平均寿命
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平均寿命(へいきんじゅみょう)とは、

0歳時における
平均余命(Life expectancy at birth, LEB)[1]

不安定な素粒子原子原子核などが作られてから、他のものに変化してしまうまでの時間のながさ[1]

平均寿命の「寿命」とはいわゆる「天寿」ではなく、死因にかかわらず生まれてから死ぬまでの時間である。

各国の人間の平均寿命の具体的な数字については国の平均寿命順リストを参照のこと。
人間の平均寿命各国の平均寿命(CIA World Factbook 2023 Estimates for Life Expectancy at birth (years).)[2]平均寿命の長さは色別に、緑>濃青>青>水色>橙>黄>赤となっている。WHOによる、各国の平均寿命(橙色)と健康寿命(緑色)

人口統計では、定常な(対象となるの各年齢の死亡率が今後も維持される仮想的な)個体群について平均寿命を求める。つまり、平均寿命とは0歳の平均余命のことである。平均余命は年齢によって異なり、例えば平均寿命が80歳だとしても、今79歳の人が平均であと1年しか生きられないということではないので注意が必要である[注釈 1]

平均寿命は、年齢別の推計人口と死亡率のデータを使い、各年齢ごとの死亡率を割り出す。このデータを基にして平均的に何歳までに寿命を迎えるかを出す。日本の厚生労働省が発表している日本人の平均寿命は、ある程度以上の年齢のデータについては除外して計算している。これは、あまりに少数の高齢の人物のデータを算入すると、その生死によって寿命の統計が大きく影響を受けてしまうからである。データ除外の基準は年度によって異なり、2009年度の調査では98歳以上の男性と103歳以上の女性に関するデータは取り除いている[4]。つまり、日本の「平均寿命」は、正確なデータではなく、実態より短めに計算されていることになる。

平均寿命は個体群によって大きく異なるが、寿命の上限はほとんど変わらないため、平均寿命の違いは人口ピラミッドの形の違いとして現れる。個体群が定常的な場合、山型の人口ピラミッドは低い平均寿命、釣鐘型の人口ピラミッドは高い平均寿命が反映されている。ただし、近年に平均寿命が大きく変化した場合、人口ピラミッドは現在ではなく過去の平均寿命を反映している。また、人口が急増しているときは、人口ピラミッドは山型になる。

寿命の平均である平均寿命に対し、寿命の中央値を寿命中位数という。平均寿命が長い個体群では、若者(特に乳幼児)の死亡がロングテールとなり、平均寿命は寿命中位数より少し(日本では男女とも[注釈 2])低い。逆に、平均寿命が短い個体群では、高齢者がロングテールとなり、平均寿命が寿命中位数より高い。

平均寿命が長くなるということは、それだけ高齢者の数が増えるということを意味する[6]
各国の平均寿命順位詳細は「国の平均寿命順リスト」を参照

世界保健機関(WHO)の世界保健統計(World Health Statistics)のデータベースによると、2019年の世界の平均寿命は73.3歳(男性70.8歳、女性75.9歳)。発展途上国で乳幼児の死亡率が低下したため、2000年時点より6.5歳延びたものの、高所得国が80.9歳であるのに対して、アフリカ大陸などにある低所得国は65.1歳と、国の経済水準による格差が大きい[7]

CIA World Factbookによる2023年のデータ[2]によると、平均寿命が特に短い国はアフガニスタン中央アフリカ共和国ソマリアモザンビークシエラレオネなど。一番短いアフガニスタンは平均寿命が54.05歳であり、男性が52.47歳、女性55.71歳しかない。特に長い国はモナコ 89.64歳(男性85.84歳、女性93.59歳)、シンガポール86.51歳(男性:83.82歳、女性:89.34歳)、マカオ85.16歳(男性:82.28歳、女性:88.18歳)、日本85.00歳(男性:82.11歳、女性:88.06歳)、サンマリノカナダなど。つまり、アフガニスタンの平均寿命は、日本の約64%程である。
乳幼児以外の平均寿命短縮の要因OECD各国の医療費と平均寿命
糖尿病

1971年から1980年のデータで糖尿病患者と日本人一般の平均寿命を比べると男性で約10年、女性では約15年の寿命の短縮が認められた[8][9]。このメカニズムとして高血糖が生体のタンパク質を非酵素的に糖化反応を発生させ、タンパク質本来の機能を損うことによって障害が発生する。この糖化による影響は、コラーゲン水晶体蛋白クリスタリンなど寿命の長いタンパク質ほど大きな影響を受ける。例えば白内障は老化によって引き起こされるが、血糖が高い状況ではこの老化現象がより高度に進行することになる[8]。同様のメカニズムにより動脈硬化も進行する。また、糖化反応により生じたフリーラジカル等により酸化ストレスも増大させる[10]
貧富の差

貧富の差も平均寿命に影響を与えており、2018年11月22日インペリアル・カレッジ・ロンドンによる発表によれば、イギリス国内でも貧困層と富裕層の平均寿命の差が2016年で男性で約9.7年、女性で約7.9年であること、2001年に比べその差が拡大していることが分かった。その原因が、不健康なファーストフード食品より新鮮な野菜果物の方が価格が高く、貧困層にとって手が届きづらい存在であること、2010年以降の自治体サービスの削減と健康医療関連の資金不足によるものと推測されている[11]

また、スタンフォード大学などの研究チームが2016年に発表した研究でも、アメリカ国内で所得上位1%の富裕層と所得下位1%の貧困層の平均寿命の差が男性が約15年、女性は約10年あること、2011年?2014年の間その差が拡大していることが分かった。その原因について、教育健康状態やライフスタイル(前述の新鮮な野菜や果物を食べるより、ファーストフード食品をより多く食べる生活など)の違いによって生じていると推測されている。更に、同じ貧困層でも、住む場所によって違っており、運動が盛んに行われ、喫煙肥満人口の少ない地域は平均寿命が高く、特に大都市は教育レベルが高く公共福祉制度が充実しているためその傾向にあった。ただし、医療制度の普及度による因果関係が明らかにみられないことも言及している[12]

そして、日本の場合、東京都が日本の平均健康寿命とほぼ変わらないにもかかわらず、2010年の足立区の健康寿命が東京都に比べ約2年短いことが指摘された。この原因について、経済格差によって生じる食生活の違いが背景にあり、この事実に対して足立区は従来の健康対策から糖尿病の1人当たりの受診件数やの医療費の高さから糖尿病対策に焦点を絞り、野菜を積極的に摂取するように企業や団体の協力を得て取り組んだ結果、東京都との健康寿命の格差が縮小し、2015年において男性は約1.66歳、女性は約1.25歳と減少している[13]
アルコール

アルコールの過剰摂取により平均寿命が短縮することが指摘されている。
ロシア人男性の平均寿命は2000年時点で59.0歳と下位中所得諸国並みの水準であった。この原因の一つとして、ウォッカの飲み過ぎによるアルコール過剰摂取が挙げられている(ロシアではストレートで飲むのが普通。ただし、健康的なライフスタイルを志向したり、若年世代の場合はその飲み方をする人は少ない)。ロシアがん研究センターや、イギリスオックスフォード大学が、ランセットで発表したところによると、ロシア人の死亡率はウォッカの規制とともに変動してきたと指摘している[14]

この状況に対してプーチン大統領は、アルコールに関する規制政策(午後11時?翌朝8時の酒類の店頭販売禁止、ウォッカなどの蒸留酒の小売店最低価格の引き上げ、マスメディアでの広告禁止などの措置)を行った。更に若い世代を中心に、アルコール飲料を飲まないか、アルコール度数の高いウォッカやコニャックよりも、より度数の低いビールワインを選ぶ人が多くなった[15]


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