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空間ベクトル(くうかんベクトル、ドイツ語: Vektor, 英語: vector, ラテン語: vector, 「運搬者、運ぶもの」より)は、大きさと向きを持った量である。ベクタ、ベクターともいう。漢字では有向量と表記される。ベクトルで表される量をベクトル量と呼ぶ。
例えば、速度や加速度、力はベクトルである。平面上や空間内の矢印(有向線分)として幾何学的にイメージされる。ベクトルという用語はハミルトンによってスカラーなどの用語とともに導入された。スカラーはベクトルとは対比の意味を持つ。
この記事では、ユークリッド空間内の幾何ベクトル、とくに 3次元のものについて扱い、部分的に一般化・抽象化された場合について言及する。本項目で特に断り無く空間と呼ぶときは、3次元実ユークリッド空間のことを指す。目次
1 数学的な記述
2 歴史
3 参考文献
4 関連項目
数学的な記述 点 S を始点とし、点 T を終点とする有向線分
空間内に二つの点 S と T をとり、S から T へ向かう線分を有向線分と呼ぶ。S を始点(してん、initial point, source, しっぽ)、T を終点(しゅうてん、terminal point, target, あたま)と呼び、向きの区別のために終点 T の側の端に山を書いて線分を矢印にする。 互いに同じ向きに平行な長さの等しい有向線分に対応するベクトルは互いに等しい
ある点 S に向きと大きさを持った量 v が作用しているとき、v の作用と同じ向きで、長さが v の作用の大きさに比例するように有向線分 S T → {\displaystyle {\overrightarrow {ST}}} をとって v を v = S T → {\displaystyle \mathbf {v} ={\overrightarrow {ST}}}
と表現する。
別の点 S′ に同じように v の作用の向き、大きさにあわせて有向線分 S ′ T ′ → {\displaystyle {\overrightarrow {S'T'}}} をつくるとこれらは互いに平行 ( S T → ∥ S ′ T ′ → ) {\displaystyle ({\overrightarrow {ST}}\parallel {\overrightarrow {S'T'}})} になるが、これも元の量 v を表すものとして v = S ′ T ′ → {\displaystyle \mathbf {v} ={\overrightarrow {S'T'}}}
と記し、同じものとみなすというのが向きと大きさを持った量というベクトルの概念の幾何学的な表現(幾何学的ベクトル)である。 ベクトルのスカラー倍
あるベクトル a と同じ方向で大きさの比率(スカラー)が k であるようなベクトルを ka と表す。また、a と同じ大きさで逆の向きを持つベクトルは −a と表す。同様に、a と逆の向きを持ち大きさの比率が k であるようなベクトルは −ka と記す。これをベクトル a のスカラー k 倍あるいは単にスカラー倍(スカラー乗法)と呼ぶ。 ベクトルの和
二つのベクトル a, b の和 a + b を、それらの始点を合わせたときにできる平行四辺形の(始点を共有する)対角線に対応するベクトルと定める(三つ以上のベクトルの和も、二つの和をとる演算から帰納的に定める)。a, b がどんなものであっても a + b = b + a が成り立っていることに注意されたい。
また逆に、あるベクトルを二つ(以上)の異なるベクトルの和に分解することができる。特にxyz-空間の各軸の方向で長さ 1 の有向線分に対応するベクトル(基本ベクトル、単位ベクトル)を x, y, z の各軸でそれぞれ i, j, k と置くと、任意のベクトル v は v = v x i + v y j + v z k {\displaystyle \mathbf {v} =v_{x}\mathbf {i} +v_{y}\mathbf {j} +v_{z}\mathbf {k} }
の形に表せる。
ここで、ピタゴラスの定理を用いると、ベクトル v の大きさ ||v|。は ‖ v ‖ = v x 2 + v y 2 + v z 2 {\displaystyle \lVert \mathbf {v} \rVert ={\sqrt {v_{x}^{2}+v_{y}^{2}+v_{z}^{2}}}}
によって求まる。
ベクトルの始点を xyz-座標系の原点に合わせると、任意のベクトルはその終点の座標によって一意的に表すことができる。 v := v x i + v y j + v z k ↔ ( v x , v y , v z ) =: P ( v ) . {\displaystyle \mathbf {v} :=v_{x}\mathbf {i} +v_{y}\mathbf {j} +v_{z}\mathbf {k} \leftrightarrow (v_{x},v_{y},v_{z})=:P(\mathbf {v} ).}
このとき、空間内の点 Q に対して Q = P(v) となるベクトル v を点 Q の位置ベクトルと呼ぶ。 いわゆる矢印ベクトルは物理学の教育では力学の初歩から導入されるため、ベクトルも古典力学と同時(17世紀ごろ)に発生したと思われるかもしれないが、実はもっと後の19世紀になって現れたものである。今でこそベクトルや行列などを使って、物理学や幾何の問題を解くといったことは常識であるが、ベクトルが誕生する以前の数学や物理学では初等幾何学、解析幾何学や四元数などを利用していた。
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