幸福の黄色いハンカチ
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幸福の黄色いハンカチ
『幸福の黄色いハンカチ』
監督山田洋次
脚本山田洋次
朝間義隆
製作名島徹
出演者高倉健
倍賞千恵子
音楽佐藤勝
撮影高羽哲夫
編集石井巌
製作会社松竹
配給松竹
公開 1977年10月1日
上映時間108分
製作国 日本
言語日本語
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光枝の待つ家『幸福の黄色いハンカチ』に使用された真っ赤なファミリア

ポータル 映画
プロジェクト 映画

『幸福の黄色いハンカチ』(しあわせのきいろいハンカチ)は、1977年日本映画監督山田洋次主演高倉健
解説

1971年に『ニューヨーク・ポスト』紙に掲載されたピート・ハミルのコラム『Going Home』[1]をベースに、北海道を舞台に撮影された日本のロードムービーの代表作である。

高倉健、倍賞千恵子といったベテラン俳優から、映画初出演となる武田鉄矢、その共演に桃井かおり、さらには脇役に渥美清を据えるなど、豪華な布陣で臨んだ同作品は、俳優陣の演技はもちろんのこと、シンプルながら観衆の心情に深く訴えかけるストーリーが高い評価を得た。第1回日本アカデミー賞や第51回キネマ旬報賞、第32回毎日映画コンクール、第20回ブルーリボン賞や第2回報知映画賞など、国内における同年の映画賞を総ナメにしている。高倉健、倍賞千恵子が初共演している[2][3]

日本では昭和52年10月1日土曜日)に公開され、後にキャスティングを変え、テレビドラマ化や日本国外でも映画化された。
あらすじ

恋人の伸子と失恋してヤケになった花田欽也(武田鉄矢)は、勤めていた工場を突然退職。その退職金で真っ赤なファミリア(4代目のFRファミリア)を購入し、失恋の傷を癒すため一人フェリーに乗り北海道を目指す。釧路から網走にやって来た欽也は、駅前で片っ端に女性に声を掛け始める。

一方、網走刑務所からは、刑期を終えた元炭鉱夫の島勇作(高倉健)が出所してくる[注釈 1]。その後、食堂に寄って瓶ビールを飲みながら、醤油ラーメンカツ丼を注文する。食事を済ませ郵便局に寄った勇作は、ハガキを一枚書いて投函する。

網走にいた欽也は、同じく職場で恋人を同僚に取られ、東京から一人傷心旅行に来た朱美(桃井かおり)をナンパして一緒に食事する。欽也は朱美とドライブを始める。海岸にやって来た2人は、同じくそこに立ち寄っていた勇作に写真を撮ってもらう。2人はその縁で彼を車に乗せ、3人旅を始めることになる。

その晩、阿寒湖温泉の宿で、欽也は朱美を口説き始め、「キスだけ」と言いながらのしかかる。抵抗していた朱美は急に動かなくなり泣き始める。隣室の勇作は騒ぎを聞き欽也を一喝する。

3人は何かと崩れそうになりながらも旅を続けてゆく。あくる日、陸別駅前の小さな食堂でカニを食べながら雑談していたところ、勇作と欽也が同じ福岡県出身ということが判明する。その後、運転途中で腹痛を覚えて、路上に車を置いたままトイレに駆け込んだ欽也に代わり対向車のトラクターを通すため、「これでも仮免まで行った」という朱美がハンドルを握るが、車を脱輪させてしまった上に農地を暴走し干し草の俵に車を突っ込ませてしまい、二人は口論になり朱美は泣き出してしまう。勇作の交渉の結果、その農家に泊まることになる。欽也と同室になった勇作は、今までの欽也の朱美に対する不節操な態度に対し、「お前、それでも九州の人間か!」「そういうのを草野球のキャッチャーってんだ、ミットもないってことだ!」と叱責する。そして車中の会話から、勇作はかつて暮らした夕張に向かっていることが明らかになる。

帯広の駐車場では、欽也が邪魔なリンカーン・コンチネンタルを蹴り飛ばす。すると乗っていたヤクザ風の男(たこ八郎)に殴りつけられるが勇作の反撃で難を逃れる。そのまま勇作が車を運転していったことで、物語は大きく展開していく。彼らの車は強盗事件の一斉検問に引っ掛かり、勇作が無免許運転であったことが判明。無免許の理由を問われ、一昨日までの6年間、殺人罪で刑務所に入っていたことを話す。最寄の新得警察署に連行されるが、そこには、かつて勇作の事件を担当した渡辺勝次(渥美清)が偶然勤務しており、彼の温情で事無きを得る。刑務所帰りがバレた勇作は汽車で行くと言うが3人旅は続いていく。

車や旅館の部屋の中で、勇作は徐々に自分の過去を語る。スーパーのレジ係だった妻・光枝(倍賞千恵子)との出会い結婚、そして幸せな新婚生活。光枝が妊娠したらしいということで喜ぶ勇作。父親が戦死したため父親を知らずに育ってきたので余計に嬉しかったのだ。病院に行くという光枝に早く知りたいと言い、「もし妊娠していたら、竿の先に黄色いハンカチを揚げておく」という光枝の言葉に、勇んで仕事に出て行く。仕事帰りに竿の先にはためく1枚の黄色いハンカチを見つけた勇作は天にも昇る気持ちだった。しかし数日後、「無理をするな」と言ったにもかかわらず力仕事をした光枝は流産してしまう。病院で勇作は光枝の過去を知ることになる。それは5年前の流産。立腹してヤケ酒をあおりながら、「俺は隠し事をする女は嫌いだ」と言った。光枝が「流産の話を聞かなかったから」というのに、絶望した勇作はヤケになり、夜の繁華街に繰り出し、偶然、肩が当たったチンピラ(赤塚真人)とケンカをして相手を死なせてしまう。

逮捕され、刑務所に入った勇作は離婚を決意する。面会に訪れた光枝に勇作は、「今ならお前はまだ若いし、その気なら良い男もいるかも知れん、幸せになれ」と諭す。「あんたって勝手な人だねぇ、会った時もそうだったけど」と光枝は泣いてしまうが、これが不器用な生き方しか出来ない、彼流の男の愛情表現だった。責める朱美に「俺があいつにしてやれることはそれだけだ」「どうしてこんなヤクザに生まれついたのかな」と嘆く。「明日は札幌でお別れだな」「仕事なかったら東京へ行くかも」とも言う。欽也は涙にくれる。

小広場で「銀座カンカン娘」を歌っている人々(統一劇場[4])の傍を通るが、勇作は空にはためく鯉のぼりを見て感慨深げ。勇作は1人で夕張に向かうという。理由を尋ねると、出所直後の網走で光枝宛てに葉書を出していたことを告白する。葉書には「もし、まだ1人暮らしで俺を待っててくれるなら…鯉のぼりの竿に黄色いハンカチをぶら下げておいてくれ。それが目印だ。もし、それが下がってなかったら、俺はそのまま引き返して、2度と夕張には現れない」と書いたという。それを聞いた欽也と朱美は、迷わず一緒に夕張に行くことを決心する。

「やっぱり引き返そう」「どう考えたってあいつが一人でいるはずがない」「誰かと一緒になっているよ」と揺れる男の気持ちと、それを励ます2人。「あいつが俺を待っているはずはない」と臆病になる勇作は、引き返すことを要求し一度はそうするが、朱美の「万一ということがあるでしょ、万一待っていたら奥さんはどうなるの?」という説得に応えて再び夕張に向かう。車は夕張の町に入って行く。もう外を見ていられない勇作に、朱美が景色を逐一説明し勇作はそれに答える。「踏切越えたわよ」の声に勇作は道を説明する。子どもたちの「背くらべ」の歌が聞こえてくる。欽也は「もしかしたら引っ越してしまっているかもしれないな」と考える。やがて車は止まり、欽也と朱美は外へ出て辺りを見回す。

見つからずに「今、風呂屋の前にいるんだけど」と欽也が言うと彼の視線にある物が映っていた。朱美が欽也に声をかけると「ほらー、あれ!」と叫ぶ。視線の先には、なんと数十枚もの黄色いハンカチが風にたなびいていた。力強く勇作の背中を押し出す二人。二人の再会に言葉は要らなかった。二人は見つめ合い仲良く家の中に消えていく。

それを見届けた欽也と朱美は、車中で自然に手を握り合い、強く抱き合いキスをする。夕張の街を背景にこいのぼりの竿に掲げた幸福の黄色いハンカチがたなびいていた。
エピソード

山田は製作にあたりピート・ハミル側と交渉したが、代理人によるとハミルは日本の電気製品がアメリカ市場を荒らしているとして日本に好意を持っておらず、作品の上映は日本国内限定で海外に出すことは絶対に認めないとの厳しい条件つきで承認を得た。封切り後、高い評価を得ていくつかの賞を受賞したことから配給の
松竹は海外への輸出を考え、ハミルに認めてもらうため山田がニューヨークに出向いて映写会を開いた。字幕もなく通訳が要点を説明するだけだったが、鑑賞したハミルは「ビューティフル」と称賛し喜んで輸出に賛成したという[5]

倍賞千恵子がこの話を知ったのは、渡辺貞夫の家を訪問し親しい娘に、原作とは別にこの話を元にしたドーンの歌「幸せの黄色いリボン」を聴かせてもらい、英語歌詞を日本語に訳して紹介され倍賞が感動した事に始まる[6]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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