幻視芸術
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アレックス・グレイ(英語版)による『聖なる鏡の礼拝堂(英語版)』[1]

幻視芸術(げんしげいじゅつ、英語: Visionary art, フランス語: L'art Visionnaire)は、幻視(ヴィジョン)で見たこと、あるいはそれを基とした芸術である[2][3]瞑想で見たヴィジョンや[4]、通常の知覚を超越した幻視の状態が反映されている[5]

または、幻視芸術はアウトサイダー・アートに含まれたり[2][6]、サイケデリック・アート(英語版)やシャーマニズムから生まれたアートも広く意味することがある[2]。あるいは、美術界の外側であることが強調されるアウトサイダー・アートの定義と同様にして、幻視に由来するものであり、精神障害者や霊的幻視者が生み出した芸術も意味することがある[2][7]。1994年の日本における『現代パリの幻想芸術家たち展』にて、5人のフランス人画家によるラール・ヴィジョネールという芸術が幻視芸術と和訳されており、巌谷國士による『「幻想」と「幻視」』と題された論考の中で、これらの画家は幻想(ファンタスティック)という言葉で説明されることを好まないとし、幻想芸術という言葉では説明し難い幻視芸術の本質が解説された[3]

欧州での幻視的な絵画には宗教画や霊的な絵画としての長い歴史がある[8][3][9]
幻視的な芸術の初期からその展開12世紀に、修道女のヒルデガルト・フォン・ビンゲンが『道を知れ(英語版)』にて記したヴィジョンのひとつ。

アレックス・グレイの画集『聖なる鏡』において、思想家のケン・ウィルバーが解説するヨーロッパ芸術における神秘的で幻視的な絵画の伝統は、初期には12世紀の修道女ヒルデガルト・フォン・ビンゲンがそのヴィジョンを記した書物であり、さらにはミケランジェロ、ヒエロニムス・ボッシュ、もっと後のウィリアム・ブレイク、象徴派のジャン・デルヴィルといった名が挙げられている[8]トマス・アクィナス(13世紀の神学者・哲学者)による「幻視」という語の考察によれば[10]。幻視は第一に視覚器官による知覚であり、第二に想像力と知性による内面における知覚である。神秘主義においては必ずしも幻視は視覚体験ではないものの、イメージの知覚であることには変わりがない[10]。超越的なものとの出会いは表象不可能だということは大半の神秘家達の同意するところである[10]。しかしながら幻視を主題とする無数の美術作品が歴史的に積み重ねられてきた。[9]。1401年にはジャン・ジェルソンが『真の幻視と偽の幻視の識別について』を著し、異端審問の活動の多くは幻視の現象に向けられ、16世紀、17世紀の神秘主義では、いかなる幻視も完全に確実なものではないという結論に到達した。[11]18世紀前後の作品。幻視者とされるウィリアム・ブレイクによる『太古の日々』(マンチェスター、ウィットワース美術館所蔵)[12]

詩人であり画家であるウィリアム・ブレイク(1757年 - 1827年)は、強烈な神秘的なヴィジョンを定期的に経験し、幻視芸術を描いた[2]。『天国と地獄の結婚(英語版)』において「知覚の扉が除かれるならば、人間にはすべてがありのままにみえる」という趣旨で述べている[8]。ブレイクについて1970年代に「幻視芸術」と言及した日本の書籍[13]、visionary artと言及したイギリスの書籍が見られる[14]。霊(スピリット)の表現のための観想の眼を開くには、瞑想は確実な方法のひとつである[8]。あるいは、シャーマンは霊の世界と交信するために、幻覚剤、性交、苦行などを試す[15]

神秘思想家のルドルフ・シュタイナーは 高度な霊視力で絵画や建築を創造し、1918年の講演会で、芸術における二つの源泉について述べている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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