0 {\displaystyle y(0)=0}
y ′ ( 0 ) = 0 {\displaystyle y^{\prime }(0)=0}
y ( L ) = 0 {\displaystyle y(L)=0}
E I y ′ ′ ( L ) = 0 {\displaystyle EIy^{\prime \prime }(L)=0} tan ⁡ k L = k L {\displaystyle \tan kL=kL} k L = 4.493 = 1.430 π {\displaystyle {\begin{alignedat}{2}kL&=4.493\\&=1.430\pi \end{alignedat}}} 2.046


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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